勧誘の多い冒険者ジークと立ち飲み屋の女将・イナサさん
冒険者であるジークは拠点にしてる冒険者ギルド内にある食事処兼酒場で場所は落ち着かない性格であった。特に実績を残してからは酒のパーティへの誘いなど面倒臭いだけだ。
パーティを組めばそれなりに報酬もいい依頼も受けられるがパーティに入ってしまえば自由な時間が減ってしまう。
それだけはゴメンだ。面倒臭い上にやりがいを感じない。
「イオナさ~ん。『実績』出してから他のパーティの勧誘とか国からの騎士団勧誘がクソウザい」
「そりゃ、当たり前だろう? アンタこの国の冒険者の中じゃソロで一番実績出してるし、本当に強いじゃないか?」
カウンター席でテーブルに顔を伏せて愚痴をいうとこの酒場の女将でイオナから呆れたように言われてしまう。
この立ち飲み屋を経営していたのは老夫婦であった頃に知り合った。当時そこで雇われていたのがイオナさんだった。その時は駆け出しの冒険者で良くツケで食べさせてもらっていた。ある程度の実力がつき、ツケも返したが当時からの顔馴染みなのだ。
まぁ、その老夫婦がイオナさんに店を渡して今もこうして経営している。
と、いっても立地も良くない為に昔から来ている常連客が為にお客を連れてきてくれることでなんとか経営が成り立っている状態だ。
まぁ、一番金を落としてる常連客が自分なのはいうまでもない。
「今日は常連の爺さん連中と工業地区のおっちゃんらは?」
「あー、何か国王の要請で防壁の工事が入ったとか言ってたねぇ」
「マジか。あー、んじゃ、また売り上げ下がるじゃネェかよ?生と煮込みとハムカツ、鶏刺し追加で」
「それ全部ウチだと高い方の商品なんだけど?まぁ、冒険者は身体が大事だしちゃんと食べてくれるし良いけどね?」
女将であるイオナさんはお世辞にも美女ではない。褐色肌でそばかすがある茶髪のポニーテールの二十代半ば。 俺はそんな彼女が好きだ。
「いいのいいの。いい冒険者なんて討伐依頼とか護衛依頼で割と懐は温かいからね。これくらい平気平気~」
「この店にお金掛けるぐらいならいい子見つけてご飯でも作ってもらいなよ」
「俺はこの店の平凡な味付けが好きなの。それにイオナさんじゃない女なんて・・・」
「お~い、女将さ~ん!やってるかーい?」
タイミング悪く常連客の爺さん連中が店に入ってきてしまった。
まぁ、入ってこなくても多分言えなかっただろう。
出してもらった酒とツマミを食べてて少し多めの料金を払って店を出るのがいつものお決まりのパターン。
「まぁ、いいか。余計な事してこの店に通えなくなってイオナさんに会えなくなるのが一番キツイからな」
◇◆◇◆
一方で賑やか店内で働く女将であるイオナはジークの言葉が気になった。すると、常連客の一人である大柄な体躯の持ち主あるオカマのミラーはイオナに声を掛けてきた。
「あらぁ~まぁ~たジーク君に告られ損かしら?」
「み、ミラーさん!! からかわないで下さいよ 」
頬を紅く染めるイオナとは対称的に下世話な常連客はイオナがジークに好意を抱いているのを知っている。
そして、ジークもイオナに好意を抱いてこの店にやってきているのは周知していた。
「それにジークはもう王国でも冒険者ギルドでも一目置かれる存在なんですよ? ウチなんて・・・」
「まぁね、単身でオーガの群れから国を護り切った『守護神』の異名が着いちゃったら色々な子から声を掛けられるでしょうねぇ~」
ジークが出した『実績』とはとてつもなく大きな功績である為に冒険者ギルドと国は是が非でもジークを懐に抱え込みたいと必死である。
だが、等のジーク本人は依頼は一人でこなしたい派のために必要最低限の時しか合同討伐にも参加もしない。
基本的に近くの森に出る魔獣討伐を中心に活動している為に冒険者としての稼ぎで十分な収入もある為に面倒臭い人付き合いや王族の為に戦う気など本人にはまるでない。
「それでもいつかは覚悟決めきゃ行けない日は来ると私は思うわ。応援してるから頑張りなさい」
「そうだぞ!女将さん!」
「ありがとうございます。それなら溜まったツケを払っていただけるとウチ的には助かりますけど?」
イオナは溜まった伝票を常連客達に見せると常連客の一部は苦笑いをした。ミラーは追加のお酒とツマミを頼むを元気良く返事をするイオナに向かって笑みを向けた。
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