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なろうとなるまいと小説家になる気がない私

計画性 :★

冗長度 :★★★★★

チラ裏度:★★★★

【短編小説:何故かゲーセンにて】




(えっ、あれって……茂松さん!?)


「…あの、茂松さん、ですか?」

「あれっ?もしかして…」

「覚えてます?菜々です」

「あー!菜々さん!一瞬わかんなかったですよ、かなり痩せたんじゃないですか?」

「会社にいた頃よりだいぶ痩せましたよ。お久しぶりですね」

「ほんと久しぶりですね。仕事、今は何してるんですか?」

「会社の隣町でコンビニバイトしてます。今日は週一の休みです」

「休み週一だけなんですか、大変ですね。…そういえば、野田君は?」

「あー、実は、結婚したけど去年離婚しました」

「うえっ!?…マジすか」

「マジっす」

「バツイチすか」

「バツイチっす。茂松さんは、相変わらずお一人様で?」

「まあ、見ての通りで」

「世知辛いですなあ。茂松さんといい、豊島さんもまだお一人様だし」

「豊島さんと連絡取り合ってるんですか?」

「割としょっちゅう顔合わせたりしますよ。パチ屋で」

「あー。菜々さん、パチンコだけじゃなくてスロットの方もやるんでしたっけ」

「今は完全にスロ専です。5スロですけどね。スロット興味あるって言ってませんでしたっけ茂松さん」

「あるんですけどねえ。こうしてたまにゲーセンのスロットで遊ぶくらいです」

「なるほど。パチ屋の方も挑戦してみましょうって、豊島さんに教えてもらいながら」

「まあ、気が向いたら」

「絶対行かないパターンですよね、茂松さんの『気が向いたら』は」

「うははっ!」

「てか聞いてくださいよ!最近の豊島さんめちゃくちゃスロット調子よくて腹立つんすよ!」

「ほんとすか?」

「あたしなかなか勝てないのにLINEで自慢写メとかめっちゃ送ってくるし。とんだ嫌がらせですよ。でも今度飲み奢るって約束してくれたんでチャラですけどね」

「いいっすねー」

「そうだ。豊島さんにお願いしてたんですけど、その飲みに――」



 ――そこで目が覚めた。


 まさか夢の中に茂松さんが現れるなんて。しかもめちゃくちゃ会話してたし。いつもの金曜より忙しかった仕事疲れのせいだろうか。せめてもの癒やしにツナメさんが来るのを待ってたのにやっぱり来なかった一抹の寂しさのせいか。


 ツナメさんのそっくりさんである、茂松さんを代わりに登場させることで疲れを癒やそうとしてくれた私の夢は、なんて粋なことをしてくれて、なんて残酷なことをしてくれるのだろう。


 これは是非とも、ツナメパンのネタにしよう。寝起きの頭でそう思い立って、こうして投稿に取りかかった次第である。夢の内容を詳細に覚えているわけではないが、多少の脚色くらい許されるだろう。どうせ最初から嘘くさい夢の話だ。


 会話の調子があの頃のままであることと、うははっと笑った時の茂松さんの笑顔もあの頃のままだったこと。私の記憶が呼んでくれた茂松さんは、ツナメさんみたいなそっくりさんでもなんでもなく、紛れもない本物の茂松さんだったから。


 そして私が彼に伝えようとした台詞を絶妙なタイミングで遮ってくれたことにも、自分の夢相手に密かに感謝している。


 私に飲みを奢る約束をしてくれた豊島さんに、茂松さんも誘って欲しいとお願いしていたこと。


 現実だろうと夢だろうと、茂松さん本人を前にしてそのことを伝え、彼の反応を見る勇気は今の私にはない。




*   *   *




あえて言おう。なんだこれ。


めっっっちゃくちゃ違和感を感じてしまって仕方ないのは、読者以上に誰よりも私の方だ。ともかく小説をメインに読んでくださり、たまたまこれを目にして混乱してしまっている読者のために解説しておこう。


唐突に書き上げた今回の短編小説は、小説「涙の魔法」シリーズ登場キャラとは無関係である。キャラのモデルになった実在の人物に、登場キャラの名前を引用しただけ。つまり今回登場させた菜々は筆者を指し、豊島茂松は筆者の前職の会社の先輩を指す。


なっちゃんではなく菜々さんと呼び、そしてその彼女に対して敬語遣いの茂松。個人的に違和感が半端なさ過ぎて鳥肌が立つほどである。小説の茂松がいかに実在のモデルからかけ離れたキャラであるか、今回の短編小説でおわかりいただけたかと。


