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ウレオモ!  作者: ポンコツ
2/5

2話目

それは俺たちがまだ可愛げのある小学生だった時のことだ。当時の俺たちはまだ善悪のつかない悪ガキだったと思う。そんな時に「ある事件」が起きて、比奈子とは疎遠になり、今に至るのだが・・・ある事件というのはまたいつの日か話そう。話すと長くなるからな。

それはそうと待ち合わせ時間は過ぎているのだが比奈子が一向にくる気配が無い。時刻は11時半を過ぎている。途中何かあったのだろうか。


探しに行こうかと考え始めた時に声をかけられる。振り向くと比奈子が立っていた。急いで来たのだろう。顔が真っ赤になっていた。


「ごめん!遅くなって!」


なんというか、小学生の時しか見ていないせいか、今の比奈子は非常に可愛かった。顔は大人びているし、身長も伸びている。胸の発育はまだのようだがそれを差し引いてもまさにA田美人というにふさわしい女性だ。


「時間過ぎてるし・・・ちょっと!聞いてる?」

「・・・ん?はっ!」


しまった。思わず見惚れてしまった。久しぶりというのもあるが、想像の斜め上を行ってしまっただけに動揺を隠せない。


「いや。久々に会ったらめっちゃ可愛くなってんなと思ってな」


思ったことをつい口に出してしまうのは俺の悪い癖だ。そのせいで嫌われてしまうこともあるが、今回は自然と言葉が出てきてしまった。


「・・・!!!!!!!!!!!!」


比奈子の顔がゆでダコのように真っ赤になる。漫画だと「ボンッ」という擬音が出るくらいに比奈子の顔は紅潮していた。押さえ切れていないのか、涙まで浮かべている。相当嬉しかったようだ。


「・・・アンタも・・・カッコいい・・・よ?」


涙目のまま比奈子は俺に向かって言う。並の男性だと理性が崩壊する一言だが俺を舐めるな。

顔の火照りが落ち着くまで待ってからカフェへと移動した。移動中は話さなかった。お互いに気まずかったからだろうと思う。


カフェに移動して互いに飲み物を注文する。


「・・・ホットコーヒーで。」

「俺は・・・」

「彼にはホットココアで」


先に注文されてしまった。まあコーヒー飲めないから良いけど。

届いた飲み物を飲み、心を落ち着けてから話始める。


「急に電話して、ごめんな?」


まずは謝罪からだ。急に呼び出してしまったことへの謝罪。正志に言われて家に帰ってから考えてわかった。中学に入ってから一度も連絡を取っていないのだ。そんな人からいきなり会おうなどと言われて驚かない奴は居ない。まして、疎遠になってしまった相手なら尚更だ。


「・・・いい。最初は驚いたけど、なんか話あるんでしょ?」


許してもらえたようで何よりだ。そして俺は比奈子に正志と組み、師走入学の計画を話した。比奈子にもやってもらいたい。そんで3人で師走に入学する。最高じゃないのかと力説するが、比奈子の顔は暗いままだった。


「・・・遅いよ。もう。」

「え・・・・。」


聞くところによると比奈子はその卓越した身体能力を買われ、教師の勧めで中学でカバディを始め才能が開花。全中三連覇を果たし、海外への留学が決まっていたとのこと。正直カバディなるスポーツすら聞いたことがなかったが、俺たちが参加していたドッジボールの大会でも常人離れした身体能力を発揮して優勝していたことを思い出す。あのころからもう才能の片鱗が出ていたんだろうな。


「じゃあ、無理なのか?」

「今のところは。お母さんたちにも早く安心させてあげたいし。そんな博打みたいな計画に乗っても心配させるだけだし。」


確かに比奈子の言うことも一理ある。俺たちのやろうとしていることは確実ではないし、そもそもダメなら別の道があると言う逃げ道を作っている状態だ。参加する奴も大体が保険を用意した状態で挑んでいる奴ばかりだしな。要するに、本気かどうか分からない。なんなら遊びでいけるだろと妄想を抱いていると言われても仕方がない集団なのだ。これではダメだ。ただでさえ参加する奴らは師走の入学に命を、将来を、未来をかけて争おうとする連中なのだ。俺たちが生半可な気持ちで勝てるはずがない。


比奈子の言葉を聞いて俺は事実を思い知った。そしてそんな俺より遥かに前を向いて歩いている比奈子を羨ましく思った。どうすればここまで輝けるのだろうかと。


そして同時に、比奈子を説得するには俺の全てをかけて説得する覚悟が必要なのだと。

俺は心が熱くなるのを感じた。それは俺の思考が単純だったからかもしれない。命をかけた計画を成功して世界一の高校に入学する。そして並いる天才を率いてバカ騒ぎをする。俺の夢ができた瞬間でもあった。


