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勝負の行方

 なんとか立っているものの、私は完全に足にきています。

 一度ダウンを喫してしまうとダメージはそう簡単には回復しないようです。

 取りあえず間合いを大きく取って構えなおします。


「なあ、トミー。お前の根性は分かったけどよ。もう無理じゃねえか?そんなフラフラした状態で続けても意味はないぜ」

 ニコラは私の様子を見てそんなことを言いますが・・・甘いぞニコラ。

 そういう余裕の態度は私に考える時間を与えることになる。

 私は根性で戦うつもりはありません。


「ニコラ。いくら僕を倒してもこうやって立ち上がった限りはお前の勝ちにはならないぞ。勝負を付けたかったら完全にトドメを刺すことだ」

「おいおい・・・マジかよ。いいのか?そこまで言われて手加減するほどオレはやさしくないぜ。今度お前が倒れたら、遠慮なくトドメを刺すぞ」

 正直私は怖いです。

 実力差からいけば草野球の補欠選手がメジャーリーガーに挑んでいるようなもの。

 ニコラが本気でトドメを刺しにくれば、私は絶対に五体満足では済まないでしょう。


 しかしそんな恐怖心とは裏腹なセリフを私は言いました。

「望むところだニコラ。手加減なしでトドメを刺しに来い!」

 よく子供がとんでもないホラを吹いてしまって、取り返しが付かなくなってますます訳の分からないホラを吹く。

 アレと一緒です。私はついに取り返しのつかないセリフを吐いてしまいました。


 ふー・・・とため息をひとつついて。

「ケガはさせないつもりだったんだがな。無理なようだ。お前、死ぬなよ頼むから」

 言うとニコラは足を前後に広げ、両手のひらをかざすように大きく構えます。

 ・・・世界のトップクラスの構えです。なんてスケールの大きい構えだろう。

 私の小ざかしい「作戦」が通用するだろうか・・・?


 ダン・・・と床を蹴ってニコラが飛び込んできます。

 私は、今度は飛びのくのではなく走ります。

 足に来ているので構えたままのフットワークが使えないので、走って逃げるほうがラクだったのです。

 足に力が入らないですが、意外と人間それでも走れるもんだ。。


 余談ですが、もし仮に格闘技の心得がまったく無いのに格闘技のエキスパートにケンカを売られるなどという有り得ない様な事態に陥ったなら・・・一番良い対抗策は走ることです。

 ボクシング、空手、柔道、レスリング・・・ほとんどの格闘技の技というのは走っている相手には無効です。

 走って逃げる相手を追いかけながら技を掛けるのは、一流の選手でも難しいでしょう。

 足の速い人はまずケンカに負けません。ただし相手がラグビー選手の場合を除いて。


 私は道場の壁伝いに走り回りました。

 あまり速くは走れませんが、それでも構えている人のフットワークよりもランニングスタイルで走る方が速いのは当然なので、上手く逃げ切っています。

 しかし、ここからが問題。

 ケンカならこのまま道場を飛び出して逃げてもいいのですが、ここは私の道場で私は道場破りの相手をしているのですから、そうもいかない。

 いつまでも走り続けるわけにもいきませんし、足もふらついています。


 最初いた場所の反対側の壁際まで走ってから、ふたたびニコラのほうを向いて構え直します。

 ニコラがこちらに向かって来ると同時に、もう一度走って逃げます。

 今度はニコラも構えを解いて、走って追いかけてくる。

 傍目には空手の組手ではなく「鬼ごっこ」のように見えたことでしょう。


 最初に立っていた位置までもどるころにはニコラが私の背後まで追いついていました。

 私は急に回れ右するように振り替えると同時に渾身の突きをニコラの水月めがけて打ち込みます。

 ニコラも構えを解いていたためカウンターでモロに入りましたので、腕にジーンとしびれるような手ごたえがありました。


「ぐっ・・・」

 ニコラも、この不意打ちパンチは多少なりとも痛かったようで、足を踏ん張ってこらえます。

 ところが踏ん張りが効かないのはこっちのほう。

 そのままフラフラと後に2~3歩あとずさりしてしまいました。

 そのカカトに冷たいものが当たる感触が・・・・道場の床にころがしてあったスイカ袋です。


「あっ・・」

 と声を上げて私はしりもちをついてひっくり返りました。

 ちょうどスイカ袋を足の下に敷くような形です。

 ニコラを見ると・・・その顔はまたも赤鬼と化しています。

 突きを一発食らったので怒りに満ちているのでしょう。トドメを刺しに来るぞ!


