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家族部の騒がしい日々!  作者: 朱叉龍雄
1/1

切っ掛けというか、原因

 何時からだろうか。物心ついた時からアイツと俺は仲が良かった。家がすぐ隣という事もあり、俺の両親とアイツの両親はまるで兄弟のような付き合いだったのが主な原因。親同士が仲が良いから、俺も当然アイツと仲良くする事が当たり前のように感じられたのかも知れない。



 その時のアイツは少し内気な所があり、俺が何時もアイツの手を引っ張って近くの公園へと遊びに行ったんだ。俺の為すがままにされていたが、それでもアイツは楽しそうだから俺も嬉しかったのをよく覚えている。



 そんなアイツが暗い顔をするようになったのは────俺達が5歳の時だ。アイツの両親が交通事故に遭い、この世からいなくなってしまった事がショックでアイツは暫く立ち直れなかった。俺はアイツにどうしたら何時ものように楽しそうに笑って貰えるかひたすら考えた。



 思えばそれは奇妙な運命だったのかも知れない。アイツの引き取り手が見つからなかったのだ。アイツの祖父母は皆既に病で亡くなっていて、肉親と言えばアイツの両親、佑樹さんと静音さんだけ。その二人が突然この世を去り、アイツは天涯孤独になってしまった。



 そこで俺の両親がアイツを引き取りたいと申し出、結果的にアイツは家の養子として来る事に。だが以前のような、内気ながらも俺に着いて来たあの少年の面影はすっかり消え、ただただ目に光の灯らない人形みたいになってしまった。それが悔しかった。何より前みたいに笑って欲しかった。その一心で俺は後にアイツに振り回される原因となる言葉を発してしまった。



「なあ和人、俺とまた遊ぼうぜ! 何時までも泣いてちゃ叔父さん叔母さんに叱られるぞ!」



「放っておいてよ・・・・・・もう僕のお父さんお母さんはいないんだ! 会いたくてももう会えない! 嫌だよ・・・・・・僕もお父さん達の所に行きたい。でも行けない! だから泣くんだ!」



この時だ。過去の俺のファインプレーであり、最大級の面倒事の毎日を作り出す羽目になった言葉を言ったのは。全く・・・・・・殴ってやりたいが誉めてやるよ、俺。



「ならよ。俺と一緒に家族作ろうぜ! 和人が子供で俺は父さんだ! これから二人でいっぱいいっぱい楽しい事しよう! そんでもって、うんと沢山の奴を家族にしてお前を笑わせてやるよ!」



「・・・・・・家族? 本当に、僕の家族?」



「ああ! 無いなら作れば良いんだって誰かが言ってた!」



 俺が言った事・・・・・・つまり和人の為に家族を作るという凄く面倒な計画は、これを切っ掛けとして始まった。その後当然の流れかも知れないが、俺の両親は俺達の爺ちゃん婆ちゃんという役に。俺はそれから和人に父さんと呼ばれ続け(今でもだが)、親父もお爺ちゃんと呼ばれている。



 なんか母さんが不服そうだったが、親父に宥められていたのが凄く可笑しくて笑ってしまったのを思い出す。その後母さんに拳骨をプレゼントされたが。とりあえず二人共、和人が元気になった事で一安心したようだった。親父に至っては祝い酒だ! とか言って酒を俺達に飲ませようとしたので、母さんに張り手を食らっていた。二人共、なんだかんだ言っても和人が元気になったのが嬉しかったのだろう。



てな訳で回想終了。これから俺は二度寝という重要なミッションをクリアしなけりゃならんのだ。だから絶対に起こしに来るなよ、特に和人。



「おやすm────」



「おはよう父さん! 学校へ行く時間だよ!」



・・・・・・・・・・・・我がミッションの二度寝の達成を阻む敵が早速現れたか。仕方ない・・・・・・秘技、知らないフリ!!



「あ、あれ? 父さん? おーい、起きなきゃ遅刻するよ? 今日は高校の入学式だよー!」



・・・・・・高校? あぁ、あの良くも悪くも平均的な平凡高校、虹向高校か。略してニジコーだっけか、中々奇妙な名前してるよなー、ハイおやすみ!



