そこには
次の日、同時刻――。
銀色の月が、ひとりと一匹を照らす。
『一人か?』
「はい。もとより、この山には誰も近寄らないですから」
竜は、銀色の月を背景に、女王と向かい合った。
「……昨日と同じことを、訊いてもよろしいですか?」
『竜の村を、追放された。ここへ来たのは偶然だ、気が済めば出て行くつもりだった』
流れるように答えたからには、日中考えまとめたのだろう。端的に表された言葉は、彼の性格を垣間見た気がした。
「竜の、村、ですか?」
聞きなれない言葉で、途切れがちに繰り返す。
『もう、知っているものもいないだろう。遥か山奥に存在する、竜のすみかだ。――今となっては、思い出したくもない』
「……余計なことを、聞いてしまったでしょうか」
『いや』
躊躇いがちに、竜は少女へ問いかけた。
『……君は、俺がなぜ追放されたか――知りたくはないか?』
「どういうことですか?」
言ってからも、迷っているようだった。それでも、
『知りたいか? 知りたくないか?』
竜はそう繰り返した。
「……知りたい、です。あなたが、追放された理由」
『だったら、目を瞑っていてくれ』
「はい」
驚くほど素直に従った。それに意表を突かれつつも、竜は相変わらずの冷たい瞳を下げる。
「もう、いい」
声がすぐ近くから聞こえた。ゆっくりと目を開ける。そこには。
いくつも年の変わらない、青年の姿があった。




