Cowardly LYNX Arbor
ある日の臆病な山猫亭。
この店は昼は食堂、夕方から夜半にかけて酒場となる。
夜もふけた頃、女将の人柄を慕っての常連客と、美味い料理を出す店と評判を聞きつけた客とで大いに賑わっていた。
此処の女将は元傭兵で、現役当時は《怒れる山猫》と異名が付くほどの実力者であった。
本人は”女に付ける呼び名じゃない”と嫌っていたが、名は体を表すと言うごとく、対戦闘での彼女の動きをよく表現できていた。
瞬発力を生かした、猫型の肉食獣のしなやかで素早い動きに、トドメを指すまで気を抜かない用心深さ。
誰が初めに呼んだのか、山猫とはよく言ったものだった。
ところが、ある依頼実行中に事故に遭い脚を痛め、現役を引退した。
それから暫くして、伴侶と共にこのダィタンスリで店を構えたのだった。
人々の活気と喧騒の中、店の片隅で傭兵風の男達が酒を酌み交わしながら話をしていた。
「また、リリス狩りに出た奴らが殺られたらしい。」
「殺されたぁ?どうやって?」
「最初は村人20名ほどで山狩りといった感じだったそうだが、長い間追いまわしてるうちにリタイア続出だったらしい。」
「へぇ、軟弱者が多いこって、わはは!」
「まあ、結局最後まで残った4人でしつこく追いまわしてたんだと。」
「4人か・・・まあイケるんじゃないの、普通?」
「ああ、たぶん大人4人だったら問題ないだろうと、諦めて帰った連中も思ってた見たいだ。」
「でも、結局・・・?」
「そう、幾ら待っても帰ってこない4人を翌日捜索したんだと。何とか見つけられたんだが、全員クビをはねられて死んでいたんだそうだ。」
「へえ、怖いねぇ・・・じゃあ今度のリリスは剣をもってるんだ?」
「2年前ジーグ村のトコで殺ったときはそんなの持ってるどころか、反撃も抵抗もしなかったそうだぜ。」
「じゃあ、別人の・・・しわざか?」
「ああ、そう言う可能性があるってことさ。もしかしたら殺し屋に遭遇しただけかもしれん。まーこれは無いだろうがな、ははは。」
「そりゃ、ありえねぇ!わはは。しっかしリリスに肩入れするなんざ、どこの大ばか者だ!」
「手配書じゃイマイチらしいが、実物は結構な美少女らしいぜ?」
「色香に惑わされて、不意打ちでバッサリ・・・なんじゃねえの?」
「わっははははは!そーかもな。」
「そうそう、お前聞いたか?」
「何がだヨ?」
「西方大陸の魔族討伐で有名なナインブレード様の国が陥落したって話さ!」
「ああ、どうやら内部の者がクーデターを起こしたらしいな。」
「近々ナインブレード様が逆襲をかけるって話らしいぞ。」
「へえ、じゃあ、囚われの姫を救出するナイトの登場ってワケだ!」
「くぅぅぅ燃える展開だなぁ!!」
男達の話は別の話題へと変わっていった。




