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27話 アキナ、企画、脚本、監督を担当

「よし! 良いのができたわ! レナちゃんこの通りにできるかな?」


 撮影前日。アキナは自作したイラスト付きの簡易な台本を、レナに渡した。


「アキさん、マジ気合入ってますね」

「うん。これは本当に良いものだから、色んな人魅力を伝えたいの!」

「でも、あの商人がタダで物をくれるなんて、絶対何かあるとしかウチ思えないんっすけど」

「企業案件で使った物品は、普通謝礼としてくるって言ったのはレナちゃんじゃない? 考え過ぎよ」

「だと良いんっすけど。でも、マジでこの通り撮って大丈夫なんっすか? ぶっちゃけアキさんめっちゃ危険だと思うんっすけど」

「大丈夫! 明日は撮影だから、今日は寝坊しないように早く帰るわね!」

「アキさん撮るのは午後からだから……いっちゃった」


 今までに無いほどのアキナの気合の入りように、レナは苦笑いした。



 撮影当日。いつもの様にウイッグと伊達メガネをつけたジャージ姿のアキナは、レナと一緒に4階層にきていた。

 ここは無数の洞窟が繋がった迷路のような地形で、死者に関連したモンスターが多数生息しているフロアである。


「じゃあ、いくわよ!」

「はい、カメラまわすっす」


 撮影が始まると同時に、アキナはブレード・レイスに向かっていく。

 このモンスターは【生態系の迷宮】で死んだ剣士の魂を起源にしており、伸縮、湾曲が自由自在にできる霊体の剣を使い、行きかう者に斬撃を繰り出してくる。


「キャー! アキさああん!」


 ブレード・レイスの斬撃を身体に浴びたアキナは大量に出血しながら、宙を舞った。


「れ、レナちゃん……早く、ポーションをちょうだい……」


 この後、アキは8回ほど同じ行動を繰り返して、大量のポーションを消費した。


「やっといいアングルのが撮れたわね。次は1回で決めれるよう一緒に頑張ろうね!」

「いや、その拘りすぎなんじゃないかなと……」


 そんな2人の前に焰の(ブレイジングソウル)が現れた。いわゆる人魂の形状をしており、【生態系の迷宮】で死んだ者の魂を起源とするモンスターである。その形状と特性を活かした炎属性の攻撃を繰り出してくる。

