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ぱきりと。
耳にほど近い場所で鳴った音に妙に惹かれて。
自分と同い年くらいだろうか。思わず追ってしまった目が捉えた三つの後ろ姿は、自分とは反対方向へと足早に駆けていったのだ。
「どうした?」
止めてしまった足に、引かれた興味。隣にいたシェリックがそれに気づかないはずもなかった。
「うん」
答えながら、目だけはしっかりと彼らを追う。
「なに持ってるんだろうって思って」
細長い棒。その先についていたのはつやつやとした物体だった。口に入れていた子もいたから、きっとあれは食べ物なのだろう。
「食い意地張ってるな」
「そうじゃないよ。……お腹は空いたケド」
つけ加えたひと言に吹き出され、ラスターの頬は少しばかり膨らんだ。そうやって、いつもいつもすぐに笑わないでほしい。
「ただ、見たコトなかったから、気になって」
「へえ、どんなものだった?」
「んーと……細くて長い棒の先っぽに、鳥みたいなのがついてた」
「棒――ああ、もしかしてあれか」
「知ってるの?」
何かに思い当たった風情のシェリックを、ラスターは期待を込めて見やる。しかしながらシェリックはそれを言葉にしたりはせず、何かを企むような顔で視線を転じたのだ。
「まあ、今の時期だといるだろ」
何がだろう。
自分だけわかる独り言をつぶやいたかと思えば、シェリックはこう尋ねてきたのだ。
「飯の先と後、どっちがいい?」
「じゃあ、先!」
浮かんだ疑問を払拭する時間すら与えられず、ラスターは問われたままに答えを告げる。気になるものは気になるのだ。後にするよりは、先に判明してからおいしくご飯を食べたいではないか。
そう逸る気持ちを抑えて待っていたら。
「じゃあ、行くか」
シェリックは答えなどくれず、さっさと歩いて行こうとするではないか。慌てて彼の後を追いかけ、並んだ隣でその長身を見上げた。
「どこに?」
「あれが売ってる場所」
さも当然であるかのように返され、ラスターの謎は一旦お預けにされたのである。