俺は比奈子に最終確認をする。


「比奈子自身はどうなんだ?やりたい?」


比奈子自身。周りを気にせず、家族を気にせず。あるがままの比奈子自身の気持ちを聞きたい。俺はそう思った。


「そんなの・・・・」

「そんなの?」

「そんなの・・・やりたいに決まってるじゃん!!!また3人で遊んで、高校も同じって最高じゃん!!!もっと早く言ってよぉ!!!!」


そういうと比奈子は泣き出してしまった。今までため込んだものが一気に溢れてしまったのだろう。涙で顔はぐちゃぐちゃだったが、憑物が取れたような顔だった。


「よし。わかった。俺に考えがある。」

「どうするの?」


俺たちの計画に乗るということは文字通り海外留学を蹴って俺たちと行くということになる。両親の心配も大変なものだろう。それでも比奈子は俺たちと行きたいと言ってくれた。なら、俺の全てをかけて両親を説得するまでだ。


「比奈子の家に行く。そして両親を説得する。」

「えっ!!!!」

「なに、比奈子が本当の気持ちを言ってくれたんだ。俺も、全てをかけて比奈子の両親を説得するよ。」

「それって・・・まさか・・・ナオ・・・・嬉しい」


比奈子が自分で納得している。どうしたんだろうか?詳しく聞いてみたいところだが、説得の内容以外に気を回すことは現状出来なかった。

あれこれ考えているうちに比奈子の家に着いてしまった。前もって比奈子が連絡してくれたらしく、玄関のチャイムを鳴らすとすぐに出てくれた。


「あらー。ナオ君!ずいぶん久しぶりじゃない。背もこんなに大きくなって!」


出迎えてくれたのは俺もよく知る、比奈子の母だった。比奈子とは中学に上がってから会うことは無くなったが、比奈子の母とは実際よく会う。スーパーだったりコンビニだったり、狭い地域ではままあることだ。


「こんな時間にお伺いしてすみません。」


比奈子と計画の打ち合わせと説得の内容を考えて家に向かった時点で夜は遅くなっていた。日を改めようかと考えたのだが、比奈子曰く、今日の方が良い。とのこと。何か確信があるらしいが、より確率が上がるのであればということで、その日のうちに会うことになったのである。


「大丈夫よー。ちゃんと準備してあるから。」

「準備・・・ですか?」


説得するための場所の準備の事だろうか。であれば好都合。比奈子も両親をうまく誘導してくれたようだ。ありがたい。


「ご飯、食べていくわよね。もう遅いし、ナオ君の両親には適当に話つけてあるから今日は泊まって行きなさい。」

「わかりました。」


ここまでお膳立てされているとは。比奈子はどんな魔法を使ったのだろうか。尊敬の念を込めて比奈子の方を見ると何故か比奈子は顔から火が出るほどに真っ赤になっていた。


夕食をすませ、お風呂を頂いてから比奈子の母と話を始める。師走に入る計画とか話しても実際ちんぷんかんぷんだと思われたので、単刀直入に俺の想いを聞いてもらってから計画について話す予定である。俺は、心を落ち着かせ、比奈子の母の顔を見つめて話した。


「お母さん。実h」

「待って。言わなくても分かるわ。」


そこにはいつもの比奈子の母ではない、子を守る親としての母がいた。たったの二言なのに、俺は全身が震えた。


「ナオ君の目を見れば分かるわ。ようやく、覚悟を決めてくれたのね。」

「はい。比奈子のことは、俺が死んでも守りますから。」


子を想うからこそこんな覇気を出すことが出来るのだろうな。そこには生半可な気持ちは許されない。第一、そんな気持ちを残していても一瞬で見破られる気がした。

俺も比奈子との会話で得た真剣な気持ちを素直にぶつけた。嘘偽りのない、本心から出た言葉である。


死んでも守る。「あの事件」から時は経ってしまったが、今度こそ、比奈子を俺が守ってやる。絶対に。それだけは本当のことだ。


しばらく比奈子の母は俺の顔を見つめていたが、覚悟を悟ってくれたみたいで、いつもの温和な顔に戻った。どうやら試験は合格したらしい。


「比奈子のことを、これからもよろしくお願いします。」


比奈子の母が頭を下げた。俺も頭を下げ、説得がうまくいったことを喜ぶ。比奈子の母には見えないが、頭を下げないと緊張が溶けて半笑いになった顔を見せてしまうからだ。

そのあとは、比奈子の母に師走に入る計画を伝えた。驚愕されてしまったが、俺と正志、全員が全てをかけて挑むつもりだということを伝え、納得して頂いた。そのあとは軽やかに、近況や過去の話などで盛り上がり、就寝することとなったのだが・・・。


