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モンキー流との会談

「なんだよセンパイ。僕が何でそんなのと話さなきゃならないわけ?」

 ホテルのロビーに呼び出されたデワは不機嫌です。

「だってお前の道場の問題だろ?道場主のお前が話すのがスジってもんじゃない」

 話し相手のモンキー流の一門とニコラたちは、先にレストランで待たせています。

「ボウイを連れて来たのはセンパイだよ。僕は最初からあんなの入れるのは気が乗らなかったんだから」

 ふてくされて言います。この態度にはさすがに私もカチンときました。


「お前なあ・・・じゃあ言うけどさ、お前ひとりでも生徒を自分で集めたかよ!大体お前がろくに空手もできないくせに道場やりたいなんて言い出すからさ、僕はこんなスリランカくんだりまで来るハメになったんだよ!いいかデワ!僕はな、仕事もやめて恋人とも別れてここに来たんだよ!お前の道場のためにだ。なのにお前は生徒も集めない稽古にも出てこない、自分の道場のトラブルまで僕になんとかしろってか?」


 喋っているうちにどんどん腹が立ってきました。大声で言い放ちます。

「いいよっ!勝手にしろよ!もう僕は知らない。明日日本に帰るよ!」


 私の剣幕にはデワも驚いたようで・・・

「ちょ、ちょっと待って。ゴメン。センパイ、そんな帰るなんて言わないでよ!今センパイに帰られたら困るよ。OK。分かった・・・僕が話すから・・・ね、頼むよ・・・・」

 卑屈な笑みを浮かべながら私の機嫌を取ろうとします。


「じゃあお前、ちょっとはコロンボ支部長としての仕事をしろよ。コロンボは空手道場多いんだから、こういうトラブルは今後も起こりうることだぞ。キチンと処理していかなきゃ」

「オス・・・わかりましたよ。でもセンパイも立ち会ってくれるんでしょ?」

「ああ、立ち会うよ・・・・デワ、レストランの中を見てみろ。あのテーブルに居る口ひげの男がモンキー流の先生だよ」

 ロビーに隣接したレストランの中を指差して言います。


「ああ、あいつね。あれはこのへんのガイドボーイのボス格ですよ。ゴロツキだよ。ボウイももともとあいつの身内だから・・・もしかしたら最初からこうやって因縁つけて、カネでもでもせびろうってつもりだったんじゃないのかな?」

 ボウイはどうもガイドボーイたちに対して、骨の髄から差別意識があるようだ


「バカ野朗デワ。職業はなんだろうがな、明らかにあっちのほうがちゃんとした先生だよ。僕やお前よりははるかにマシな空手家だよ!お前わかってるんだろうな?お前は身分がどうとか思っているのかもしれないけど、空手家としては向こうの方が格が上の先生なんだぞ。お前の方が礼を尽くさなきゃならない。失礼な態度を取ったら僕がお前を殴るからな」

「うへえ・・・オ・・オス。わかったよ」

「よし、いくぞ」


 デワを伴ってレストランに入ります、

 4人がけのテーブルのひとつにニコラとバトウ先生が並んで座っていますので、私たちはそのテーブルに向かいます。モンキー流門下生と、ボウイたちは別のテーブルに控えています。


「お待たせしました。こちらが当道場の師範格のデワです」

「オス。デワです。中空会コロンボ支部長で当ホテルの総支配人を勤めております」

 デワの挨拶を聞いたバトウ先生はちょっと驚いた顔をしています。


「ん・・・このホテルの総支配人ってことは、まさか・・・**さんの一族の方ですか?」

「オス。**は私の父親です」

「ふーむ・・・これは驚いた。私はてっきり誰かが**ホテルを間借りして道場を始めたものとばかり思っていましたが**さんのおぼっちゃまの道場とは・・・ああ、申遅れました。私がモンキー流の師範でバトウと言います」

