銀級冒険者と新人冒険者の指導
あれから二日後、報酬を山分けしてアルテナパーティは所属しているダンジョン第一都市部へと今回の出来事を報告する為に戻った。この国にはダンジョン第一都市部と第二都市部があり金級になるとどちらかに配属になる。本当ならば第三都市まである筈だったが訳あって俺がダンジョンをブッ壊してしまった。
今はヴィクトルパーティと共に新人のランタパーティの指導を行っている。冒険者ギルド内には訓練場がいくつかあり、銅級、銀級はここで訓練している。
今はヴィクトル相手に手合わせをしているランタの動きを見ている。勿論、模擬刀であるが・・・
「ほら、しっかり動きみろ。ゴブリン相手の時に教えただろ?」
「いや、ヴ、ヴィクトルさん、は、速すぎて当たらないですよ!?」
「ジーク、これだと魔闘術の基礎練からやった方がいいんじゃねぇか?」
「あー、じゃあこっちでアニスと一緒に魔力が無くなった魔石に魔力入れ直す特訓するぞ?」
「ま、魔力の切れた魔石に魔力を入れるって?」
さっきからアニスが拳程の石に魔力を流し込んでいる。まあ、コツさえ掴めば簡単なんだが感覚の問題だろう。ランタに魔石切れの魔石だったものを投げ渡す。
「これ魔石だったんですよね?けど、一回使いきったら廃棄場に捨てるんじゃ・・・?」
「あー、その廃棄場からきたのがこれだぜ? まあ、ジークが常識変えて王国の学者達泣かせたからな・・・」
「普通に考えたらできないことではないと思うがなー」
「けど、ジークの話を聴いていたら可能ではありますけど・・・」
本来ならば魔力の切れた魔石に魔力を入れ直す事は長年不可能だというのが常識であった。だが、魔法を使う杖や魔剣などの魔力はその武器その物にあるかといえば違う。
所有者の魔力と術式によって発動条件が違ってくる。
魔力の微調整をするという意味では魔法使いも魔法戦士も同じ理屈だと教えられたからだ。
「まあ、これはあくまでも武具に魔力を伝える訓練だと思ってくれればいい。こうやって魔力を流し込めばできる」
「ジークよぉ~お前雑に教えすぎだぞ?オレらの時よりも説明省いてるぞ? あー、いいか?先ずは魔石に魔力を送り込むイメージを頭に持つんだ。それで・・・」
雑に教えてる訳ではないが『感覚』人によってまるで違う頭で理解できていてもできるかは感覚の問題である。ヴィクトルはそういった感覚を教えるのが上手いほうだ。
少なくともランタとアニスも真面目に話を聞いている。新人の斥候・エリックはケリーの元に就いて斥候として技術を教えて貰っているところだ。
エルデン王国は他国との交流は港街であるベルリッツが拠点になっている為わざわざ国にいる商人も少ない。冒険者もここではなく港街支部かダンジョン第一都市部か第二都市部に集中している。
まぁ、実力が着いてきたらダンジョンに挑戦したい気持ちはわからなくはないがイオナさんに会えなくなるのは嫌だ。少なくともダンジョンに拘らなくても冒険者として食っていけるだけの稼ぎはあるし、そもそも王国の冒険者は常に不足している。
ヴィクトルの説明を受けながら真剣に魔石に魔力を流し込もうとしてるランタらもいずれはダンジョン都市のどちらかの冒険者ギルドからスカウトされるだろう。
ダンジョンでは魔剣以外にも財宝や珍しい魔道具なども見つかることがある為に国と冒険者ギルドの資金源でもあるからだ。
ヴィクトル達もランタパーティを銀級に昇級させれば金級になり、何年かはダンジョン都市へ派遣されることになる法律があるからだ。
「まぁ、できるようになれば今使える魔法の応用にも使えるからな?ジークは規格外だから参考にしない方がいい」
「勝手に化け物扱いされるんだぞ?普通に鍛えただけなのに」
「普通に鍛えただけ呪いの魔剣が吸い尽くせない魔力量持ってる奴が『普通』だと困るんだけどよ?」
「確かに・・・」
いや、そう言われもな。この基礎練習を毎日やってればこれくらい伸びるはずだ。
ヴィクトルも魔法戦士になれた事実もあるし、ケリーとカルテも魔闘術を習得してからかなり成長している人物だ。すると、ケリーが訓練場に顔を出すと難しい顔をしていた。
「ジーク。マールが呼んでるぞ? 今回もかなり厄介な案件だぞ?」
「マールのヤツ俺に依頼すればなんとかなるって思ってねぇか?」
「否定できん。依頼人は別の国の銅級冒険者。職業は魔物使いだ」
「魔物使いか・・・」
魔物使いになるのは稀で大方は神殿で職業が決まるがその中でも勇者・聖女・魔物使いは世界に一人いればいい方だ。
だが、勇者と聖女よりも魔物使い《テイマー》は過酷である。魔物や魔獣を使い魔として使役しなければ戦闘力は無い。
パーティを組んでもらって魔物や魔獣を使い魔にすると聞いたことがあるが俺に何のようだろうか?ヴィクトルにランタ達の訓練を任せて受付場に行くとマールが黒髪の中性的な顔立ちをした事話していた。
男の子?女の子?どっちだ?そう悩んでいるいるとマールが呼び掛けて近づく。そしてとんでもないことを言われてしまった。
「ぼ、僕の使い魔になって下さい!!」
「はっ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。いや、俺、人間ですけど!? エレノアさん笑ってないで状況説明してよ!! 俺は人間だぞ!? こりゃまた面倒臭い事に巻き込まれそうだとため息を着いた。
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