 アキナは焰の(ブレイジングソウル)を見つけるなり一直線に突撃していった。


「いやあああ! 熱いいいい!」


 焰の(ブレイジングソウル)に体当たりされたアキナは、全身火だるまになりながら辺りを走り回った。


「アキさん、アングルから外れないでください! そう! この位置っす!」


 なお、これは5回の撮りなおしですんだ。


「はあ、はあ……やっぱ自分に治癒魔法は使うもんじゃないわね」

「アキさん、少し休憩するするっす」

「ダメよ。もう少しストックが欲しいわ。次は電気にしようかしら。ううんシンプルに打撃がいいかも」


 こういった自身が色々な攻撃を受けて、苦しむ映像をいくつも撮った。

 そして撮影後レナの部屋で編集にも口を出した。


「うーん、ここのテロップの色は赤が良いわね。あと効果音はもっと大げさなものが良いわ」

「これとかどうっすか?」

「うんいいと思う。あとBGMはもっと楽しそうなヤツが良いわね」


 なお、レナの編集に口出しをしたのは、これが初めてである。

 一方的に注文をつけたばかりではない。自分自身が苦しむ映像にもナレーションを拘りながら、細かくつけていく。


「うーん、ダメね。もう少しテンションを落として喋りなおすわ」

「アキさんの動画で、ここまで手間がかかったのは初めてっす」


 当時の彼氏との思い出に突き動かされたアキナは、その思い出の商品をより多くの人に手に取ってもらえる様に、持てる力の全てを注ぎ込んだのである。


 そして完成した動画がこちらである。




〈こんにちは♡ アラフォーのなつめです♡ 今日はレジリエンスローブっていう異世界の魔法専門職の人が着るローブを皆さんに紹介しちゃいます♡〉


「キャー!(ピー音)さああん!」


〈ダンジョン探索をしていると、色んなモンスターから色んな攻撃を受けちゃいますよね〉


「いやあああ! 熱いいいい!」


〈火に〉


「あばばばばば!」

「うわああ! 真っ黒こげになってるっす」


〈電気に〉


「……おばあちゃん今そっちに行くね……」

「まだおばあちゃん生きてるって言ってたじゃないっすか!」

〈毒。どんな属性の攻撃があるかなんて、あげていけばきりがありません。後から治癒魔法で回復できるじゃんなんて思うかも知れませんけど〉


「はあ、はあ……ダメ疲れたもうダメ。……ポーション頂戴」


〈治癒魔法って自分にかけると他の人にかけるより凄く魔力を使うのに、回復の効果は、すっごく少ないんです〉


「うわああ! 10メートルは飛んでるっす!」


〈じゃあ補助魔法で防御力をあげとけばって思いますよね。でも補助魔法も治癒魔法と同じで自分にかけると魔力はいっぱい使うのに効果は物凄く少ないんです〉


「け、結界魔法は、いつまでも使えるものじゃないから……」

「(ピー音)さんもう喋んないでください」


〈そんな時におススメしたのが、このレジリエンスローブ! これを着ていると体内の魔力を自動消費してあらゆる属性のダメージを少なくしてくれるんです!〉


「火と物理と冷気の攻撃の強めの攻撃をいっぺんに受けても傷一つつきません!」


“軽減できるダメージは着用者の魔力量により異なります”


〈さらに着ている人の体力と魔力を少しづつ自動で回復してくれるんです! これを使えばエーテルとポーションの両方が節約できちゃいます!〉


「今日の撮影だけでポーションどれだけ使っちゃったのかしら……こんなんじゃおカネがいくらあっても足りないわ」


〈さらにさらに、これが本当にいい所なんですけど、ちょっと破れたり、血で汚れたりしても、レジリエンスローブは自動で修復しちゃうんです!〉


「でも洗濯をしないと、臭くなるのでちゃんとしてくださいね」


〈でも高いんじゃないかって思っちゃいますよね。確かにレジリエンスローブは異世界だと10万G。円に換算すると10万円もします。決して安いものじゃないです。でも、今なら特別価格の4万円でご提供させて頂きます。それでも高いって思う人は多いかも知れないですけどその価値は十分にありますよ!〉


「なんでござるかアキナ様」

「販売元はこの人ですけど、ちゃーんと私が本物だって私が確かめたんで安心してください」


〈レジリエンスローブの購入リンクは動画概要欄に貼ってあります! もし動画を見て興味を持って頂いたならクリックして詳細を確認して見てください!〉



「しまった。私以外の配信者も含めて、こっちの世界の人は魔法が使えないって言うのを忘れてたわ」


 完成した動画を確認してアキナは固まってしまう。


「大丈夫っすよ。これ面白いじゃないっすか!」

「ううん、もう一度台本を作ってくるから撮り直しましょ」

「アキさん、これ以上は時間がかかり過ぎるっす。それに、予算もいくらになるか……」

「……そうね。悔しいわ」

「心配しすぎっすよ。この動画絶対バズるっす。それにダンジョン配信やってない普通の視聴者も沢山ローブを買うと思うっす」

「だと良いんだけど」


 心配そうなアキナをよそに、レナはウキウキで動画をアップロードし始めた。

2話目はいかがだったでしょうか!?


もしなにか感じたことが肯定、否定に関わらずコメントをお待ちしております!


もし面白いと思って頂けたなら、この小説をブックマークをして頂けば嬉しいです。


よろしくお願いいたします。

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