二話 雨に降られて
二話というより一・五話といった方が的確かもしれない。
ぽつり。走り出した矢先、鼻の頭に滴が当たった。降り出した雨は徐々に強まり、地面を色濃く塗り直していく。少年の祭服がしっとりと重くなる。黒ずんでいた返り血が鮮やかさを取り戻し、その存在を際立たせた。いつしか斑になっていた模様が滲み、薄汚れた白を喰いつくす。
真白だったはずの祭服の色が、ゆっくりと、はっきりと、その姿を変えてゆく。しかしそれを気にも留めすに少年は走る。走る。
指示された地点に近くなったところで歩を緩めた。手ごろな死体の陰に伏せる。遠くに目を凝らすと薄汚れた白い服が人々の中心で舞うのが見えた。
「・・・あいつか。」
苦虫を噛み潰した表情をする彼へ追い打ちをかけるように、イヤーカフ型の無線機がまた震える。
「B地点に増援を。」
眉間に皺を寄せつつも人の群れへと近づいた。剣と銃を抜く。音も立てずその後ろに回り込み、一度に二人斬り裂いた。四年の歳月は彼を大きく成長させていた。
「何だ!」
前の敵に集中していた視線が後ろに集まる。次の瞬間、彼らが目にしたのは銃口をこちらに向けた少年の姿と、仲間から紅く咲き乱れた血飛沫。
「ぁ・・・あぁ・・・・・・。」
倒れゆく戦友と新たに現れた強敵を前にして、兵士たちは膝から崩れ落ちる。そして、背後から繰り出された斬撃が、彼らの恐怖を拭い去った。
次はもうちょい長いっす。