第二章 第四部〜思索〜
今回は題名の通り謎が立ち所に湧いてくる回です。
「テレポーテーション。」
影が呟き、力を行使する。途端に仮想世界が眼界から消え、仮想世界に転移する前の家へと戻ってきた。相変わらずガラスは闇色の液体を垂れ流しながら砕け散っている。
「リペア···。」
彼は疲れた様な声で詠唱し、力を発動させる。すると、瞬く間に砕け散ったガラスが宙に浮き、飛び、元の位置へと戻り、再度ガラスの形を形成する。いつのまにか闇色の汚れも消えている。
(今日は疲れた···。なんだったんだあれは···忌むべき力を持った人間など聞いたことない。それに、パーツの色は違えど全く配置が同じとは如何なものか。そんなことあり得るはずがない。)
様々な思考を巡らせた彼だったが、やがて諦めたのか、ベッドへと赴き、微睡みの中に沈んだ。
日は変わり、朝。彼はある本を読んでいた。それは、様々な本の切り抜きをまとめた本だ。その内容は、昔からその地域に伝わる超常的な力の伝説。それは昔の話も含まれているため···『鬼子が"烈火"と唱えたりて、刹那、その手に猛りし炎宿りたり。土牢、業火に打ち払われたりて。』少し不思議な言い回しだが、昔、鬼子と呼ばれていた彼の先祖が力を使った時の話のようだ。最近のものになれば、新聞記事、インターネットのサイトで話題になった時のスレッドの印刷などもある。彼は、本を閉じ、その本を机に置いた。
「やはり、この力は遺伝、なのだろうか···」
親の事は一切合切が不明だ。実の子だが、人相も知らなければ名前も知らない。親戚すら分からないから、何もかもがわからない。だからこそこの力の正体は全くわからない。そもそもがすべてが謎に包まれた力であったのかもしれないが。
彼は次に、影の事を考えた。影は確かに自分のクローンとも呼べる存在で、忌むべき力さえも扱った。本来、忌むべき力は自分しか使えない、唯一無二の存在であるはずだ。やはりその辺は、影が自分のクローンであるが所以なのだろうか。では···影とはなんなのか。怪異"ドッペルゲンガー"か?···にしてはよく見聞きするドッペルゲンガーに比べれば結構違うものに思えるが。ならば、やはり人工物だろうか。だが、暫定的に、現代科学に複製技術は存在しない。では···科学の産物じゃないのなら?
忌むべき力を持つ影は、忌むべき力によって生まれた存在であるのかもしれない。科学とオカルトの集合体などでなく、オカルト一色によって作り上げられた物なのだろうか。
やがて、彼は諦めたのかのように椅子から立ち上がった。
「BOOSTER ENERGIEでも買いに行くか···」
余談だが、BOOSTER ENERGIEは彼の好物である飲み物だ。だが、エナジードリンクであるあたりやはり特異である。
そして、コンビニに行き、ブースターエナジーとコンビニおにぎりを買った後、"それ"は起きた。
「五十嵐だな···?」
「···何故俺の名を知っている。」
「話している時間などない。殺す。」
そういうと謎の男は袖から何かを手へ滑らせるように運んだ。ミレニアムナイフだ。最近発売されたいわゆる万能ナイフだ。
(···!?)
刹那、男は彼に向かって飛びかかり手に持ったミレニアムナイフから、内蔵された刃を出して彼に斬りかかった。
刃は、咄嗟に出された左手を切り裂き、紅の鮮血に塗れた。
男は、悠々自適に嘲笑した。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
少し遅くなってしまったでしょうか。少しネタに詰まってしまいました···。
バレンタイン編外伝でも挟まうかと思いましたが結局作れませんでした。がっでむ。