近々、私を飲みに誘ってくれる約束をした豊島さんは、ちゃんと茂松さんに声を掛けてくれるだろうか。@がんばらない、が名前の語尾に付くような現実の方の豊島さんに、あまり期待は出来ない。今日だって、日がな一日スロットに興じていることだろう。とんでもないマイナス収支を叩き出して、奢る約束すら引き延ばされたりしないように、今日の彼の結果に期待していることしか私には出来ない。


豊島さんだって、小説と違って常に菜々を心配するような人じゃない。







予定外に食らった私の夢の話はさておき、ようやく感覚が慣れてきたこの小説家になろう様を利用させていただいてる間に、ふと気になったことをまとめようと思っていたのが今回の本題。


小説家になろう、という大仰な名を冠したサイトの存在はかなり前から知っていた。ひっそりとしたためた自己満足小説を身内に晒すだけでは物足りなくなってしまった私は、自分の小説をもっと色んな人に読ませたい、どんな反応を返されるのか知りたいと、利用者の多いこちらで活動していくことを予てから考えていた。


ユーザ登録を決めかねていた理由はいくつかある。まず私は小説家になろうと思っていない。なれるわけがないからだ。よもや自分の文章力や作品が高く評価されて、あわよくば小説家デビューできるかもなんて、少しも期待していない。


「小説家になろう」というサイトで活動するということ。あまり詳しくない誰かにその話をすれば、紛れもなくこう受けとることだろう。小説家目指してんの?と。あらぬ誤解を与えることを良しとしない私は、必然的にそれを否定する言葉を会話のやりとりに挟まなければならないことを億劫がっているだけだ。


なりたいわけじゃないんだけど趣味で書いてるから読んで感想聞かせてね、程度に軽く受け取ってもらえるような名前のサイトはないだろうか。「小説家になろうと思った時期はあったけど今はそうでもない人が書いた小説サイト」なんてサイトがあれば、気軽に利用できたと思う。そんな長ったらしくて面白味のないタイトルはなろう作家様の誰もが小説のタイトルにさえ付けたがらない。


ともあれ、さすがは名だたる作品を輩出してきたサイトであることを日々実感している。投稿するたびにアクセス数がリアルタイムで把握できるし、Twitterとの連動なんかも確実に効果を体感できる。運営に媚びてるわけでもなんでもなく、なろうに小説を投稿して本当によかったと思っている。


そしてもう一つ、サイト利用を敬遠していた理由。それは私に小説を読むという習慣がないことだ。


作品を読んでもらいたい、反応してもらいたい、そんな身勝手な願望を叶えたいのであれば、逆も然り。他の作家様の作品を読み、反応を返し、私という無名の一ユーザの存在を知ってもらう努力をしない限り、自分が満足のいくような反応が返ってくることなどない。たまたま誰かの目について口コミで拡散してもらえるような、誰もが認める名作を書けているわけないのだから。


そう思って、私はこのサイトを利用させていただいている上で、私なりに意欲的に他作家様の作品を読むことを心がけている。決して嫌々ではないし、気になったものしか読みに行かないし、コメントを残すこともあるがその時はよっぽど感銘を受けた作品に対してだけである。文面は偉そうに見えるが、正直あまり面白くないな、と感じた人の作品に対してまで無理矢理感想文をひねり出す労力を発揮するほど、宣伝に力を入れたいわけでもないので。


長くなってしまったが、本題と言っておきながらここまでが前置きである。とんだ詐欺文を書いたものである。以下、本当に最近感じたことを記してみようかと。







個人的に興味を引いたテーマ。斬新な発想。尊敬せざるを得ない表現力文章力。これらに深く感銘を受けた作品やその作家様に行き着いた時、私は積極的に活動報告にコメントを残したりブックマークしたりお気に入り登録をさせていただいている。


ところが時折、肩すかしを食らうことがある。続きを待ちかねていた連載小説の更新が何の報告もなくぴたりと止まることはざらにある。それどころか作品ごと削除されていたり、まさかのユーザアカウントごと綺麗に削除されていたこともあった。プロフィール欄に「一生懸命頑張ります!」と載せておいて、その才能の片鱗を窺わせる作品を投稿したにも関わらず、ユーザ登録して二日目も迎えないまま退会してしまう方というのは、どういう心境をしておられるのだろうか。