「起きてよ父さん! 入学初日から遅刻とかしたら絶対に教師から目をつけられるよ! ────あ、」



俺はとにかく寝たいのだよカズト君。俺に構わず先に学校へ行くの────



「起きんかバカ息子ォォォォォォ!!」



ガンッッッ!! 後で和人に聞いたが、朝早くから俺の頭を楽器とした痛々しい音が響いたそうな。そして俺や親父が怖れるあの大魔王が繰り出した拳骨は、俺の頭を完璧に捉えていて、当然だが俺は頭を殴られたショックで気絶した。いやシャレじゃなくマジな方で。




「酷い目に遭った・・・・・・一瞬、二年前にアッチに逝った爺ちゃんが見えたぞ」



「え、えと・・・・・・父さん大丈夫? これからは婆ちゃんの機嫌を損ねないようにしようね」



フン、誰があんな大魔王のご機嫌取りなんざするか。そんな事するくらいなら日本男児らしく、潔く討死するわ。・・・・・・って家族内でそんな事になったらそれこそ大問題だがな。



「あ、着いたよ父さん。・・・・・・うわー・・・・・・広いねー」



「成績は他校と比べると平均的な癖にな。学校の敷地面積だけは県内一位だとさ」



そう、虹向高校はウチの県内一位の敷地面積を誇る、広大な学校なんだ。なんでも創設者がアメリカ人で、何でも大きい方が良いんだとかぬかして学校を大きくしたらしい。詳しくは知らんが、この学校がある市の1/10は占めているらしい。全く馬鹿な事をしてくれたもんだよ創設者は。移動とかどうすんだよ、もはやマラソンだぞ?



「まあ広いのは置いといて、クラスを見に行こうよ!」



「そうだな。出来れば不良みたいなバカがいなくて快適に睡眠出来るクラスが良い。それで、担任がやる気無しで最低限の事しかしない奴なら最高だ」



実際そんな奴いないだろうがな。もしいたら逆に今の教育事情に不安を感じるわ。とは言え和人がしっかりしてるから、大概は問題無しだろ。・・・・・・あ、財布家に忘れて来た。



「えーと、雨宮和人と雨宮航哉は・・・・・・あった! 1-Bだって!」



「へぇー。んじゃ行くか」



「おい待てよそこの新入生」



突然後ろから声がしたので振り返ってみると、何やらニヤニヤしながら指をパキパキ鳴らしてるタコ焼き頭が。嘘だろ・・・・・・高校生の内からスキンヘッドとか、もはや将来が坊さん一択しかねぇじゃん。なんで普通科しかないニジコーに来てんの? 宗教学校は山の奥だよ?



「待てって言ってるだろーが! ボサボサ頭!」



「なんすかタコ焼き頭。俺はこれから教室に入って快適に寝るという重要な使命があるんだよ」



「テメェ! 誰がタコ焼き頭だ!! 先輩嘗めてんのかコラァ!!」



コラァ!! の辺りで右腕を振りかぶり、殴りかかってきた・・・・・・が直線的過ぎる。簡単に言えばワンパターンだ。あの大魔王なら右フックから急な裏拳を繰り出してくるからな。アレに比べりゃこれはイージーモード、つまり欠伸をしながらでも避けられる。



「ハァッ! クッ! オラァ!! 畜生、何故当たらねぇ!!」



「はい、焦りすぎ一発ドーン」



「がっっっ!!?」



ワンパターンな軌道の左ストレートを避け、右アッパーを顎に食らわせる。やれやれ・・・・・・弱い癖に喧嘩売ってくんなよな。・・・・・・あれ、和人は何処だ? 先に行ったのか? えーと・・・・・・1-Bって何処なんだ?



「なあ、少し聞きたいんだが・・・・・・1-Bって何処?」



「ひゃあっ!? あ、あああそこの校舎に入って突き当たりを左にあります! すみません!!」



たまたま近くにいた女子の肩に軽く手を置いて質問しただけなのだが、何故か謝られたと同時に何処かに向かって走って行く。



「え?・・・・・・あ、ありがとうー! あと前見ろ前! ぶつかるぞー!」



まあ道教えてくれた訳だし、御礼と目の前不注意くらいは言うべきだよな。道尋ねておいて御礼無しとか、俺だったらまずぶん殴るからな。



「へ? ・・・・・・キャッ!!」



あちゃー・・・・・・一応注意はしたが時既に遅し。さっきの女の子は見知らぬ男子生徒にぶつかり、今必死で謝っている。あの子おっちょこちょいなのか? なんかもの凄くドジな子って感じがするんだが。

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