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きっかけと後押しと原点

後悔度:★★★★★

諦観度:★★★★★

緊張度:★★★★★

お久しぶりです。そんな書き出しが最も無難だろうか。リアルタイムで投稿を楽しんでくださっていた方など今ではおそらく皆無に等しいだろうから、このエッセイが半年レベルで投稿期間が空いてしまったことなど、触れる必要なんて無いだろう。


あまりにも期間が空いたので、エッセイを書く感覚など冗談抜きで忘れてしまっていた。なので久方ぶりに投稿を思い立った今、過去の記事に全て目を通して感覚を思い出してからこれを書き出している。読みながら寝落ちしてしまい、なかなかの夜更けに着手し始めたが、果たしてTwitterで予告していた通り翌早朝に投稿など出来るだろうか。己との戦いを密かに繰り広げているわけである。


さて、ツナメパンと言えばツナメさんネタである。半年の空白を埋めるに相応しい、とんでもないネタを仕入れたのだ。これは是非ともツナメパンに投稿しないわけにはいかない、実においしいネタが突如舞い込んできたのだ。


今後二度と、ツナメさんに関わる記事が書けなくなるかもしれない。そんな状況に今、私は立たされている。







すべての発端はおそらく、私がツナメさんのことを店長に洗いざらい喋ってしまったことだろう。常連客の中に気になる人がいると打ち明け、あの人のことだと顔を確かめさせ、ただの常連客のうちの一人に私がまさか想いを寄せていたとはと存分にからかわれた。


それだけで済むと思っていた。彼の制服がどこの会社のものであるかを知っていた店長は、彼と同様にうちの店に訪れる、彼と同じ会社に勤める知り合いに探りを入れてみる、と言い出したのだ。私はさすがに遠慮した。独身かどうかだけは把握しておきたいところだが、お近づきになりたいと真剣に願うのも私はおこがましいと思っている。もちろん直接交流したいと全く思っていないわけではないというのが本音ではあるのだが、そうなるチャンスを与えられたところで、店員と客という立場を取り払って彼に接する自信を付けることは、私にとって相当ハードルの高い試練なのだ。


知り合いが来たら絶対に聞き出しておくから、と店長が意気込んでそう言ったのは、この記事を書いている今から二週間以上前のことだったと記憶している。いつ店長の知り合いが来るのか、いつ店長とその人がばったり顔を合わせてしまうのか、なかなか気の抜けない勤務に励む日々が続いていた。


それが、数日前のしかもまさかの私の休日に、どうやら店長の企みが実行されてしまったらしい。友人と飲み歩いていた深夜に、突然「来週土曜の休みを、その前の木曜と交換できる?」という連絡が入ったのだ。その時の私は、他の従業員の都合でシフト変更することになったのだろうか、と特に疑問を持つことなく二つ返事で休日の変更に了承を返した。


ところが店長は、休みにした木曜の夜に「ちょっと付き合ってほしい」と付け足してきたのだ。何に付き合わされるのか、他の従業員を巻き添えにシフト変更するほどのどんな用件に私を付き合わせる気なのか、店長は頑なに教えてくれない。当日まで内緒、と断固として用件を話さない店長を訝しんだ私は、あの手この手でなんとか推測材料を少しでも多く得ようとして、以下の情報を得た。


・仕事とは無関係らしい。

・木曜夜に予定している用事は急に決まった話(・・・・・・・)らしい。

・当日の集合時間と用事の所要時間を私に伝えた上で、それよりも遅くまで付き合わせる(・・・・・・・・・・)ことは無い(・・・・・)らしい。

・私にとって絶対に悪い話ではない(・・・・・・・・・・)らしい。


これらを踏まえた上で、これまでツナメさんをしつこく観察してきた私の経験則から導き出した推測材料も、以下に挙げておこう。


・件の日は、周期から考えてツナメさんの夜勤の週にあたる。

・店長の指定した集合時間に所要時間を加えると、ツナメさんの夜勤の始業前にはちょうど終わる計算。







……どう考えても、というか、そうとしか考えられないのだ。


要するに、私が休日を満喫している間に店長の知り合いが店に来て、うまいこと店長が話をつけてしまったのだろう。好都合もいいところの憶測でしかないが、約束の日にすでに日付が変わってしまった今となっては、それ以外の可能性など全く想定していない。これで実際の用件が本当に無関係なものだったら、今日まで真剣に頭を悩ませ続けていたことを思いきり笑い飛ばして、どんな用にでも付き合ってやろうと開き直る準備も、一応してはいるが。


さて、どうしたものか。約束は夕方以降からなので、気を紛らせるために日中はスロットを打ち倒すつもりでいるものの、おそらくその時が迫るにつれて緊張が増していき、自然とスロットが手に付かなくなるに違いない。シフト変更したことで金曜から8連勤が確約されているというのに、まるで休んだ気にならない休日になることだろう。


店長が内緒にし続けている用件の予想が当たったとして、展開がどの方向へ転がったとして、私がツナメさんに想いを寄せていたことが本人に知られてしまうのだ。もうすでに本人に明かしてしまっていて、いきなり返事を返してくることも考えられなくはない。


私はまるで見当も付いていなかったふりを演じきって、内緒にした甲斐があったと店長を満足させるつもりではいるが、かなり早い段階で察しが付いてしまっていた私の今日までの勤務というのは、なかなか堪えるものがあった。


最悪の場合、今回のことをきっかけにツナメさんがうちの店に来なくなる可能性だってあるのだから。


立て続けに来たり全く来なかったりする彼が幸運にも現れてくれるたびに、今日で会えるのが最後だろうかと考えながらレジ応対をしていた。この記事を書いている、日付が変わる前の水曜の夜にも彼は立ち寄ってくれて、しかもかなり久しぶりにカレーパンを買っていったのだ。当然、彼にそんなつもりはないことなどわかりきっているが、なんとも粋な展開だと勝手に私だけ感慨深く思ったりしている。


彼を意識するきっかけの一つを作ってくれた、私にとって思い入れの強い彼の代名詞。


どんな結果になったとしても、これだけは確かめておこう。どんなに気になる彼のことでも、気になったままにしてはおけないことだから、これだけは。


「カレーパン、好きなんですか?」って。

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