大変無礼な発言であることを承知の上で申し上げるが、逆によくぞこんなテーマで、この文章力で、こんなに長く続けていられるなと悪い意味で感じることのあるユーザも、正直いないわけではない。ここまで図々しい言葉を選べるのは、私個人の実力もその程度しかないと自覚しているからこそである。


創作を長く続けられるか、続けられないか。その差はやはり、返ってくる反応の質と量に起因しているのではないかと個人的に思う。読む専でアカウントを取得した場合を除き、何かしらの作品を投稿しているユーザはすべて、自分が生み出したものを誰かに読ませたいという気持ちがあるのだ。微塵もそんな気持ちを抱いていないユーザなど、いるはずがない。


投稿したての頃は、無名の自分が得られた予想以上のアクセス数に喜び、コメントや評価をもらえるたびに喜び、創作が楽しくなるものである。その感じ方も人それぞれで、初動の反応に物足りなさを感じてしまう方も中にはいることだろう。いずれにしてもその後に共通しているのは、作品やその方の文章力に見切りをつけた、あるいは飽きた、という読者が必ず生まれてくることである。


初動ほどアクセスを得られなくなってきた。コメントが付かなくなってきた。どれほど頑張って宣伝しても評価をもらえない。むしろ期待していた評価ではなかった、あるいは心ない評価をもらってしまったことで自信をなくした。創作を諦めてしまった、自信をなくしてしまったなろうユーザの方々は、おおかたこういった経験をしてきたのではないだろうか。


「お、これは期待できそう」と素直に感じた新人ユーザ様の活動報告に、私は積極的にコメントを残すことを心がけている。コメント0の数字が並ぶ活動報告一覧を眺める虚しさは、誰よりも自分が知っているからだ。用意スタートで意気揚々と始めた第一歩が、コメント0で鼻柱を折られてしまって創作をやめてしまうことは他人事とはいえ悲しいことだ。ましてや自分より才能があると感じた方に、簡単に可能性を諦めて欲しくはない。


私がしていることは、先輩ユーザからコメントのお恵みですよ、ついでに私の作品も勉強がてら読んでご覧なさいな、という行為に受け取られる方もいるかもしれない。それだけは決してない。気が向いたら自分の作品も読んでくれないかな、という下心があることは認めるが、それだけが目的の売名行為ではないと強く言いたい。


どんな言葉を並べようが、誰だって反応が欲しい。私だってそのうちの一人だ。名前も恩も売るつもりなど最初からない。本気で小説家を目指す人であれ、私のようにただ趣味で小説を書くのを楽しんでいる人であれ、無形である妄想から生み出した素晴らしい世界を些細なきっかけで捨ててしまうことが、あまりにももったいなさすぎると思っているだけなのだ。







長くなってしまったが、と二番煎じの書き出しで締めくくろうと思ったら、5000字に到達するところだ。冗談抜きでなげーよ。


小説にせよエッセイにせよ、計画性は大事である。寝起きで書き上げた冒頭の短編小説に取りかかったのは普通に午前中だったが、気が付くと夕方だ。ここまで書き上げる間に、昼食を挟んだり気まぐれに小説の添削に取りかかったり煮詰まって外伝の続きを書いたりなど、実に有意義な引きこもりライフを満喫した休日となった。


ついでに言うと、Twitterでの小説紹介なんかもしていた。まさかの感想まで残してくださった森野 熊三様に心から感謝とお詫びを申し上げたい。せっかく読んでいただいている間に呑気にこんなお気楽エッセイを書き進めていたことは、本当に申し訳ないと思っている。


宣伝する気はない売名じゃないとあれだけ言っておきながら、自分でさえ呆れてしまうほどの図々しさである。小説家になる気はないとはいえ、読んでもらいたいし反応してもらいたいという衝動に負けることはある。


ツナメパンの前書きは、毎回適当に決めている。今回のタイトルも前書きの項目も、本文の文章量とは逆にあっさり決まったのだが、何故だか★の数を決めるのにかなり悩まされた。


チラ裏度。そんなの★5だろどう考えても。チラシの裏にでも書いて満足しとけ、元ネタのままではないか今回の内容は。


そう自虐的に考えながら本文を書き進めているうちに、かなりの時間を掛けて思い返して、結局★を一つ減らした。そこまでこだわる必要もないし、適当に考えた前書きの項目を真面目に参考にしている読者などいないことはわかりきっている。


減らした★は、今回の内容で晒したほんの一部の思いをチラ裏で済ませたくなかった、私の主張を込めたつもりだ。

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