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9話 不測の事態が発生

 1階層受付奥にあるモニター室。ここでは、ミニマム・ドレイクが持っている魔法投影機の映像をゴブリン達が監視して、ダンジョン内で配信者達の命に危険が及んでないかなどを常に確認している。最も知能が低いゴブリン達はエンドレス・ワイバーンの鱗とエサが貰えるという見返りでいう事を聞いているだけで、しなければいけない理由自体は理解していない。

 異世界の監視カメラではなくこちらの世界の魔道具を使う理由はゴンザレス曰く、電気が必要な監視カメラより魔力があれば無尽蔵に使える魔道具の方がコスパが良いからとのことだ。

 なお監視をする理由は、配信者の誰かが死んだりしたら、危険だと怖がって客足が減ってしまい収入も減少するので、絶対に死なない様したいからだと言っていた。


(バカじゃねーの。ダンジョンは危険で人が死ぬとこだろが)


 モニター室で仕事をサボってスマホをいじりながら、アストラル・ジンは心の中で悪態を吐いた。

 5か月ほど前、魔力の過剰蓄積により【生態系の迷宮】で異世界に通じる次元の穴が開いたという話をどこからか聞きつけてやってきたゴンザレスは、アストラル・ジンに勝負を挑んできた。

 10数年振りに見るゴンザレスは鍛錬を怠っており、戦闘能力は大幅に低下していた。これならワンチャンで昔のリベンジができると思い戦いに応じた。しかし倒したと思い油断したところを死んだふりをしたゴンザレスに後頭部を鈍器で殴られ敗北した。

 さらにゴンザレスは、それだけでは飽き足らず、倒れている中、倒れているアストラル・ジンの腰巻をとり、下半身が露出した姿を魔法投影機で撮影した。そしてばら撒かれたくなければ俺のいう事を聞けと脅してきたのである。ダンジョンのモンスターにすら己の存在すらも隠しているのに、こんなものをばら撒かれてはかなわない。

アストラル・ジンはゴンザレスのいう事を聞く以外の選択肢をとることができなかった。


(ああ、くそ)


 ゴンザレスへの不満は日々募っていた。

 卑劣な幻影紙をとられた事。

 ダンジョンの支配者という立場から、大きく逸脱した行動を強いられている事。

 それらも理由の一つであるが、それ以上に――


(クソ、ゴブリンやミニマム・ドレイクはちゃんとした見返りもらえてんのによ)


 アストラル・ジンは元々土着の神であったが、人の信心が離れていったことでモンスター化し、現在は魔神という立場に治まっている。

 元神なので食事も睡眠も必要としない。そのためゴンザレスから、あらゆる雑用と、責任を24時間、日給1000円で押し付けられていた。

 魔神なので疲れは感じないはずなのに、何故か最近は胃の辺りが痛くなっている。

 だが、ゴンザレスに逆らうことはできない。



魔神の裏日記 [@Jin_Underboss]


何であいつは商人の基本すらわかってないんだろう。重増し、水増し、そして呪いの石。真面目に商売しろって思う。#おばさん推し



 なので、この様に×(旧:Twittew)の裏垢でうっぷんを晴らす事しかできなかった。


『おい、てめえ仕事サボって、なにいじってやがる』

『す、すいません』


 ゴンザレスにこっちの言葉ですごまれ、慌てて腰巻にスマホをしまう。


『さっきからゴブリンがお前を呼んでるのが気づかねえのか?』


『ギイ! ギイ!』

『悪りい。1階層、12番のモニターね。分かった……これって』


 ゴブリンの指差したモニターを見たアストラル・ジンは驚愕した。


『なんでこんな事が起こってんだ! 今すぐ止めてきます!』

『いや、現場には行かなくて良い。それよりも原因を調べて来い』

『なに言ってんだ! 人間に死なれたらアンタも困るんだろうが!』


 人間の命など、どうでも良かった。

しかし1000年かけて作ったダンジョンの生態系が乱される事態は阻止したい。

その気持ちが、ゴンザレスへの恐怖を凌駕して声を荒げさせる。


『安心しろ。1階層には、さっき俺をいじめた、姉ちゃんがいるじゃねえか』

『はあ!?』

『なんだおめえ、俺と歳が同じぐれえだから、おばちゃんだって言いてえのか?』

『こんな時に何言ってんだ! ただの異世界のおばさんに何ができんだ!』

『お前、魔力の感知をしてねえのか?』

『次元の穴が開いているせいで乱れて上手くできねえよ! これ以上アンタの下らねえギャグには付き合いきれねえ! 俺は今から現場に行く!』


 そう吐き捨てて、アストラル・ジンは壁の中に消えていった。

 ダンジョンの真の支配者である彼は、ダンジョン内の壁や床の中を通り抜けて、短い時間で移動できる。


(でも、アキの方が現場には早くつくだろうな)


 ゴンザレスは頭の中でそう呟き、覚えたばかりのパソコンで契約書を作り始めた。


ご拝読ありがとうございます!


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