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思い込みと思い上がりと思いの行く末

愚考度:★★★★★

浅薄度:★★★★★

貪欲度:★★★★★

人生が変わるかもしれない一日は、本当に長く感じた。望んだ通りの幸せを得られるのか、いつぞやの出来事と同等かそれ以上に心を抉られて寂しく生きていくことになるのか、約束の時間を迎えるまで私は落ち着かない時間を過ごしていた。


気を紛らせるために、日中は予定通りスロットに興じていた。凱旋でまさかのGODを引き当てた。愛に悩む哀れな子羊に、神は救いの手を差し伸べてくださったのだ。何なのだろうか、この狂ったテンションは。


いつもならすっかりご満悦で遊戯を続けたかったところだが、やはり落ち着かなさが先に立った。早々に切り上げて帰宅し、再び外出する準備をしっかり整え、店長と約束した時間になるまで、日付が変わったら投稿する予定のこの記事の書き出しだけをこうして仕上げて、その時を待っている次第である。


ここまでを書き上げている今の私は、この記事がどんな風にまとまることになるのか、まだ知らない。あと少しだけ書いて、いつものように余白を空けておいて、保存して、画面を閉じて、もう行かなければならない。


さあ、教えてくれ。私とツナメさんが、どうなったのかを。







……と、およそ二ヶ月前の自分が書いたずいぶんと切迫してらっしゃる上の文に目を通した今、自分の思い込みの激しさとその情けなさを大いに嘆いている。


すべては自分の壮大な勘違いだった。前回の記事で延々と綴ったよもやま話は、何一つ実現しなかったのだ。ツナメさんなんてこれっぽっちも関係なかった。店長の企みというのは、可能な限り従業員を募って決起集会という名の宴会を開くことだったのだ。


ああもう、くだらないことに頭を悩ませ続けていたことなんてかなぐり捨てて、何もかも忘れてしまえと浴びるように酒を飲み尽くしたが、酒にも水にも流せないどうにも納得のいかない思いは拭えなかった。当日まで用件をひた隠しにしていた理由については仕方ないとは思う。店番をする従業員に申し訳ないからと平等に内緒にしてたことは納得した。


だが店長は、確かに「仕事とはまったく関係ない」とはっきり言ってみせたのだ。こればかりはさすがに納得できない。職場の面々での飲みニケーションは「仕事」に含まれるか否か、という議論をたびたび目にすることがあるが、私は断然「仕事」と見なす派なのだ。なので当然出勤扱いになどなっていなかったこの日は、個人的に休日ではなかったと思うことにしている。翌日からの8連勤は確かに辛かったが、実際はそれ以前から数えて13連勤だったと思っている。そりゃ辛い。


そんなことはもういい。どうだっていい。前回の記事で「ツナメさんのことだったらどうしようどうしよう」と散々踊らされていた私の滑稽な慌てようはしっかりと残しておけたのだから。いくらでも笑っていただきたい。笑い種にされる方がよほど気楽なのだ。


だがその笑い話が、私のなけなしのポリシーを呆気なく曲げてしまった。前回の記事から文面をそっくり引用させてもらうと、ツナメさんに対して「お近づきになりたいと真剣に願うのも私はおこがましいと思っている」点についてである。


自棄というのは、本当に厄介だ。あろうことか私は、彼とお近づきになろうと自ら行動を起こしてしまったのである。今回はその話を詳しく説明させていただこうかと。







成人式以来となる再会を果たした同級生と飲みに行く約束をした。彼を仮にTと呼称する。彼自身のイニシャルかは当然触れないが、「ツ」ナメさんのTを取ったと前置いておこう。何故ならTはツナメさんと縁のある人物なのだ。同じ職場に勤めているのである。


実はこのT、ツナメパンにおいては当然初登場かと思いきや、すでに以前触れたことがあった。およそ半年以上前に投稿した「【妄想小説】何かお探しですか」で取り上げた同級生というのが彼のことである。成人式以来の再会はとっくに済んでいたわけだが、向こうから不意に私に話し掛けてきて相互認識するようになったのはごく最近のこと、というわけだ。


私とT、そして「涙の魔法」にて「奈津美」というキャラのモデルにもなったもう一人の同級生、この三人で酒を酌み交わしながらの語らいは、実に充実したひとときだった。同世代の明るい報せが次々に舞い込む中、次第に焦りを感じつつある者同士である仲間意識からか、各々が抱く恋愛観を明かし合い議論し合う時間が最も白熱していた。


そんなガチンコトークの最中、私はTからわずかでもツナメさんの情報を得ようと躍起になっていた。同じ職場とはいえ、Tはあまりツナメさんと関わる機会がないらしく、そこまで詳しく彼のことを熟知していたわけではなかった。それでも彼の大体の年齢と、独身が確実であるという情報だけは得られた。彼女持ちかどうかも重要だが、どうにかして探ってこいとTに頼み込むわけにもいかないし、それを明らかにすることは諦めるしかない。


それでも諦めの悪い私は、図々しくもTに頼み事をした。私の連絡先をツナメさんに渡してくれと。ただの常連客の一人に一方的に憧れを抱いている同級生の店員と、今後もなんの気兼ねなく店に通う普通の客でありたい同じ職場の先輩を、引き合わせるための橋渡しを担ってくれと。


学生の頃から変わらず人のいいTは、乗り気ではなさそうに見受けられながらも、一応首を縦には振ってくれた。元々関わる機会の少ない相手に対して、話の切り出しが限りなく難しいことを頼んでしまったのだ。そうすぐには実行に移せないだろうし、いつかたまたま機会が訪れるようなことがあったら、くらいのつもりでいてくれたらいい。最低限、頼んだことを忘れてしまったりしなければ、それでいい。


なんとも虫が良すぎる話だ。Tに対してろくな見返りも約束しないで。贔屓客として融通を利かせるくらいしかできないが、何も返さないよりずっといい。依頼をきちんと遂行してくれたらの話だが。







久しぶりのエッセイというより、書き物すら久しぶりすぎた今回の記事は、どうもまとまりのない文章に仕上がっていると思う。読み返して冷静に推敲することすらままならない。小説においてもエッセイにおいても、ページ内の始めと終わりを綺麗にまとめることを個人的に信条としているが、きちんとまとめられそうにない。


仕方ないの一言で済ませるべきではないのだが、常に落ち着かない精神状態が続いているのだ。Tがいつ、私の依頼を実行してくれるのか。それをきちんと報告してくれるのか。肝心のツナメさんはどんな反応を返してくるのか。事態はどちらに転がるのか。私の人生が変わる日は、いつになるのか。


精神が落ち着かなくなったら、ツナメパンを書いて落ち着く。かつてこのエッセイは私の精神安定剤という存在意義があったが、長らくエッセイを書くことから離れていたせいで感覚がなかなか戻らない。結局は拙い文面にしか仕上げられなかったが、それでもこれを書き出す前と比べたらだいぶ落ち着いてきたように思う。やはり精神安定剤であることに違いないようだ。


ツナメさんと一切関係ないテーマでも、また積極的にここで何か書いてみよう。何かが起こるまでは、何か別のことをして気を紛らせていないと、何も手に付かないのだ。

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