表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

変化と自堕落と事故記録

ためになる話度:★★

自由度:★★★★

さらに事故りかねない度:

★★★★★

13㎏。半年ちょっとでこれだけ痩せました、なんてWeb広告はざらにある。どんなダイエット法の宣伝か、どんなダイエット器具やサプリメントを売りつけるための煽りか、それに対して興味を引くべき体型を誇る私だが微塵も興味をそそられない。


人一倍物事が長続きしない私は、一度もダイエットに挑戦したことがないわけではない。痩せなければとなんとなく始めて、なんとなく飽きてやめてしまい、まともに痩せた試しはない。


そんな私が半年ちょっとで13㎏痩せた話をします。そんな書き出しをすれば読者の食いつきがいいだろうなんて狙いなどない。ただの事実だ。


特別なことをした訳じゃない。そんな一文まで添えてしまえば、さらに興味を引いていただけることだろう。何が私の体重を落とすきっかけとなったのか、気になってしまった奇特な方のために特別にお答えするとしよう。


食べない。煙草を増やす。離婚する。それだけだ。


健康的に痩せるための参考にしようと思っていた方は、この先に記載する文章に期待する価値は当然ないものと思っていただいていい。私の真似はしない方がいい。安易に真似できないものもあるので。







最近よく思うことなのだが、歳を重ねるごとに食事が億劫になってきている。腹は減るが、食べることがめんどくさい。咀嚼がだるい。空腹になる機能さえ兼ね備えていなければ、どれほど自分の好物や高級料理を与えられたところで、私は物書きか煙草かスロットか好きなことに興じていたい。


煙草は楽でいい。絶えず呼吸する動作に違う味の空気と若干不愉快な煙が加わるだけだ。時に気分転換になってやる気を引き起こし、時に気怠さに相乗して心身ともに安らぐ。不安定な精神を保つのに、私にとってもはや欠かせないアイテムである。


そして誰もが感じているであろう、減量の要因のほとんどを占めているのは離婚ストレスなのではないかという推論。これだけは大きな間違いであると私は主張したい。確かに体重が減り始めたのはちょうど離婚を経験した頃からではあるが、そもそも結婚生活自体が太りやすい生活サイクルだったのだ。それが終わったから太らなくなった。だから痩せた。そういう意味で私は、離婚したのが痩せ始めたきっかけ、としている。


実に堕落した生物である。自覚はあるものの、結果痩せたし人並みの体型に近づけているのだからいいではないかと、楽観的に考えながらなんとなく生きている。


余談だが、元夫は肥満寄りだった。自分はストレスで太るタイプだと豪語していた。離婚する際に彼は私への不平不満を散々述べた後、私にとって物凄くどうでもいい宣言をしてみせた。


「お前と別れたら俺は絶対痩せるし、だらしないお前は絶対痩せない」


語尾に「キリッ」と効果音でも付けさせてやりたい捨て台詞じみた言葉は、事前に彼の中で用意してあった思いなのだろうか。書くものは書いてつけるべき話もつけたのだから、私に対して言い残しておけないことを長々と話す自己満足の時間が早く終わってくれないだろうかと、その時の私は煙草を吸いながら彼の話を聞き流して過ごしていた。


それから半年近く経って、偶然その元夫を見かけたことがあった。たまたまどこかで姿を見かけることがあれば、一目見て気付かないほどに彼は劇的に変わってしまっていることだろう。そう思っていたにも関わらず、私は一目で間違いなく元夫だとわかった。


元夫は何も変わっていなかった。むしろ一回り肥えていた。ついでに言うと、交際が続いているらしい隣にいる女も見た目がいくらか丸くなったように見えた。


白い目で見ている私と彼らの目が合っても、私は黙って彼らを観察していた。元夫はどうやら自分たちを見ていたのが元嫁の私であることにすぐに気づけなかったらしく、やや遅れて慌てだしてそそくさと女を連れて姿を消した。


