表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/115

噂の真相

「トミー、まだコーラが残ってるぜ、一休みしたらどう?」

ボブが言います。


文字で書くとすごく長い時間が経過したみたいですが、立ち会ったのはほんの2分程度。

ベビスの講義が10分程度なので、まだコーラは飲めるでしょう。


「じゃあ私もコーラをもらおう。トミー座って話そうよ」

ということで、ベビスを交えてテーブルに着きます。


「トミー、ツイてたな。破壊王に会えて」ボブが言います。

誰が会いたいって言った?おかげで怖い目にあったぞ!

・・・もっとも今は会えてよかったと思っていますので、その言葉は飲みこみました。


ボブの言葉を聞いたベビスが苦笑いを浮かべて言います。

「ふふ・・破壊王か・・・その噂が大きくなってるので、私は少々迷惑してるんだよね」


「僕もキャンディであなたの噂を聞きましたよ。なのであなたはもっと狂暴な方かと思っていました。紳士的な武道家なので驚いています」

私が言うと・・・


「だからトミー、立ち合おうって言ったらかなり躊躇していたんだね。ああ、そういえば」

ベビスがコーラを飲みながら私に質問しました。


「さっきの立ち合いだけどね、トミー、最後に何かやろうとしてたんじゃないか?すごい殺気を感じたんで、あそこで止めたんだよ。つづけたら怪我無しですまなくなりそうでさ」

・・・さすがです。気づかれていたか!


「いや実は、僕はあなたが噂通りに僕を五体満足では帰さないと思ってたので、一か八かで喉笛に噛みつこうと思ってたんです」


「ええっ?喉笛に噛みつくって、おいおい。私を殺すつもりだったのか?あそこでとめてよかったよ」

ベビスはかなり驚いた顔です。

もっとも仮に噛みつきに行ったとしても、勝算はわずかだったでしょうから、命拾いしたのはこちらです。


「そういうことになるからなあ。噂には迷惑してるんだよなあ」


「ええ、実際のところ、あの噂はどうなんですか?」


「噂にはかなり尾ひれが付いてる。まず私は父親も軍人だったし、児童労働しなきゃならないほど家は貧しくなかった」

・・・たしかに教育を受けていない人には見えません。


「イギリスでボクシングをやってプロで5連勝したのは本当だ。たしかにスリランカ人としては初の快挙だったと思うよ。でも5勝のうちKO勝ちは2つだけ。あとは判定勝ちだ」


「そうなんですか・・・しかしKOされた相手は再起不能とか脳挫傷とかいうのは?」


「ないない。みんなすぐに復帰しているよ」


「じゃあ、なんでボクシングをやめたんですか?」


ベビスはまたも苦笑しながら言います。


「うん、単に私にはボクシングは向いてないと思ったんだよ。ただ相手を打ちのめすだけのスポーツというのはどうもね」


「では空手大会での噂はどうなんです?」


「決勝戦で直接打の反則を取られたのは事実だ。まだ未熟だったんだよ。でも相手は前歯がちょっと欠けた程度だよ。粉砕骨折は大げさだ」


「でも、あなたは表舞台から消えた」


「まあ一度出たらトーナメントはもういいかなと思って。私はカッサバ先生の精神性に惹かれて入門したから、トロフィーとかはどうでもよかったんだ」


「ええと、血を求めて軍隊へ・・とかいうのは?」


「父が軍人だったし、私も愛国心から軍人になった。しかし、私は平和を望んでいる。スリランカに早く平和が訪れることを・・」


そういって、ベビスは目を瞑ります。

平和を愛するベビスはしかし、戦地でいろいろ悲惨なものを見てきたのでしょう。


「挑戦者をことごとく病院送りにしたとか、そんなことしてないよ」

目を開けてベビスが言います。


「オランダ人のキックボクサーを再起不能にしたってのは?」


「ああ、あいつはたしかにかなりひどい目に合わせたな。キックボクサーじゃないよ。頭のおかしいチンピラさ。キックの腕は大したことないけど、街中でナイフで襲ってきたんだ」


「ええっ!ナイフでですか?」


「だから腕の一本もへし折ったかもしれないけど、再起不能てことはないだろう」


「そうなんですか・・・・」


「そんな調子でね、噂ってのは尾ひれが付いて広まるのさ。私は今では血に狂った破壊王だよ」


かなり後年ですが、私自身が私の噂をバンコク、カオサンのゲストハウスで聞いて驚いたことがあります。


曰く、スリランカで道場破りをして回っただの、カンボジアで銃を持ったポルポト兵を素手で倒しただの・・・


まあしかし噂なんて多くはそんなものなのでしょう。


・・・・・


私は楽しかったヌワラエリヤの思い出と、ベビスの教えを胸にコロンボへの帰途につきました。


・・・僕が居ない間、デワはちゃんとやっているのだろうか?


という不安も胸に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  デワならきっとやらか……やってくれる(期待)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