 バトウ先生も立ち上がって挨拶します。

 さすがに街の有力者であるデワの父親の七光りはかなりのもののようです。


 椅子に腰掛けてデワが話し始めます。

「うちのトミー指導員からことのあらましは聞いております。しかし、ウチとしても入門したいという者を断ることはできません。なんといってもウチは新興ですから、幅広く道場生を募集しておりますので、その点ご理解いただきたい」

 デワは七光りで立場有利と見るや、日ごろとは違うビジネスマンらしい話口調になっています。

 バトウ先生はバトウ先生で、最初の勢いはすでになく思案顔です。


「さて、どうしたものだろうか・・・・」

 有力者の息子相手にどう交渉すべきか?カネで解決するならいくらくらいで折れ合うべきか?

 などなど、おそらく頭の中で思考が交錯しているに違いありません。


 そこでニコラが間に入ります。

「まあ、あれだバトウ先生よ。生徒を引き抜かれてアタマにくるのは分かるよ。オレがもし同じように生徒を引き抜かれたらデワ先生・・・・あんたを叩きのめしても取り戻すぜ」

 ギロリとデワを睨みます。デワはあわてて目を伏せる。

「しかしなあ、道場経営も商売には違いないんだし、自由競争だからな。引き抜かれるのは引き抜かれるほうにも落ち度があるんだ。そこら辺も考え合わせた上でだな、デワ先生、あんたいくらか和解金をだしなよ」

 ・・・ニコラの言うとおり、それが一番現実的な解決策でしょう。が、しかし。


「ニコラ先生、デワ先生。それは困ります。私は乞食ではない。カネをせびりにここに来たわけではない」

 意外にもバトウ先生はきっぱりとこう言い放ちました。

 この先生、デワはゴロツキとか言っていましたが実際はかなり背骨のある男なのかもしれません。

「しかしこの調子で生徒を勝手に引き抜いてもらっても困ります。その点、何かスジを通してもらいたい」

 ・・・そのとき、私の頭にアイデアがひらめきました。

 この問題を解決した上で私の悩み事まで一気に解決できる方法が!


「バトウ先生。ちょっとお尋ねしますが先生の道場は今、稽古日はどうなっています?」

「ん?ウチは週三回のペースですが」

「では先生。こうしてはいかがでしょう?私は今ここの指導員として日本から派遣されていますが、間もなく帰らなければならない。その後任として残りの週三回、ウチで指導してもらえませんか?もちろん報酬はデワが支払います。またお互いの道場生が双方の道場で稽古できるシステムにすればいい。道場使用料だけ払えばどちらでも稽古できるようにすれば、やる気のある生徒は毎日稽古できる。これなら引き抜きのような問題も発生しません。どうです?」


 まったく空手が出来ず、また稽古にも出てこないデワに指導させるよりも、バトウ先生に来てもらう方がはるかにまともな指導が出来るでしょう。これなら私も安心して日本に帰れる。


「おお、トミー!そいつはいいアイデアだぜ。それでいこう。な?バトウ先生、デワ先生どうだ?」

 ニコラの問いかけに対し、バトウ先生が口を開きます。

「しかしですね、私の流儀とここの流儀は違いますから指導と言っても上手く行くかどうか?」

「ああ、だから当分の間、バトウ先生のところと合同で稽古しましょうよ。バトウ先生にはウチの流派の技を覚えてもらいたい。なに、空手の基礎は同じはずです。私もバトウ先生の指導法を学べるし一挙両得じゃないですか」


「なるほど。それは面白いかもしれませんね。デワ先生がそれでいいと言うなら、そうしましょう」

 デワに嫌とは言わせない。肘で小突きます。

「あ・・・ああ、はい。オス。じゃあそれで・・・そういうことにしましょ」

「よーし!」

 ニコラが大きくノビをします。


「よーし、これで問題解決だな。デワ先生、オレは今夜トミーと飲みに行くはずだったんだが、このトラブルに巻き込まれてお流れになった。だからあんたが飲ませろよ!おおい!アラック持って来てくれー!!」

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