 ニコラはやや腰を落とした構えのまま、左足から飛び込んできます。

 素晴らしいスピードです。

 この踏み込みのスピードと突進力がニコラの強さの秘密なのでしょう。

 決して巨体だけの選手ではない。さすが一流です。が、しかし・・・私の作戦にはまった!


 私は仰向けに寝転がると同時に両膝を縮め足元にあるスイカ袋を思い切り蹴飛ばしました。

 スイカ袋から割れたスイカの破片や、食べ終わったスイカの皮が一斉に飛び出します。

 ニコラの踏み込みが鋭かっただけに、このスイカ地雷は効果的でした。

 袋を蹴飛ばすと同時に上体を起こした私の目の前で、スイカの皮を踏んづけたニコラが、マンガのように見事に宙に浮いていました。


「うわーっ!!」

 しりもちをつくようにひっくり返るニコラですが、さすがだったのはひっくり返りながらも私の顔面めがけて右足で蹴りを飛ばしてきたことです。辛くも顔面をかすめるに止まりましたがヒヤリとしました。

 蹴り足はそのまま私の胸の辺りに落ちる。肋骨にゴーンと響きました。

 非常に痛いですが、このチャンスを逃すわけには行きません。ふたたび立ち上がったらもう絶対勝てない。


 私はニコラの蹴り足を脇に抱え込みます。

 ここで私の空手以外の趣味が役に立った。

 私は若い頃にはかなりのプロレスファンでした。なのでプロレスの技をよく研究していました。

 この当時非常に流行っていた技といえば、サブミッション(関節技)。

 脇に固めた右足を引き絞ると同時に、自分の両足を絡めます。

 完全に入った・・・「アキレス腱固め」です!


「うわ!いててて・・・!!」

 さしものニコラも、プロレス技は初体験だったようで・・・かなり痛いようです。

「くそっ!離しやがれ!!」

 叫びながら、左足で私を蹴りにきます。

 右足を完全に極めているので、強い蹴りは出せませんが、それでも私の肩口にガンガン当たりますので、このままでは私も無事では済みません。


「デワ!ボウイ!居るか!?」

 渾身の力でニコラの右足を引き絞りながら叫びます。

「え・・・あ・・・オス。。」

 デワの声です。


「何をやってる!早くこいつの左足を押さえろ!」

「えっ?」

「いいから早くやれ!」

 バタバタと足音を立ててデワがやってきました。恐る恐るニコラの足を押さえようとしますが、ニコラの左足が暴れているため、なかなか抑えることが出来ません・・・使えねえ奴だなあ・・デワって。。


 すると突然。

 ボウイがやってきて脇に転がっているスイカ袋を掴むなり・・・なんとニコラの顔に叩きつけたのです!

「ぶわっ!何しやがる・・・ぐわっ!!」

 オマケにボウイはそのままニコラの胸の辺りに馬乗りで飛び乗りました。

 そしてスイカ袋でニコラの顔を押さえつけているようです。ボウイ、なかなかやるな!


「うぐぐぐ・・・くそ~・・・お前ら・・・卑怯だぞ!!」

「うるさい!お前は3人がかりでも文句ないって言っただろ!デワ!今だ足を押さえつけろ」

「オス!」とにかくデワは技もクソもありませんが、ニコラの左足にしがみつきました。

 私は私で右足のアキレス腱をさらに痛めつけてやります。


「ぐああああーーー!!い痛ええ・・・離せ!離しやがれ!!」

「離せだと!?参ったのか?負けを認めるのか?」

「だ・・・誰が・・・・」

 さらに力を入れる。

「ぐああああああああああ!!!分かった!参った!!参ったから離してくれ!!」

 初めて私は力を緩めます。


「二言は無いな!負けを認めるんだな?」

「・・・ああ・・・わかったわかった!オレの負けだ!頼むから離してくれ」

「よし、ボウイ、デワ、離してやれ」

 言って私も足を離します。

 そのまま仰向けにひっくり返る。・・・・疲れた・・・・しかし。


 -----勝った!----- 

ご愛読いただき、ありがとうございます。ここまでのお話を面白く読めた、一気読みしてしまったという読者様なら、先はまだ長いですが最終回までお楽しみいただけること請け合いですので、ブックマークを推奨いたします。またよろしければ★★★★★評価などもいただけましたら、筆者たいへん励みになりますのでよろしくお願いします。

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