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ヌワラエリヤ・バッドボーイズ1

 キャンディはとても快適な街でしたが、かといって長居してもしかたありません。

 せっかくなので、私は文化三角地帯の観光を楽しむことにしました。

 文化三角地帯とはキャンディ、アヌラーダプラ、ポロンナルワの三都市を結ぶ三角形の内部を指します。

 ここに有名なシーギリア、ダンブッラ、マヒンタレー、ナーランダといった歴史ある文化遺跡群が在るのです。


 さて、この文化三角地帯の旅でもなかなか面白いエピソードがたくさんありますので、それをいちいち書くのも面白いのですが、空手バックパッカーの趣旨とは少々外れますので、これはまた別の機会にさせていただきます。


 三角地帯の旅をひととおり終えた私は、高原地帯であるヌワラエリヤに向かいました。

 紅茶に目が無い人ならこの地名をご存知ないはずがありません。

 スリランカでももっとも高級なお茶の名産地です。


 かつてイギリス人のための避暑地として開発された街なので、コロニアル風のリゾートホテル、ゴルフ場や乗馬場もあります。

 気候はとても涼しく、常春といった感じです。


 私はこの街に到着してすぐに、ガイドボーイに声をかけられました。

「今夜のホテルは決まってるのかい?」


 いつもならガイドボーイには頼らず、自力で宿を探すのですが。長旅に疲れておりましたのでガイドボーイに尋ねました。

「どこかいいゲストハウスはない?安くて快適な宿」

「OK、それならまかしといてよ!」


「トミー、ここだ。俺のオススメ宿は」

 ガイドボーイに案内された宿は、小さいながらもコロニアル風建築の雰囲気の良い家でした。

 民家の一室を貸し出す、ペイ・アコモデーション・スタイルの宿です。

 部屋代も高くはないので、ここに宿泊することに決めました。


 宿の奥さんが私に尋ねます。

「ここには何泊するの?」

「さあ、1泊か2泊かなあ・・・」

「3泊になさい。あさってはペラヘラがあるのよ」

「え!本当に!!」


 ペラヘラとはスリランカ伝統の象祭りのこと。

 世界的に有名なのはキャンディのペラヘラですが、ここヌワラエリアでも開催されるとは知らなかった。

 偶然ですがツイてるな・・と思いました。


 宿に荷物を降ろして、早速私は街を歩き回ることにします。

 涼しいので、あまり疲れることなく歩けるのがいいです。

 私はハガッガラ・ボタニカルガーデン(植物園)を見学することにしました。


 植物園内ではちょうど、どこかの女子校の遠足でしょうか?

 白い制服に身を包んだ女の子たちの集団が歩いていました。

 私が笑顔で手を振ると、女の子たちは一斉にはにかむような笑みを浮かべながらうつむきます。

 スリランカの女の子たちは、この恥じらう仕草がたまらなくかわいいのです。


 植物園を出て、さてどこに行こうかと考えていると、3人組の若い男たちに声をかけられました。

「ヤーマン!」

「・・・え?」

「ボブ・マーリーが好きなのかい?」

 ひとりが私の着ているTシャツを指さします。


 私はバンコクで購入したTシャツをローテーションで着ていましたが、そのときたまたま着ていたのがボブ・マーリーの肖像をプリンしたトTシャツでした。

 私はそれほどファンというわけでもないのですが、ボブ・マーリーは一通り聴いてはいましたので

「ああ、そうそう。大好きなんだよ」と答えました。


 それは彼らの身なりが、あからさまにラスタマン風だったからです。

 ロングヘアでメンクラの表紙が飾れそうなくらいの超イケメン。

 ラスタキャップを被った、しかしマイケル・ジャクソンにそっくりな少年。

 やせ型であきらかにボブ・マーリーを意識したお兄さん格・・・の3人です。

 例によって名前が覚えられなかったので、メンクラ、マイケル、ボブと呼ぶことにします。


「うれしいねえ。マッチャン(シンハラ語で友達の意)、日本人かい?」

 ボブが訪ねます。

 タイ語は語尾をやわらくするのにナと付けますが、シンハラ語はネと付けます。

 なのでぼんやり聞いてると「~ねえ、松ちゃん」と日本語みたいに聞こえるのです。


「日本のラスタファリアンに出会えるなんてツイてるな」

 とこれはマイケル。私は仏教徒でラスタファリアンではないんだけど、まあいいや。


 メンクラはシャイな性格のようで、黙って微笑んでいます。


「マッチャン、名前は?」ボブが尋ねます。

「トミーと呼んでくれ」

「日本人なのにトミー?」

「これでもいちおう本名なんだよね」

「へえ、かわってるね」


 3人はニコニコと何か話し合ってから、またボブがこちらに話しかけます。

「せっかくだから、このあとご飯でも一緒しない?」

 こういう場合、スリランカでは食事の支払いはこちら持ちになります。

 しかし、まあヒマだしそれもいいか・・と思い承諾しました。


 普段はあまり昼食は食べないのですが、このときは昼過ぎにご飯を食べることになりました。


 入った食堂はムスリム系のレストランです。

 彼らはラスタなのに、どうしてムスリム?と思いましたが、理由は美味しいからでしょう。

 私の持論ですが、外国を旅してどこが美味しいレストランかわからないとき、ムスリムの月と星のマークのあるレストランならまず外れません。


 美味しいカレーをライスではなく、食パンで食べます。

 ちなみにスリランカでは食パンのことを「パウロティ」といいます。


「トミー、明日は何か予定があるの?」ボブです。

「いや、特に決めてないけど」

「それはよかった。僕たちは明日、ジャングルウォークするんだよ。よかったら一緒に来ないか?」


 マイケルもそれにつづけます。

「楽しいよ。滝を登ってね、ピクニックするのさ。その後でティーファクトリーにも行くよ」


 メンクラはあいかわらず黙って微笑んでいます。


 まあ、特にすることもないし面白そうだ。

 すっかり観光モードなので、空手デモンストレーションももういいや。

 よし、ジャングルウォーク行ってみるか!


「分かった。行こう」と約束しました。


 3人組と連れ立って宿の近くまで来たとき、私を宿まで案内したガイドボーイが駆け寄ってきました。

 そしてなにやらすごい剣幕で、3人組と口論を始めます。


「トミー、ちょっと来てくれ」

 ガイドボーイが私のTシャツの肩口を掴んで、少し離れた地点まで連れていきました。


「トミー、お前奴らのことを知っているのか?」

「いや、さっき友達になったばかりだけど」

「いいか、よく聞け。あいつらはこのへんでは有名なバッドボーイズだ。観光客を凶器で脅しては金品を奪うワルだよ。何人も被害にあってる」

 ・・・そうなのか?


「よし、わかったらいいか。絶対に奴らと人気のない場所には行くなよ。絶対だ。いいな」

 ・・・ええと、、、ジャングルウォーク行くんだけど、やっぱりダメかな?

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