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1話 経緯

「お前は絶対にホモだ」

「は、はぁ?」


 突然こう言い出す友人、音形志郎に対し間の抜けた返事をしてしまった。

 こいつとは小学生の頃からの付き合いだから、かれこれ10年近く一緒だ。

 長く一緒にいれば、それなりに相手の趣向とかもわかってくるものだ。

 それを何故今更。


 もちろん僕はホモではない。

 大磯光輝おおいそみつてる、齢17にしてホモ疑惑を持たれる。

 しかも突然、何の脈絡も無しに。

 志郎を見ると、腕を組んで頷いている。何に納得しているというのか。

 もうじき夏が来る雨続く6月、じめじめした空気で脳みそがカビてしまったのかもしれない。


「そういう結論に至った理由を話してくれ。意味がわからん」

「簡単なことだ。お前さぁ……」


 別に緊張をしているわけではないが、少々睨みつけるように志郎を見る。そりゃそうだ、ホモだなんて思われるのは不快でしかない。

 別にホモを否定するわけではない。それどころか推進派の類だ。


 自分に被害がないのを前提だが、ホモセクシャルが増えるのは喜ばしいことだ。

 ホモが増えるということは、それだけホモでない人が減る。つまり女性の選択肢として選ぶ男が減るということだ。

 よく勘違いされがちだが、いわゆる腐女子は別にホモの男を好きなわけではない。そういうシチュエーションが好きなだけだ。ようするにホモだからといって腐女子に好かれるというわけではない。