俺は今客間にいる。いつものことではあるが、布団が一式敷かれてある部屋だ。比奈子の家に泊まる時はいつもこの部屋で泊まっていった。いつもと変わりないへやではあるが、今回に限っては、様子がおかしかった。まずティッシュ。鼻をかむようで置いているのだろうか?そしてティッシュの隣には0.01と書かれた箱がある。箱の中は小分けにされた袋が結構入っていた。そして、何よりの異常事態だが、比奈子が一緒の部屋で寝るということだ。てっきり遊びに来たのかと思ったのだが寝る時間になっても帰ろうとしない。そして俺がそろそろ寝るよと言うと、じゃあ私もここで寝ると言い出したのだ。おいおい。俺だって一応健全な中学生だぜ?流石にまずいんじゃないのかと言ったのだが、聞く耳を持たない。説得を諦めた俺は、せめて寒くならないように比奈子の方に毛布の面積を多く分け、自分は最低限の布団で比奈子とは逆の方向を向いて横になった。しばらく会話がなかったが、不意に比奈子が話しかけてきた。


「・・・説得、うまくいったの?」

「まあな。さすが比奈子の母さんだよな。俺が言おうとしてること、全部見抜かれちゃった。」

「・・・で?なんかお母さん言ってた?」

「ん?ああ、比奈子のこと、これからもよろしくお願いしますってさ。」


心なしか、比奈子の体温が上昇した気がした。


「・・・ナオはどう答えたの?」

「・・・死んでも守るって言った。そうでもしないと、比奈子の母さん納得しないだろ?」


逆の方を向いても背中が暖かい。布団の中の気温がまた上昇したようだ。ちょっと暑いと思って足だけでも外に出そうと動かすといきなり比奈子に腕を掴まれて反対側を向かされてしまう。そこにはとびきりの可愛い笑顔をした比奈子が居た。


「・・・ありがと」


そのままキスをされる。唇をくっつけただけだが、キスをすると比奈子は俺の逆の方向を向いてしまった。

俺はしばらくの間放心していた。そして時間が経ってから真っ赤になる。

おれ、いま、なにをされた・・・・?


眠れるはずがない。結局朝になるまで俺は一睡も出来ずに布団の中で比奈子の背中を見つめていた。


そのあとの事は覚えていない。気がつくと比奈子と一緒に散歩をしていた。いつもと変わらない比奈子と話して、家に帰ってようやく寝た。状況を飲み込むのに時間が掛かったが、比奈子の加入は成功し、あとは作戦の確度を上げるのみとなったのである。


比奈子の家


ナオ君と比奈子が朝食を終え、見送りがてら散歩してくると言う。私は朝食の片付けをしつつ、2人の顔や態度、身振りを観察する。要は、昨日どこまで進展したのかという確認である。ナオ君のあの目は真剣だという事は私が保証する。あとは比奈子の努力次第だったが、どうやら私が求めるだけの成果は出すことが出来なかったようだ。比奈子が奥手だったのか?はたまたナオ君に問題があったのか、疑問は尽きる事はないが本人聞く事はできない。片付けをしていると2人は揃って出かけていった。


「2人はうまく行きそうかい?」


声をかけてきたのは私の夫である。私としては早いとこ既成事実を作ってしまった方が後々幸せになると思って活動してきたが、夫の方はというと、時間をかけてもゆっくり進めていくべきという判断だった。あからさまな工作はかえって敬遠されると。


「今のところ5割くらいかしら。昨日もあんまり進展してないみたいだし。」

「はは。まだ2人とも中学生だよ?慌てなくても大丈夫だって。」


そう。まだ中学生なのだ。だが同時に私は一抹の不安を覚える。もし高校に、しかも師走学園という天才の集まる高校に入学したら。見目麗しい女性たちがナオ君を誘惑して来たらどうしようか。頭も、才能も、容姿も完璧な女性がもしナオ君の前に現れたら。そう想うと不安で仕方がないのだ。自分の恋愛テクニックは全て娘に教えてきたが、それでもどうしようも無いことが起きないとはいえない。

だから、お節介かもしれないけど、無いよりはマシだと思うから私は行動するわ。少しでも、娘の幸せを願わずにはいられないから。


「はあ。いっそのことナオ君監禁して一緒に暮らそうかしら。」



どーも作者です。

比奈子参加編です。いろいろ勘違いが起きてますが当分この辺りには触れませんので、暇があったら外伝という形で、あの事件も紐解いていきます。

誤字、脱字あると思います。見つけたらどんどん報告してくださいな。コメントもお待ちしております!では、アディオス!

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