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プノンペンでの仕事

 私は一人で見知らぬ国に行ったりするし、ガタイもでかいし、空手をやってたとかのイメージから度胸のある男だと思われることが多いのですが、実は(謙遜ではなく)かなりのチキンなのです。

 暴力や喧嘩、血を見ることなど大嫌いですし、怖い顔でにらまれたら目をそらします。


 今回からのお話はその辺をふまえた上でよんでいただきたいのです。

 でないと、つまらないケンカ自慢みたいな話になってしまいますので。


 ・・・・


 バンコクから飛行機で1時間余り・・・あっというまにカンボジアです。


 私にとって意外だったのは、カンボジアに行くツーリストは以外に多く、日本人もちらほら混じっていたことです。


 スリランカですら日本人の個人旅行者などほとんど見かけず(サトミ一人にしか会わなかった)やはり内戦の影響かと思っていたのに、もっとヤバイはずのカンボジアに旅行に行くというのはどういう神経なんだろうと思いました。


 乗合タクシーでプノンペン市内へ・・高層建築がほとんどなく意外にきれいな街並に見えました。

 中心部に位置する安ホテルに宿をとりましたが値段のわりには清潔で従業員の態度もよく気に入りました。


 ホテルの一階にあるオープンレストランで食事をとります。

 メニューがびっくりするほど多く、しかも安くてウマい!


 ・・・なんだ。プノンペンけっこういいとこじゃん。


 こういう風にすぐ油断するのが私の悪い癖です。


 さて、このレストランの壁に何か日本語の印刷物が貼ってあります。

 なんだろうと思い読んでみると日本大使館から旅行者への注意事項でした。


 内容はこんなかんじ。


『プノンペン市内では旅行者を狙った強盗事件が多発しております。夜間の外出は控えてください。犯行には実際の銃器が使用されていますので被害にあっても決して抵抗しないでください』


 私はこの注意事項をしっかり胸に刻んでおこうと思いました。

 バンコクでサトミと再会する前に命を落としでもしたら、シャレになりません。


「プノンペンて女性が多いとおもいませんか?」と中田さん。


 ・・言われてみると女性が多い・・というより男性がすくないような。


「多分、ポルポト派が男をたくさん殺しちゃったから男女の比率が狂ってしまってるんですよ」


 ・・・そうなのか。


 しかしそのような事は中田さんに言われなければおそらく私はまったく気がつかなかったでしょう。

 ホテルの従業員は男性だし、ホテル周辺にたむろするバイクタクシーの運転手も男性です。しかし市内を見回すとたしかに女性が多いのです。


 ・・・その点にいちはやく気づく中田さん・・・ただものではない。


 さきほどまで私は物売りのおばさんの笑顔や、意外ににぎやかで活気のある街に目を奪われていましたが、中田さんの話を聞いてあらためて見てみるとここにはかつてこの街を襲った・・そして今も続いている恐ろしい暴力の爪痕がいたるところにしるされていました。


「ま、それはともかく仕事しましょう」気をとりなおしてプノンペン中央市場へ。


 ここでの私のおもな仕事は中田さんが買い付けをはじめると群がってくる物乞いを追い払うこと。


 私はスリランカで物乞いには慣れきっていました(スリランカの物乞いは、あのインドをくぐってきたベテラン旅行者ですらひるむしつこさです)


 ・・が、ここの物乞いは手足のない人・・軍服を着た傷痍軍人・・などが多く胸が痛みます。しかし感傷的になってばかりはいられません。仕事は仕事。


 中田さんは商品をきびしくチェックしてめぼしいものがあると徹底した値切り交渉をはじめます。

 これが長い!店のひとが「帰れ!」と怒り出しても自分の言い値をなかなか譲らない。


 だからこそ中央市場ただ一個所の買い付けに5日間もの日程を組んだわけです。


 バイヤーという職業は、一見すると普通のバックパッカーと見分けがつかない人が多いのですが、実はその懐には常に大金を忍ばせているわけです。

 したがってバイヤーであることが知られると狙われる危険があります。


 中田さんが私をボディガードに雇ったのはそういう事情からなのです。


 同業者のあいだでも「中田が通ったあとには草一本残らない」と恐れられる中田さんの仕事は、着実に成果をあげています。


 私たちは毎日ホテルのレストランで朝食後、中央市場へ行き夕方まで仕事して、日が暮れないうちにホテルに戻り夕食を食べたりビールを飲んだりして1日を終えるというスケジュールでした。

 

 三日目の夜ホテルのレストランで夕食を食べながらのミーティング。


「今回はわりと早く仕事が片付きました。トミーさんのおかげです。明日はどこか遊びにいきましょう」


「本当ですか。でもプノンペンて何があるんですかね。そこらにいる日本人の旅行者にでも聞いてみましょうか?」

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