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ジークの憂鬱は酒で忘れる



  「今日もノルマ達成っとさて帰るか・・・」

 

 いつも通り近くの森で魔獣討伐を終え、帰路に着くが、足取りは重くため息が出てしまう。

 

  と、いうのも冒険者ギルドでの討伐報告と買い取りが手間な上に面倒だからだ。

 

  ◇◆◇◆

 

エルデン王国の首都である『エストニア』の冒険者ギルドを拠点に冒険者活動をしているが、オーガの群れを単身で倒してからギルドの受付け嬢からの誘いや他の冒険者パーティからの勧誘がウザい程増えた。

 

オーガは熟練の冒険者パーティと国の近衛騎士団と合同でなければ倒せないといわれている強力な魔物である。

 個人的いえばそこに運悪く居合わせてその群れに特殊個体であるレッド・オーガとオーガ・キングを倒した。

 

 冒険者として危険な魔物を倒しただけであったが周りからの好感度が変わりすぎてウンザリしている。

 

 ため息をついて最初に討伐完了の為に買い取り場所に向かうと周りからの視線が向けられているのがわかる。

 無視して担当課の嬢がいる受け付けに向かいテーブルに並べる。俺の顔を見ると子どもっぽい笑みを見せて手を振ってくる嬢は新人のマールだ。

 

 まだ新人で子どもっぽいからまだ楽なのだ。

 

「スモールボア三匹とホーンラビット五匹。それとゴブリンの耳が十ある」

「ジークさんにしては何かショボいッスね?」

「お前な。解体して持って帰ってこれる量にも限度があるんだよ。俺は魔法の鞄(マジック・バック)持ってないからこれで限界だっつーの」

 

 オーガの群れを退治した際には多くの冒険者や王国から派遣された近衛騎士団がいた為に多くの素材が持ち運べただけである。

俺自身が使用できる魔法は武器に魔力を纏わせて強化するだけである。

 

 そもそも魔法の鞄(マジック・バック)はダンジョンでしか手に入らず市場に出回っても高額な取り引きで売買される為に持っている冒険者は極一部だ。

 

「ええ~ ジークさんならパーティ組んだらダンジョン踏破も余裕ッスよね?」 

「アホか。急増パーティ何て直ぐに全滅する。それなら単独(ソロ)で行けるところまで行った方が特だ」

「アホって言わないで欲しいッス!自分まだ見習いだけどジークさんならって思って・・・」

 

そうやって評価してくれるのはありがたいが受付け嬢に大切なのは冒険者を殺さずに育てる事だ。

 調査依頼だったり新人への依頼を見極めるのも仕事だぞ? 初っぱなから魔物や魔獣を舐めてる新人は間違えなく死ぬ。

 

 新人のマールはまだ冒険者ギルドの受付け嬢の仕事内容を理解してない。すると、後ろから来た教育係であるエレノアが木の板でマールの頭を叩いた。

 

「無駄口働かずに仕事しなさい。ジークさんを困らせるんじゃありません」

「痛いッスよ~ だってジークさんなら行けそうな気がするッス!」

「俺はあくまでも戦闘特化の前衛型戦士だ。狭いダンジョンよりも広い草原や森の中での戦闘に慣れてるからな。今更ダンジョン向きの戦闘スタイルには戻せんぞ?」

「それでジークさん。申し訳ないのですが『また』です」

 

 エレノアが『また』というのはエルデン王国からの招待状である。オーガの一件以来度々招待が届くのだ。あんな貴族連中が集める場所に行くなど考えるだけで面倒臭いと嫌な顔をしてしまった。

 それを見ていたエレノアは「またお断りの手紙を出しておきます」同情の笑みを浮かべた。

 

 ◇◆◇◆

 

 冒険者ギルドで一通りの手続きを終えて店に入ると、まだ誰も店には来ていない。俺に気が付いたイオラさんが挨拶をしてカウンター席に立ちいつも通り生と煮込みを注文する。

  イオラさんは「はいよ!」と返事をすると直ぐに生と煮込みをテーブルに出してくれる。


「ああ、そうだ。これスモールボアの肉。少なくて悪いけど調達してきた」

「わざわざ良かったのに。まぁ、スモールボアの肉も高くなってるからね」

「まぁ、こっちに回せそうな食材はちょっとでも回すよ。イオラさんの飯食えなくなると俺が困るし・・・」

「たまには冒険者ギルドの飯処で食べたらどうだい?ウチよりメニュー多いだろ?」

「酒も満足に飲めねぇつまんねぇ勧誘ばかりで飯が旨くねぇからヤダよ。それにウェイトレスの子も色気仕掛けされるしよぉ~ 仕事終わりにそう言うの求めてネェんだよ・・・」 

 

  唯一愚痴をいえる相手はこの店の女将さんであるイオラさんだけである。オーガの群れを討伐した際も他の者は俺を讃えたが、イオラさんだけは俺の心配をしてくれた。こっちもオーガのとの戦いの最中イオラさんの店を守ることで頭がいっぱいだったとは恥ずかしくていえないとジョッキを飲み干す。

 

すると、他の常連客達も終わったようで狭い店の中は直ぐに満席になった。常連客の一人で相談に乗ってくれるオカマのミラーさんが隣に来て何杯か飲んでいた時にフッと思い出した。

 

「そう言えば、また王国からの招待状届いてさ~アレ行かないとマズいかな?」

「そうねぇ~流石に王族相手からの誘いなら一度ぐらい顔を出した方が良いわよ?」

「かぁ~面倒くせぇ~ 絶対くそつまらないし、飯がマズくなる。用があるならテメェが来いってんだよ・・・」

「ジーク!アンタ、それで国王様がウチの店に来たらどうするのさ!?」

「良いじゃねぇかよ?別にイオラさんの庶民的な飯を王様が食ってもよぉ~つーか、国民の事思ってんならもっと考えろってんだよ」

 

 酒が周り愚痴をいうと周りの常連客も便乗して「兄ちゃんのいう通りだ!」と返事をした機嫌がよくなり店にいた者らの酒代をイオラさんに渡して嫌なことは楽しく騒いで忘れることにした。

 

 


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