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42話 オフ会にこはくが……

「転売ヤーが酷いんで、なんとかして欲しいってDMがウチやアキさんの所にたくさん届いてんだけど。なんか対策とってんの?」


 オフ会当日。準備の為に朝早くから【生態系の迷宮】来たアキナとレナは、ゴンザレスを厳しく追及した。


「も、勿論でござる。でも転売ヤー共は悪知恵が働くので中々苦労しているでござる」

「はあ? てめえが公式転売してんじゃねえのか!?」

「レナちゃん、もういいわ」

「アキさん」

「そうでござる! 言いがかりは止めて欲しいでござる」

「……」


 恐らくゴンザレスは、今回もまた何か悪だくみをしているのだろう。

 だが、露骨な嘘で塗り固められた変な言い訳をして口を割らない事は明らかである。

 なので気持ちを切り替えて、来てくれたファンの人々を楽しませることにした。


(そうしなきゃ、とんでもない大金を払って来てくれたファンの人達に申し訳ないわ)


 とりあえず、ゴンザレスに今日の流れを聞くことにした。


「で、オフ会って結局なにをするの?」

「2階層でファンと一緒に話しながら、バーベキューをして適当に魔法を見せてくれれば良いでござる」

「そんなので良いの?」

「ファンは素のアキナ様と直接、交流したいはずでござる。だから無理に楽しませようなどとせずに、自分が楽しんだうえで、楽しんだ上で相手を楽しませる事を考えてくだされ」


 ゴンザレスが良いことを言っている事にアキナはとても驚いた。自分が楽しんでいないもので人を楽しませれるはずなどない。


「これが今日の予定表でござる。先日もお渡しさせて頂き申したが、念のため今日も改めてお渡しするでござる。拙者たちが2階層までファンを誘導する故、今しばらくこちらでお待ちくだされ」


 なにか手伝いをしたかったが、そんな事をしたらファンたちは混乱するだろう。

 もどかしい気持ちを抱えながら、アキナはその場に待機した。



「皆さんこれからダンジョンに入る訳でござるが、このタリスマンを首から下げて欲しいでござる」


 コウスケは受付フロアに集まっているオフ会参加者達に大きな声で説明を始めた。参加者は10代半ばから20代前半のダンジョン配信のメイン視聴者層が主なようだ。


「はあ!? なんでてめえの言う事なんか聞かなきゃいけねんだ!」

「これを持っていればモンスターは寄ってこなくなるでござる。もし無くしてしまったら大変危険なので、拙者達や係のゴブリンに直ぐに声を掛けて欲しいでござる」

「どうせまたボッタくるきでしょ!」

「そうだ、これも適当に作った不良品に決まってる!」


 しかし、普段の評判を知っている視聴者達は決めつけて耳を貸さない。


「いや、これは本当に安全のために無料で――」

「早くなつめさんに会わせてよ!」

「そうだ! そうだ!」


 話しを聞かずに自分たちの主張ばかりするファンたちに、ブチ切れたい気持ちを必死にこらえるコウスケに、ジンは耳打ちをしてきた。


『さっきからこんなガキばっかりで俺も参ってんッスよ』

『なんでこんな事になってんだ?』

『チケットの値段、とんでもねえ金額まで釣り上げたじゃねえッスか。あんなのダンジョン配信の視聴者層で払えるつったら、親が金持ちで甘やかされてるガキか、パパ活とかやって勘違いしてるガキかしかいないっスよ』

『オフ会は中止だ。このクソガキ共を拘束して、こいつらの親に俺が受けた精神的苦痛の損害賠償を請求する』

『いや、コウスケさん、それ誘拐ッスからマジヤベえッスよ』

『その名前をここで出すんじゃねえ』


 ジンの静止を振り切り、クソガキ共を拘束しようとしたその時、思いがけない声が耳に入ってきた。


「皆さん、落ち着いてください!」


 ジャージ、ウイッグ、伊達メガネの配信スタイルに着替えたアキナが走ってきていた。


「キャーー!」

「なつめさああん!」

「少しだけ私の話を聞いてくれるかな?」


 歓声をあげていたオフ会参加者達は一瞬で静まった。


「ゴンザレスもジンも本当に皆の事を考えて、今日のオフ会を準備してくれたんです。このタリスマンは皆に安全に楽しんでもらうために1つ1つ私が作りました! だから、ちょっとだけ我慢して、話しを聞いてくれませんか?」


 会場の空気が一変し、以前の騒がしさはどこかに消えてしまった。



(騒がしくて駆けつけたらこんな事になってただなんて)


 場が落ち着いた事にホッと胸を撫でおろす。


『へへ。相変わらずこんなのは上手いな。助かるぜ』

『こういう事は沢山させられてきたから嫌でも慣れるわ』


(というか、相変わらずってなによ。昔、私がどこかで人を鼓舞してるのとか見た事あるのかしら?)


 ゴンザレスの言葉に怪訝な気持ちになりながら、オフ会に来てくれた参加者の顔を何の気なしに眺めていた時、アキナの目に見知った顔が飛び込んできた。


(こはく!?)


 一番後ろの隅で隠れるような動作をしている女の子。分かりにくいが間違いなく、あれは娘のこはくである。


(どうしてここにいるの!? ……もしかしてこはくも私のファン?)


 ここに来ているという事は恐らくそういうことだろう。

 どう接すれば良いのか分からず、アキナは激しく混乱した。



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