第四章第一部〜対峙〜
さぁ、実の兄、五十嵐煉斗との戦いが始まる···
画面の奥をも侵略し、全てを終えた電脳世界は、静かだった。キラーボットの駆動音も、画面の奥からの悪しき管理者の声も聞こえない。
「電脳世界を閉鎖します。」
大仙寺の声で、電脳世界の閉鎖が告げられた。するの、たちまち科学の空間は消え、また元の廃倉庫に戻った。
遠くから、駆動音と共にチン、とベルの音が鳴った。少し前に煉斗が地下へと降りたエレベーターの様だ。エレベーターに警戒しながらも歩み寄ると、近くに取り付けられていたモニターから
「さあ、エレベーターに乗れ。僕と少し話そうじゃないか。」
という声が鳴り、画面にはブロンズの髪に紅い眼を携えた兄、否。黒幕が映し出されている。己から立ち上る様に放たれる敵意を抑えながら、エレベーターに乗った。
エレベーターに乗ると、いくつかのボタンがあったが、自動的に"B3"のボタンが光り、行き先が決まった様だ。
B3Fに着いたようだ。チン、とベルが鳴り、ドアが開くと、視界に広がったのは地下とは思えず、かつ豪勢すぎない。暗い色の木で作られた廊下だった。廊下を少しずつ歩き、ドアの前に立つと、ドアは勝手に大きな音を立てて開いた。開けた先の部屋の机には、兄が居た。
「さて、改めて。久し振り、我が唯一の肉親、"五十嵐 涼"よ。」
声の調子が変わる。
「そして·····」
「"忌むべき力"を持つ双星の一対よ。唯一の、」
「「敵よ!」」
この息の合い様は兄弟だからなどでなく、敵同士としての絆だろう。いや、悪縁か?
「今一度聞こう。なぜ俺を襲う?」
涼が声を発す。
「俺はこの力を持ってのし上がった。同じ力を持つ者。故に、互角。その存在は必ずしも障害になるであろうから。現に、今。障害として僕の前に立っているだろう?」
「下らない。」
「なんとでも言え。これが俺の幸せだ。」
「だが···戦いぶりを見てもなんだか妙だ。"あれ"はどうしたんだい?秘術は?まさか使えないとでも言わんだろう?コピーが使えるのだから。」
「君の考えは星に結ばれているよ。」
「そうかそうか。なら結構。·········サンダー!」
いきなりの不意打ちに涼は動じず、
「プロテクト!いきなり何をする気だ!」
「気を研いであげようかと?」
「···バーンド!」
「秘術:スペルブレイク!」
爆発が煉斗を包むかと思えば、突如として力は握り潰されたかのように掻き消された。
「···!?」
「秘術のお披露目だ。僕の秘術は『スペルブレイク』。相手の詠唱した力の発動を中止させる。」
絶望的すぎる秘術だ。よりにもよって、こいつは当たりを引きやがった。攻撃も出来ず、一見地味なその秘術は、よく見れば一切合切の攻撃を受けない最高位の防衛術だ。破られようがない。先に破ってしまうのだから。
「さぁて。そろそろ開戦かい?君のことだ。まずは解放属の詠唱だろう。」
あぁ。と言いたさげに凉は視線を煉斗に送り、力を発そうと息を吸った。
最後まで読んでくださってありがとうございます!




