第二章 第一部〜彼女〜
彼女、"轟 彩香"は誰かに襲われ、クラスメイトの家に逃げ込んだ···。
灼熱の炎が照りつける黒色の道。陽炎も舞い、いよいよ夏も本格化してきている。そんな猛暑の中、彼女、"轟 彩香"は歩いていた。そして、少し薄暗い路地に入り込んだ。すると···
後ろからいきなり羽交い締めにされ、丸めたハンカチを口に入れられた。
「動くな!喋るな!おら!こっち来い!」
助けを求めたいが、上手く声も出せない。だが、なんとかしなやかな身のこなしですり抜けることが出来た。ひたすら走り抜ける。後からは"絶望"が追いかけてくる。そして、パッと見えた先、一見どこにあるか分かりにくい、クラスメイトの家へと退避する事にした。
「お願い!助けて!早く開けて!」
中から小さく足音が聞こえ、鍵が開けられた音が鳴った。
「···なんだ。朝から騒々しい。用がなければ帰れ。悪戯なら嬲り殺す。」
「変な人に追われてるの!もういい!上がるよ!」
「なんなんだ。全く···」
そうは言ったが、遠くからのドタドタという足音と喧騒に怯んだのかどうなのか、止めはしなかった。だが、入る所を見られていたらしい。
「あっちだ!」
騒々しい足音がこちらへ走ってくる。だが、相手が悪い。走ってくる群衆の前に立ちはだかった。彼、"五十嵐涼"だ。
「ふん。多勢に無勢だな。」
「ならばこちらは一騎当千だ。」
「何をほざく?」
「無駄話をする必要性は感じられない。」
「そんなことを言っているあいだに···包囲したぞ?」
「好都合。術式・サンダー。」
辺り一面に耳を劈く雷鳴が鳴り響き、地面から上がった閃光の柱はまた1人、また1人と、伝染病のようにバッタバッタと人を倒し、拡散していった。
「ぐぬう···我は···組織の···為···に···」
雑魚の中では格上らしき人物は、苦悶の表情を見せ、力尽きた。背後から、ドアの開く音が聞こえた。
「なに···それ···?」
「力だ。何故与えられたのかは分からない。何に使うかも分からないのなら、必要になれば利用する。」
少し彼女は、人間離れしたその力に恐怖したようだったが、助けてくれた礼を言い、立ち去っていった。
「Tプランは陥落したか···」
「前回と合わせ、DプランとTプランが陥落したわけだ。」
「無能ばかりのこの組織、私と幹部だけの方が強いかも知らん。」
「次こそ、A段階。"能"を持つ者の獲得を。」
「はっ!」
幹部達は、液晶画面の中から冷徹な声で命ずる"誰か"に礼をした。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
少し遅れてしまい、すみませんでした。なんとか話を考えついたので、早速執筆しました!
はてして、意味深展開が入りましたが。能とは?プランとは?組織とは?謎だらけですが、最後に繋がっていきます···。