 そもそもホモが女性を選ぶことはないから、恋愛が成立しない。もしホモの男を好きになったとしても、その先が無いわけだ。

 最終的にはホモではない男を選ぶしかなくなる。


 僕はできることならば、女性から選んで欲しい。

 となるとその理由をはっきりさせねば、変なうわさがたって嫌な思いをし続ける。


「もったいつけずに言えよ」

「お前さ、女子に興味無いだろ」


 こうきたもんだ。

 女子に興味が無い。それは考え方の違いだ。

 興味がある女子が今いないというだけだ。そこらにいる平均的男子だと思うぞ、僕自身は。普通に彼女が欲しいし。


「あるよ」

「へえ。じゃあHKD180の中で誰がいい?」


 最近流行っているアイドルグループからの選択肢か。


 僕は別段アイドルに興味は無い。というよりも180人も覚えられない。

「あー……、特にいないかな」

「あれだけいれば好みの子くらいいるものだろ普通」


 五百羅漢から自分に似た顔を捜すような話だ。

 とはいえ全員をしっかりと見たわけじゃないからなんともいえないが。


「だけど別に魅かれる子がいないんだよ」

「……お前さ、妹を基準に考えていないか?」


 僕の妹、智羽ちはのことを言っているんだ。

 智羽は別にかわいいわけではない。といっても酷くはないだろう。普通じゃないかな。

 物心ついた時には既にいて、ずっと一緒に育ってきたんだ。今更あいつにどうといった感想は持っていない。


「基準もなにも、あいつは並だろ」


 志郎は、はぁ……と深くため息をつき落胆している。


「前から言っているだろ、智羽ちゃんのかわいさは異常なんだよ。アイドル風情が束になっても敵わないくらいな」

「お前が大好きなHKD180よりもか?」

「当たり前だろ。智羽ちゃんと付き合えるのなら、HKDのメンバー全員のハーレムをもらえても断るね」


 にわかには信じられないが、こいつは女関係で嘘を付くような奴じゃない。


 しかし言われてみれば……。昼休みとはいえ、雨が降っているせいで教室にはほぼ全員が揃っている。そこを見渡す限り、あいつよりもかわいい子は……むう。

 人は外見だけではない。特に女性はそうであることも重々承知だ。

 いくら顔が良くても性格が悪かったら嫌なものだ。

 逆に性格が良ければ見た目なんて気にならないと思っている。

 しかし恋愛というのは、やはりきっかけが重要だ。

 性格やしぐさもきっかけのうちに入るだろう。声がいいというのも有りだ。


 だが最初の印象ってやっぱり見た目なんだよな。

 性格の良し悪しなんて長く付き合ってみなければわからないものだし。

 そう考えると僕が興味を持てる女子がいないのは、智羽のせいなのだろうか。


「でもさ、もしそうだとしても僕がホモという話にはならない」

「なるだろ。アイドルどころか、あれだけかわいい妹がいるのに興味を持たない。どう考えてもホモとしか思えない」

「絶対にそれはない。第一妹に興味を持つとかおかしいだろ」

「おかしくないだろ。智羽ちゃんが俺の妹だったら絶対に手を出してるね」


 智羽がこいつの妹ではなくて本当によかった。


「それは小さい頃からずっと一緒にいなかったからそう思うんだよ」

「そういうものかねぇ」


 一人っ子に兄弟の説明をするのはなかなか難しい。


「じゃあさ、自分の母親が相当の美人だとする。それで欲情したりするのか?」

「するわけねぇだろ」

「だろ?」

「母親ってことは、少なく見積もっても40近くだろ。そんな年寄りに欲情するとかどうかと思うぜ」

「30代で年寄りってことはないだろ」

「女は20過ぎたら俺の範囲外だ」


 こいつはロリコンの類だったのか。

 大体こいつの好きになるのは同学年くらいだから、これといって気にならなかった。

 前述は訂正。10年付き合いがあってもわからない部分はあるものだ。


「それじゃあもしお前の母親が13歳だとするだろ?」

「お前はバカだ」


 ……確かにそうかもしれない。

 どこの世界に17の息子を持つ13歳の母親がいるというんだ。義母ならまだしも。


「じゃ、じゃあ19歳の母親でいいや」

「てめぇは俺の親父をバカにしたいのか?」


 う、むう。2歳の子供といたしたなんて犯罪どころの騒ぎじゃないな。


「悪かった。今の無し」

「大体お前の考えがおかしいんだ。もっと適切なものをよこせ」


 確かに今までのは適切からかけ離れた例えだった。そもそも親と兄弟は全く異質なものなんだし。

 そうだ、その説明をしてみればいいんだ。


「親っていうのはさ、僕らの半分でしかないんだよ」

「なんだよ突然話が変わって……」

「まあ聞いてくれ」

「わかったよ。んで、どういうことだ?」

「つまりええっと……父親と母親の両方を合わせたのは僕であり妹なんだよ。ようするに母あるいは父というものは、僕らの片面でしかないわけだ」

「ふむ?」

「でも僕と智羽は、その片面ずつ。つまり両面が合わさっている存在なわけだ」

「遺伝子的には半々を受け継ぐとか、そんな話か?」

「そんなところかな。つまり僕と智羽は同じものなんだ」

「しかし別の考え方もあるぞ」

「どんな?」

「お前は父の半分と母の半分を受け継いだ。そして妹は残りの半分を受け継いだ。だからお前ら兄妹は全く別の存在であると」

「それは無い」

「なんでだ」

「りんごとみかんのミックスジュースを作ったとして、2つのコップに分けるとするだろ。それで片方がりんご、もう片方がみかんだけになると思うのか?」

「つまりお前の両親はミックスジュースのように激しく混ざり合ったと?」


 この野郎。下衆いにもほどがあるぞ。

 それにしてもやたら今日はからんでくるが…………ああ、もうそんな時期か。


 志郎は毎年これくらいに発病する。

 元々スケベではあるが、こんな露骨な奴じゃないからな。

 だがこれは面倒だぞ。

 普段これの担当をしているもう一人の友人は、今日は何故か休みだ。

 そして明日なら来る、とも限らない。

 ということは僕がこの状況を打破してやらないといけなくなる。

 クラスの……いや、世界の女子のために。

 そしてそれ以上に僕自身の名誉のために。


「だったらどうしたら僕がホモじゃないと信じてくれる?」


 志郎は腕を組み考え出した。


「そうだなぁ……。じゃあ女の子とキスしてみろ」


 は……あ?


「なんでだよ。全く理に適ってない」

「ああそうか、女とはキスしたくないんだな。ホモだから仕方ないか」

「ちげえよ! 相手がいないだろ!」

「ちょっと見渡してみろ。いっぱいいるぞ」


 無差別キスとか僕を犯罪者にしたいのか。


 しかしそれによって僕の名誉が守られるのなら女子には多少なりとも犠牲になってもらってもいいかもしれない。

 ……いや、それによってさらなる汚名が着せられる可能性もある。

 ならば僕が選べる最善の策を選ぶしかない。


「わかったわかった。じゃあ智羽でしてくるよ」

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