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翡翠の星屑 小話  作者: 季月 ハイネ
港町の細工風物詩
1/6

 ぱきりと。

 耳にほど近い場所で鳴った音に妙に惹かれて。

 自分と同い年くらいだろうか。思わず追ってしまった目が捉えた三つの後ろ姿は、自分とは反対方向へと足早に駆けていったのだ。


「どうした?」

 止めてしまった足に、引かれた興味。隣にいたシェリックがそれに気づかないはずもなかった。

「うん」

 答えながら、目だけはしっかりと彼らを追う。

「なに持ってるんだろうって思って」

 細長い棒。その先についていたのはつやつやとした物体だった。口に入れていた子もいたから、きっとあれは食べ物なのだろう。

「食い意地張ってるな」

「そうじゃないよ。……お腹は空いたケド」

 つけ加えたひと言に吹き出され、ラスターの頬は少しばかり膨らんだ。そうやって、いつもいつもすぐに笑わないでほしい。

「ただ、見たコトなかったから、気になって」

「へえ、どんなものだった?」

「んーと……細くて長い棒の先っぽに、鳥みたいなのがついてた」

「棒――ああ、もしかしてあれか」

「知ってるの?」

 何かに思い当たった風情のシェリックを、ラスターは期待を込めて見やる。しかしながらシェリックはそれを言葉にしたりはせず、何かを企むような顔で視線を転じたのだ。

「まあ、今の時期だといるだろ」

 何がだろう。

 自分だけわかる独り言をつぶやいたかと思えば、シェリックはこう尋ねてきたのだ。

「飯の先と後、どっちがいい?」

「じゃあ、先!」

 浮かんだ疑問を払拭する時間すら与えられず、ラスターは問われたままに答えを告げる。気になるものは気になるのだ。後にするよりは、先に判明してからおいしくご飯を食べたいではないか。

 そう逸る気持ちを抑えて待っていたら。

「じゃあ、行くか」

 シェリックは答えなどくれず、さっさと歩いて行こうとするではないか。慌てて彼の後を追いかけ、並んだ隣でその長身を見上げた。

「どこに?」

「あれが売ってる場所」

 さも当然であるかのように返され、ラスターの謎は一旦お預けにされたのである。


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