時は流れ
時は流れ、女王様が十五に達した頃。
この時世界は、大きな危機に見舞われた。
なんと、巨大な竜――それでも体長十メートルほどだが――が、人々の前に姿を現したのだ。
竜はただ、人々を眺めている。
それでも、混乱が起こらないはずがない。
“もし、竜が襲ってきたら。”
その仮定に、逃げ出そうとする者、対抗しようとする者、神に救いを求める者。様々な者がいたが、女王様に助けを求める者が圧倒的だった。
誰もが助けてくれと喚き叫ぶ中、女王の心中を察する者はいない。
ひとり溜め息をつくと、傾き始めた空を見上げた。
しんと星が降り注ぐ。女王様は、城のてっぺんに登った。
それを目敏く見つけた竜は、ゆっくりと己の身体を反らしながら近づく。
銀色の鱗が月明かりに照らされるさまは、ひどく幻想的で今にも消え失せてしまいそうであった。
竜を目の前にしても穏やかな笑みを崩さず、女王は静かに問いかけた。
「あなた様は、なぜこの国に留まっておられるのですか」
見た目と相反して、その声はとても少女じみたものだった。澄んだ瞳を向け、静かに返答を待っている。
冷たく『お前に教える義務はない』と言われても、まだ表情を崩さない。竜は、微かに苛立ちを覚えた。顔色一つ変えない、小さな少女に。
じっと見据えられると、心を見透かされているような気がする。
無言のまま、責められているような気がする。
でも何より、彼女に惹かれていた。
『……明日の夜、山の頂上に来い』
愛想の欠片もなく、一方的に去っていく。
その後ろ姿に、小さな少女は頭を下げた。




