〜天使の能力者〜
降り頻る雨の中、1人の少年が、泣いていた。
手にしている傘を強く握りしめ、一目も気にせず泣き続けた。
嗚咽と共に吐き出される息は白く、空に舞い上がっては消えていった。
まるで、少年の深く、暗い悲しみから逃れようとするかのように―――
―――それから数年後。
昔は泣き虫だった俺も今では立派な一人暮らしの高校生になった。
俺がここまで生きてこられたのは、両親を亡くした俺を引き取ってくれたおじさん達のおかげである。
彼らのおかげで学校生活はとても有意義なもので、気がつけばもう12月なっていた。
街はクリスマス一色に染まり、賑わっていて。
そんな季節の夜には、純白ともいえる白雪が降り、ライトアップされた街と互いに刺激しあって幻想を造り出している。
そしてここからなのだ。
ありとあらゆる常識が覆され、非日常と呼ばれる毎日が、不幸が、俺に襲いかかってくるのは・・・・。
朝、チュンチュンという可愛らしい小鳥の声や窓から射し込む心地よい朝日によって気持ちよく目が覚めるのではなく、
ヂリリと人の鼓膜を破らんとする爆音によって目が覚めた。
「ふぁー・・・・」
ひときわ大きな欠伸をしながら、未だ鳴り止まぬ目覚まし時計を止め、
「よっ・・と」
体温により暖められた心地よいベッドの誘惑に耐えながらも何とかベッドから脱出することに成功した。
いつもの癖と言うのだろうか、無意識に窓に目が向けられる。
外はまだ薄暗かった。
だがそんな暗さに、ちらりちらりと白い綿のようなものが顔を覗かせていた。
雪か・・・。通りで寒いはずだ。
眠気眼で窓の外を眺めるのを止め、のそのそと学校へ行く支度を初めると、徐々に脳が覚醒してきた。
目がぱっちりとはいかないけど、多少眠気は吹き飛んだのでさっさと飯を食い、お気に入りのマフラーをつけて家をでた。
そして俺は驚くことになった。
なぜなら、辺り一面銀世界とはこのことかと言わせるぐらい雪が積もっていたからである。
家々の屋根に積もる雪は重たそうで、たまに滑っては地面に落ちていく。
今はほんのわずか降るだけの綿雪だけど、昨夜は、今季一番の大雪だったのかもしれない。
「さぶぅー」
やっぱりというか、お気に入りのマフラーだけでは寒さを防げる分けもなかった訳で、何度も身震いさせられた。
手袋も着けていたら変わっていたかもしれないなぁと思ったが後悔先に立たずである。
我がマンションからここまでもう数百メートルも離れてしまっていた。