勝ち誇ったような清々しい気分になったのは、ほんの少しの間だけだ。堂々と話し掛けに行って「NDK?NDK?」とでも言えばさらにスカッとしたかもしれないが、あまりにも面倒だった。元夫とは金輪際関わり合いたくないし、話し掛けに行く労力を彼に割いてやる義理もない。


どうやって私が痩せたか、アドバイスしに行く嫌がらせくらいはしてもよかったかもしれないが。







余談の方が長くなってしまう私の悪い癖はさておき、本題。


とにかく私が異常なほどのめんどくさがりであることは、このページをご覧いただくだけでご理解いただけたことだろう。やるべきことはやる気が出るまで後回し。明日の自分がきっとなんとかしてくれる。毎日そう思っている。


最近感じていた最も面倒なことは、美容室の予約を考えることだ。伸びてきた髪が鬱陶しくなってきて、後ろ髪だけ結んだり前髪を自分で切ったりして済ませていたが、いい加減ちゃんと整えてもらわないとさすがによろしくない長さになってきたのだ。


何か髪を切りに行こうと思い立つきっかけは起こらないだろうか。鬱陶しくなってきたというだけで十分きっかけにはなるのだが、呆れるほど日和見なことを考えている私に対して、ありがたいことにそのきっかけは訪れたのだった。


いつも通り無気力に仕事をこなしている時のことだった。お盆が明けて客足が若干落ち着いてきた。忙しさも落ち着いてほしかったのだが、おでんと中華まんの販売が始まり、月末に行われる少し規模の大きな近隣の祭りに合わせた発注計画を立てないといけなくなり、忙しさがお盆よりも増した憂鬱を感じながら私はツナメさんが来るのを待っていた。


唐突に呼称を挙げたが、私はツナギの彼のことをツナメさんと呼ぶことにしたのだ。ツナメパンの略称になぞらえて、ツナメさん。自身の短絡思考ぶりにはすでに諦めがついている。


仕事帰りに立ち寄っているであろうツナメさんは、当然お盆の時期には全く顔を見せなかった。お盆が明けて仕事が始まれば、また買い物に来てくれないだろうか。そんな期待を抱きながら彼を待ち、いつもの時間帯になって出入り口を念入りに観察したりしたものの、彼の姿を捉えることは出来なかった。


今日は来ない日か。そう諦めて、私は仕事に戻った。これはいつものことなのだが、彼が訪れる時間の前後は、彼と似たツナギ姿の男性客がちらほらと見受けられる。ツナメさんと同じ白っぽいツナギ姿を見かけて軽くどきりとし、顔を確かめて肩を落とす。それが何回かあった後に本物のツナメさんが現れた時は、素直に嬉しくなってしまうものだ。この日も何度か偽物を掴まされ(酷い言いがかりである)、明日こそ来てくれるだろうかと思いを巡らせながらレジ打ちに意識を戻していた。


一人の白っぽいツナギ姿の男性客がレジに近づいてきたのを見て、さっきちらっと見かけた偽物か、と失礼なことを考えながら応対しようとした私は、手に持った商品を見て軽くはっとなった。ツナメさん愛用の電子煙草とコーラ。店に入ってきた時は後ろ姿だけ見て違うと判断していたが、咄嗟に顔を見上げてしまったその時の私は、思いきり動揺を顔に出してしまったと思っている。


ツナメさんは髪を切っていた。前髪を上げて額を晒していた髪型から、前髪を下ろした髪型に変わっていた。衝撃だった。物凄く似合っていた。羨ましいほどの前髪のサラサラぶりが眩しかった。


髪型を見てただのそっくりさんだと気に留めずにいたら、まさかのご本人登場だったのだ。あまりの衝撃に不審なリアクションをしてしまったせいか、懸命に落ち着き払っていつも通りに応対しようと努める私に、さらに衝撃を与えることが起きたのだ。


