ジークと新人魔物使い
普段は騒がしい冒険者ギルドが静かだ。魔物使いである中性的な顔立ちをした子に使い魔になって下さいといわれたからだ。
「あー、まず名前と性別を聴いてもいいか?」
「あ、す、すみませんステアです。性別は男です」
「えっ!?女の子じゃ無かったんッスか!?」
「や、やっぱり女の子に間違われますよね?」
本人も気にしてるようだし、性別については後でいいか。取りあえず使い魔の件を二人に聴くとどうやら原因はマールにあるようだ。
どうやら「この国で一番強い魔物や魔獣を従えてる人っていますか?」いう質問に俺の名前を出したからだという。俺は魔物使いじゃねぇんだけどな。
取りあえずは俺が人間であることを証明しないとダメか?
「みての通り人間なんだけど?使い魔って何で?」
「絶対人間離れしてますッス。少なくとも今、国が平和なのもジークの武勇伝でお陰じゃないッスか!?」
「辞めろ!!アレは武勇伝じゃねぇ!黒歴史って言うんだ!! 冒険者が国を滅亡まで追い詰めた事を武勇伝って言うな!!」
「そんな!!ジークが王様に一発いれてくれたから酷かった税収も安定して国交とかもしっかりして今があるんじゃないッスか!それに神獣からも気に入れられてるじゃないッスか!?」
十年ぐらい前は悪政といっていいぐらい高い税金を取っておりごう傲慢な王だった。まぁ、イオナさんが泣いて困ってたから直談判しに行こうと思ったときにワイバーンの襲撃事件があって一人で撃退した事がある。
当時の騎士団はくそで全く仕事せず冒険者達でてんやわんやしており、ルーキーだった俺がワイバーン討伐をこなした。
まぁ、当時は今より弱かった。そのせいで街に被害が出てイオナさんが怪我した。
高い税金を取っているのに肝心な時に役に立たない事にキレて騎士団と王国相手に一人で殴り込んだ事がある。
国政について民を苦しめるようなら問答無用で滅ぼし、民を大切に出来ない王なら何発でも殴ってもいいと思って殴った。まぁ、イオナさんに止められなかったら今頃王族殺しになってただろう。
今でも騎士団は信用してねぇし、今度また舐めた事やりやがったぶっ殺すって脅しはした事があったがそれが武勇伝になってたまるか。こっちは好きな女が傷ついてからムカついて国に喧嘩を売ったバカだぞ。黒歴史だろう。
「どう考えても人間がやれる事じゃないのでジークさんは魔族なんじゃないかって噂が・・・」
「誰が魔族だ。産まれも育ちも人間だわ」
「だから試しに使い魔になるかやって貰おうって思って呼んだッス!」
「マール、拳骨と尻叩きどっちがいい?いい加減怒るぞ?」
試しに使い魔になるかって実験の為に呼び出しやがったのか? エレノアさんは腹押さえて笑い堪えるので使えない状態だし、やるだけやってみるか。
「んじゃ、試しにやってろ?何やればいい?」
「えっと【テイム】掛けるのでじっとしてて下さい」
「わかった。いつでもこい」
「ふー、行きます!【テイム】!!」
ほう、魔物使いもそれなりに魔力はあるんだな。魔法陣が床に浮かび上がって輪っかのようなものが身体を締め付けてきた。
だが、簡単に壊れてしまった。ステアはガッカリした表情でため息を吐く。確かに魔物使いが使い魔がいないとなると冒険者としての活動ができない。
下手をしたら除名される可能性もあるし、このままって訳にも行かないだろう。
「カルテ、ちょっとランタたちの面倒頼んでもいいか?」
「お前の事だからその子使い魔でも探しに行くのか?」
「まぁな。このままだと冒険者として活動ができないだろ?それに候補なら心当たりがあるしな」
「えっ?いいんですか・・・?」
「おう。多分二匹は行けるだろうがもう一匹は手強いぞ?」
この辺りの魔物や魔獣は大方の縄張りを知ってる。十年も現場を知っている。人間に好意がある魔物や魔獣も心当たりが全く無い訳ではない。
すると、笑いを堪えていたエレノアが復活した。
「す、すみません。マールが面白そうな事をやろうとしてたのでつい・・・」
「流石に使い魔になりませんよ。てか、これで使い魔になってたら仕事量増えますよ?」
「ステアさんは所属冒険者ギルドが決まってないので大丈夫ですよ。ここに所属にすればいいだけなので」
「まぁ、そういう事にしておきますよ?」
エレノアは涙目になりながら目を擦りながら説明してくれた。どうにもステアは所属冒険者ギルドがないようだ。まぁ、護ってくれる魔物や魔獣がいないのであれば依頼をこなせない為に冒険者ギルドに所属させても利益なら無いと思われたのだろう。
ちょうどいい。神獣どもをに拳骨落とすついでに使い魔探しに協力するか。
◇◆◇◆
「なるほどねぇ。その子が魔物使いの子かい?」
「そうそう。んで、魔物使いの使い魔になればアイツらも人と関われるから丁度いいと思ってさ。イオナさん悪いけど手伝ってくれない?」
「まぁ、そういうことならいいわよ?ジークくんだけだと出てきてくれないからねぇ」
あの後イオナさんの立ち居酒屋により事情を話して協力をお願いした。実際にイオナさん関連で知り合ったが俺だと怖がって出てこない可能性があるからだ。イオナさんは二つ返事で了承してくれて『アイツら』の好物と俺らの昼食の弁当を用意してくれると笑顔でいってくれた。
やっぱり癒されるな。
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