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5話 悪徳商人撃退!

 ゴンザレスと名乗る変な商人によって案内された売店区画には、異世界で見慣れたアイテムや装備が沢山陳列されていた。

 いや、これは見慣れたと言って良いのだろうか?

 陳列されたアイテムを眺めたアキナは、沸々と怒りをたぎらせていた。


「アキさん、どの装備レンタルします?」

「……私はいいかな。ううん、れなちゃんも、こんな所の装備なんか借りちゃダメ」

「え?」

「アイテムも買っちゃダメよ」


 静かに怒り狂うアキナに、レナが怯えている。

 普段滅多に怒る事などないせいだろうか。

 どうして怒っているのか事情を説明しようとしたところ、男女2人組の配信者がゴンザレスのところにやってきた。


「この火がでるっていう使い捨てのタリスマン、全然使えなかったんだけど」

「どこか不都合がござったか?」

「確かに火は出たけど、火力が足りなくてモンスターが全然燃えなかったのよ」

「それはお客様が込めた魔力の量が少ないからでござる」

「いや、魔力なんて俺ねーし」

「魔力が無ければ火は出ぬはずじゃ。其方らの世界には大気中に魔力を阻害する原子がござるので、魔法は使えぬ。されど魔力は其方らの世界の人間も皆持っておる」

「そ、そうなの?」

「とは申せ、魔力の量には人それぞれの差がござり、属性ごとの適性もござる。それが元凶なのかも知れぬな」

「な、なるほど」

「気を取り直し、異なる属性の使い捨てタリスマンを購入賜りたい」

「なるほど! 火以外だったら大丈夫なわけか」

「今度はこの冷気の奴を試してみよっか」


 ゴンザレスが言っている、魔法の理論は正しい。

 だが火が少なかった理由は違う。

 卑劣なやり口に我慢できなくなったアキナは、間に割って入った。


「なに言ってるの! 火が小さかったのは、もっと根本的ことが原因じゃない!」

「な、何を申すか」

「この炎のタリスマン。野外で焚火をする時に使う家庭用のじゃない! こんなのモンスターに投げても大したダメージは与えられないわ!」


「え? そうなんですか!?」


 2人組の配信者達は何も知らなかったようで、アキナの言葉に驚いている。

 異世界の物なので知らないのは、仕方がない。

 ゴンザレスは配信者たちが何も知らないのを良いことに、こういったあくどい商売をずっとしてきたのだろう。

 被害者をこれ以上出さない為に、ビシッと言っておかなければいけない。


「それだけじゃないわ! この氷のタリスマンも食料を保存する時に使う奴だし。他のも全部そんな感じ。どれもせいぜい5つまとめて500Gとかよ! それを1つ1万Gでなんてよく売れるわね!」


「た、確かにお主の言う通りじゃな。せ、拙者が家で使うものを間違って並べてしまっていたようじゃ」


(なに言ってんの? こんなに沢山並べておいて間違いな訳ないじゃない)


「で、では、そちら気を取り直して回復や補助のアイテムなどいかがでござるか? この瓶に入っている粉は、惑わしの粉と申して撒くとモンスターの視界を奪い混乱させる効果があるアイテムでござる」


 2人組は怪訝な顔をして互いを見ている。

 買おうかどうか迷っているようだ。

 こんなものを買わせる訳にはいかないので、再び止めに入る。


「絶対に買っちゃダメよ」

「ぶ、無礼な! 営業妨害でござる!」


「粉に小麦粉を沢山混ぜて重増ししてるじゃない。これじゃ普通の半分くらいしか効果を発揮しないわ」

「な、な、な、なにを根も葉も……」

「それだけじゃないわ。こっちのポーションも既製品より薄いわ。多分水を沢山混ぜて水増ししてる。他のアイテムも皆そんな感じよ」


 辺りは静まり返り、周囲の配信者たちは皆、何事かといった表情でアキナを見ている。

 大声を出したせいでジロジロ見られているのだろう。

 恥ずかしいが、ここで止めるとゴンザレスをつけ上がらせるので引くわけにはいかない。

 しばらくしてゴンザレスは気まずそうに口を開いた。


「ど、どれも高価なアイテムゆえ……」

「冒険者向けの道具屋さんで簡単に手に入るものばかりじゃない。あと、値段もよ! この水で薄めたポーション、2000Gってなってるけど、向こうのではポーションはだいたい200Gくらいよね? 他のアイテムも全部、重増しされてて効果は半分以下になってるのに、値段は既存品より0が1つ以上多くなっているわ」

「ハ、ハ、ハ、ハイパーインフレが起こったのでござる! お主がいた時よりも物価が大幅に高騰したのでござる!」


 確かに自分が元の世界に帰った後に、物価が急高騰した可能性も0ではないだろう。

 しかし、商人の慌てふためいている言動を見る限り、嘘であることは明白だった。

 だが、また変な言い訳を色々してきそうなので、露店に並んでいるアイテムの中で絶対に言い逃れができない一番許せないものについて指摘することにした。


「極めつけは、この魔法陣が描かれた石よ!」

「これは幸運を呼ぶ魔法の石という、どの道具屋にも売ってない特注アイテムでござる。賢者とまで称される高名な魔導士より拙者が特別に仕入れたものでござる。是非買われよ!」


 賢者と呼ばれている魔法使いに心当たりはなかった。だが、強い魔力が込められているので、そう呼ばれるほど凄い魔法使いが、作っていることは事実なのだろう。


「ふざけないで! この石、凄い力の呪いが掛けられてるじゃない! どうやったら幸運が呼べるのよ!」

「ふ、ふざけてなどおらん。これを身に着けておると、飛行型モンスターが頭上によく糞をしていくのじゃ。まさに降糞を呼ぶ魔法の石じゃ」

「そんなの幸運っていうより降運じゃない! こんなのでお金をとってなにがしたいの!」


 周囲から起こった大きな拍手で、ようやくアキナは我に返った。


(やだ、つい熱くなっちゃった……。恥ずかしい……)


「い、いきましょ」

「は、はい」


 恥ずかしくてたまらなくなったアキナはレナを連れてそそくさと、この場を後にした。

 その途中ゴンザレスが言った事が頭をよぎる。


(さっき、お主がいた時よりもって言ってたような気が……。もしかしてバレた? ううん、気のせいね。変装は完璧だし。あんな人、知らないし)


ご拝読ありがとうございます!

只今連続投稿中です!

何話落とすかは、まだ決めておりません(爆)

この面白いと思って頂けたなら、この小説をブックマークをして頂けば嬉しいです。


よろしくお願いいたします!

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