ツナメさんの口が明らかに「どうも」と動いた。確実に私を見ながら。私は普段からツナメさんに対して常連客相手のように「どうも」なんて口にしたことなどない。ツナメさんからも気さくに声を掛けられたことなどない。なんなんだこの人は。商品をスキャンする手が震える。金額を読み上げる声が震える。身長差でうまく隠せているはずの伏せた顔がにやける。これだけ私を動揺させたことに満足するがいい。せめてもの仕返しに妄想小説書いてやるから覚悟しとけ。


その後は特に変わったこともなく、買い物を済ませて店を出たツナメさんを最後に店内に誰もいなくなったところで、私はフライヤールームに駆け込んで勢いよく突き当たりの壁に体当たりした。動揺の鎮め方がおかしいことなどわかっている。私が壁に激突した音を隣の事務室で耳にした店長から何があったのかと尋ねられたが、私は平然として答えた。


「何でもないです。軽く事故っただけです」


あんなの、もらい事故だ。







私は実に呆れるほどのめんどくさがりであり、実に安直な人間だ。ツナメさんが髪を切ったことだし、自分も切ろう。そうやって彼から勝手にきっかけをもらったのだ。


彼と同じ物を買うというストーカー行為も、言い方を変えれば私が人並みに生きるためのきっかけを彼から無断で拝借しているだけなのだ。自分では選ばないような食べ物や飲み物を真似て選び取り、ほんのわずかに悦に浸ることで咀嚼の面倒さを忘れて飲食ができる。


自分一人でまともに生きることさえ面倒だから、そのために私は彼の存在を頼ろうとしているのかもしれない。


そう開き直ったところで、早速その彼への仕返しを遂行しようと思う。妄想小説である。


今回の出来事をきっかけに思い付いたネタを仕事中にまとめてみた。チラシの裏ならぬ、レシートの裏に。レシ裏である。くだらない話はさておき、書き溜めたメモを晒すと以下の通りだ。


・日記風 ツナメさん視点

・名札ネタ

・煙草ネタ

・髪型ネタ

・事故ネタ

・パンネタ


端的すぎるが、これをプロットに妄想小説に取りかかろうと思う。もはや誰得なタイムトライアル方式で小説を書くことなど、なろうで真面目に創作に勤しんでいる他の作家様方に対して失礼極まりないことだが、急いで書こうが綿密に推敲しようが私の文章力など人に評価していただくほどのレベルではないのだから気にしない。YouTuberレベルのくだらない挑戦をしようとしていると鼻で笑っていただければいい。


仕事を終えるまで思い浮かばなかったが、ここまでこの記事を書いていて思い浮かんだ「馴染みの店と事故りやすい店員」というタイトルにしよう。


自己満足タイムトライアルに臨むにあたって、自分ルールを記載しておく。当然だが上記のプロット以外、下書きで書き溜めているネタなど一切ない。新規作成ページで完全に一から書き始める。計測スタートはこのページを投稿して新規作成ページを開いた時点から。小説を書き終えた時点で計測ストップ。先に投稿してしまい、タイムトライアルに挑んだ証拠を投稿時間として記録に残してから、前書き後書きを付け足して改稿する。それから活動報告を書く。


このページを投稿→妄想小説の執筆→小説投稿→前書き後書きを付け足して改稿→2ページ分の活動報告


これで行こう。さあ私のタイピング力が、じゃなくて、創作力が試されている。誰からも期待されてなどいないが。前回は約3700字で2時間半。文字数はおそらく前回より少なくなるのではないかと漠然と予想しているが、このページを投稿しておよそ2時間後に果たして小説を投稿することは出来るのか。


このページの前書きも書けた。三つ目の項目を何にするか結構悩んだが、これから投稿する妄想小説の出来栄えに対する意味も込めて三つ目も決まった。後は投稿して、小説を書き始めるだけ。


はい。よーいスタート。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