電話の奥の真実
「お、龍、久しぶり。どうした? こんな突然電話なんかかけてきて。何かあった?」
「いや、ちょっとな。お前の声聞きたくなってな」
「何か、キモいな。お前そんなキャラだったっけ?」
「高校時代の親友が10年振りに電話してきたってのに、キモいは無いやろ」
「……あぁ。……でも、本当に何も無いんか?」
「え? 本当に無い。何で?」
「……え、いや。久々だからかもしれんけど」
「しれんけど?」
「お前何か変やぞ」
「変やないって、本当にどうもない。勘ぐりすぎやって」
「お前、まさか……。死のうとしてるやなかろうな」
「おい俊、何を馬鹿なこと。そんなんやないって」
「なあ、頼むからそんなことは止めてな。もし何かあるんやったら、今からでもそっち飛んで行くから。な? 死んだらどうにもならんて。頼む、約束してくれ、な? 龍」
「大丈夫、大丈夫やって。じゃ、またな」
俺は息苦しくなって、思わずベッドから飛び起きた。
額をこすると、汗でぐっしょり濡れていた。
またあの夢だ、ここんとこ毎日見ている。
あの日、あの電話の後、龍は自殺した。
何で俺は止められなかったのだろう、あの時龍の異変に気づいてやれば、すぐにあいつの所に飛んで行っていれば、こんな事にはならなかったかもしれない。
夢の中で助けようと何度も何度も叫んでも、結果は同じ。あいつは電話を切った。そしてその後自殺した。今日も夢の中でさえ、俺はあいつを助けられなかった。
ここ数日まともに寝ていない、仕事のミスも増えてきている。医者からもらった安定剤もほとんど効果がない。このままではどうかなってしまうのも時間の問題だ。
でも仕方ないのかもしれない、助けられなかったのは自分のせいなのだから。
きっと今夜も夢を見る、今度こそは助けられると信じて。