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プロローグ
その一枚に写る光景を、もう一度、ゆっくりと見つめ直す。
サークルの打ち上げの一コマ。談笑する学生たちの中に、自分と先輩が写っている。きっと誰かが何気なく撮ったのだろう。構図も照明も特別なものではない。ただのスナップ。
学部二年の春。あの頃は知らなかった。レンズの向こう側で見つけた美しさも、こちら側で過ごす時間も、どちらもかけがえのないものになることを。
写真を封筒に戻しながら、長くなった黒髪が頬にかかるのを感じる。窓から差し込む陽射しが、終わりと始まりを、静かに照らしていた。