ジークとイオナと魔物使い(1)
翌日、イオナさんとステアを連れて近くの森に訪れていた。ドラゴニュートの一件以来は魔物や魔獣の姿は減っている為にイオナさんとステアを連れていくのには丁度いい条件が揃っている。
基本的に依頼という形でなければ冒険者でない者を外に連れ出す事はできないがイオナさんは『特例』として認められている。それは同じように神獣に認められた人だからだ。森の中を進みながら神獣についてステアに教えていた。
神獣は神に近い力を持っている魔獣の事であり、世界中にいると言われている。まぁ、実際に出会っているのは二匹で他はあった事がない為にどんな性格なのかは知らない。
「えっと、イオナさんは何で神獣様に認められたんですか?」
「唯一俺よりも立場が上の人って認められたからな。俺らはその神獣に襲われて事があってな。んで、俺が返り討ちにして仕留める寸前にイオナさんが止めに入ってな・・・」
「向こうも縄張りに勝手に入ってきた人間を追い返すつもりが返り討ちにされるなんて思わないわよ」
「ジークさんが化け物なのは良くわかりますね」
襲われたら反撃するのが冒険者だろう。少なくとも強さがわからないなら少し戦って撤退するかどうか判断する。情報がない魔物や魔獣に遭遇したときにはなるべく手の内を見せて貰った方が対策を立てやすい。
まぁ、殆んど大剣に魔力込めて斬るか、拳に魔力込めて殴るで解決してるがな。すると、カサッと音を立てて緑色のリスが出てきた。
「『エメラルド・カーバンクル』!本当にいたんだ!」
「ただの色が珍しいリスだと思ってたわ。食いしん坊の・・・」
「キュイって鳴くから名前それで呼んでる。試しにコイツテイムしてみたらどうだ?ナッツあげれば懐くぞ?」
「あの、エメラルド・カーバンクルって人への警戒心が強くて一生のウチ出会えるかわからないリスなんですけど?」
ステアから衝撃な事実を教えられた。イオナさんと俺がただのリスだと餌付けしてやつがそんなに貴重とはただの食いしん坊の人懐こいリスじゃねぇんだ。
試しにステアの掌にナッツを出すとステアの身体を上り掌のナッツを食べ始めた。
ステアが恐る恐る背中を撫でたが、気にすることなく食べ続けた。そして、満足すると、ステアをじっと見つめていた。
「もしかしてステア君が魔物使いってわかったんじゃないのかな?」
「試しにテイムしてみろよ。そいつも候補の一匹だしな」
「わ、わかりました!【テイム】ッ!!」
魔法陣から輪っかのようなものがキュイを締め付けてる。キュイは何が起こってるのかわからず、首を傾げていた。本当にコイツ危機感ネェな。すると、見かねたイオナさんがキュイに声を掛けた。
「キュイちゃん、ステア壎と一緒に冒険者になる気はある?」
『キュイ?』
「ステア君の使い魔になれば国にも入れるし、ウチのご飯をジークに持ってきて貰う必要はなくなるわよ?」
『キュッ!?キュ~・・・』
言葉の意味がわかっているのか真剣に短い腕を組んで悩み始めたが、直ぐにステアの顔に飛び付くと顔に張り付いた。
すると、キュイの身体が光始めたが、直ぐに収まりステアの肩に移動すると頬を顔に擦り付けた。
「ありがとう!キュイちゃん宜しくね!」
『キュイ♪』
「さっきのが『使い魔の契約』ってやつか?」
「はい。テイムしても相手がそれを受け入れないと仲間に出来なくて・・・」
「魔物使いの原理がさっぱりわからん」
見た感じだとステアはキュイよりも魔力は多い方だ。今まで何故テイムが成功しなかったのか理由がわからない。少なくとも魔物使いならそれなりの冒険者を着けてくれてテイムに協力するようにギルドが要請する。
だが、船を使ってエルデン王国の冒険者ギルドに来たと言うことはそれではテイム出来ないという事だろう。
悩んでいると、背後から大きな魔力が近づいてくるのに気付き振り替えるとクリスタルホーン・ディアーがいた。ステアは驚いた表情をしていたが、イオナさんが近づくと頭を下げて大人しく撫でられていた。
「久しぶりね。クリス。元気だったかしら?」
『元気だが、歳には勝てんよ。あんな若造の子竜毎に逃げねばならなかったからの』
「ま、魔獣が喋った? 伝説の魔獣もしくは神獣って呼ばれてるクリスタルホーンディアー・・・」
『ぬ?ほう、魔物使いの人間か。だが、これは・・・』
「おい、クリス。フォードはどうした?」
フォードとはもう一匹の神獣であるフォレスト・フォックスリンの名前である。いつもなら二人で来る筈だが、クリスだけで来るのは珍しい。
すると、イオナさんとステアに自分の背中に乗るように伝え、着いてきて欲しいという。二人をクリスの背中に乗せて後を着いていくとフォードの群れの縄張りの塒である巨大な樹木の塒に案内された。
すると、そこには弱って横たわっていたフォレスト・フォックスリンのフォードの姿があり慌てて駆け寄った。
「おい!フォード!誰に殺られた!?人間か?」
『この声はジークか?スマンなドラゴニュートの魔剣で斬られてしまって魔力不足でまともに起き上がれんのだ・・・』
「この剣そんなヤベェのか。ああ、通りで魔剣が暴走状態だった訳か。取りあえず、腕を噛んで魔力を回復させろ」
籠手を外してフォードの口に腕を噛ませた。ステアは慌てていたが魔物や魔獣は魔力を食べ物から得ているフォレスト・フォックスリンは血肉から魔力をえるためにこれが一番手っ取り早く回復させる手段だ。
腕に噛みつき魔力を回復したフォードは立ち上がって頭を下げた。そして、ドラゴニュートの一件での出来事を話し始めた。
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