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Rebel

ミネルヴァの勧告を退けたレディンの噂は瞬く間に世界に広まっていった。

無論その報せはダィタンスリにも例外なく届いていた。

「まさか、あのレディン様がねぇ・・・」

「息子みてぇに思ってたのによお!!」

「最初の通達文をみたときゃ、冗談だと笑いもしたが・・・」

「あたしたちは騙されてたんだね、なんて極悪人なんだい!」

街の人々は怒りを露に口々にレディンを罵る。

彼の勇者としての活動はこの町を拠点としていた。

登録した住居もこの街に有る。

といっても今や不満や怒りを持った街の人々による投石や罵詈雑言の落書きなどの行為に廃虚同然である。

レディンへの届け物や依頼などは全てこの街へと連絡されていた。

だからこそ、街の人々はレディンが武勲をあげるたびに我がの事の様に喜び称えた。

レディンは街の自慢であり、誇りでもあったのだ。

そして、今回の一件に関しての失望振りは半端ではない。

街にとっては既にレディンは勇者ではなく、面汚し、恥さらし、重罪人の烙印を押されてしまった。

レディンにとって、あれほど愛され、あれほど敬われ、あれほど尽くして来た”世界”との決別の瞬間でもあった。

奇しくも彼は人間でありながらリリスと同等の扱いを受けることになったのだ。

既にレディンの知っている世界の姿形は、同じように見えてもその内面は白と黒が反転したものになっていた。

都市ゴーディアンでも人々の噂はそれで持ちきりであった。

神への反逆者、人類の敵レディン。

人々はかつての英雄、口々に勇者と呼び褒め称えた者を、嘆き、罵り、嫌悪する。

日々の生活でリリスの存在を軽んじて扱っていた一般市民でさえ、生まれた時より神のお告げであり、自分達の先祖が行ってきた行為でもあるリリス嫌悪の感情が、この事件により刺激される事になる。

「・・・・・・」

「そう剥れるもんじゃありませんよ。」

すれ違う街人達の噂話が嫌でも耳に入ってくる事で、仏頂面のクロノスに無表情のアプリコットが言う。

彼らはレディンとの計画どおり明け方ミネルヴァ軍を見つけると少し離れた場所で爆音を轟かせ、わざとらしく痕跡を残しながらダライガー山脈方面より遠く離れてゆき、見事ミネルヴァ軍の誘導に成功した。

流石に万もの軍勢が展開していた為に直ぐに包囲網につかまってしまったが、リリス捜索および別目的でライディンに居たことを理由にミネルヴァ軍の尋問を知らぬ存ぜぬで逃れたのだった。

開放された二人は3日かけて物資調達のためにゴーディアンへと戻っていた。

「覚悟していたとはいえ・・・あんまりな言い様なんで鶏冠に来るぜ!」

アプリコットに聞こえるほどの歯軋りで怒りを抑えているようだ。

「それでも我慢するべきです。

我々がここで騒ぎを起こし、我々が彼らの側に着いている事が知れ渡れば、彼らは本当の孤立無援となってしまいます。」

周りには聞こえないように声を落として言う。

「わかってる、わかってるよ。あいつらは町には入れないからな。

ったく、折角長い事時間かけて探した挙句、手遅れだった上に、その片棒担ぐ羽目になるとはな。

骨折り損のくたびれもうけだぜ。」

溜め息を履きながらおどけてみせるクロノス。

「ふふふ。そう言いながらも後悔はしていないのでしょう?」

「む?あったりめーだ!自分で選んで通る道だ!後悔するだけ無駄だし非建設的だ!」

「貴方には珍しい意見ですね。感心いたしました。」

「ちっ、普段どう思われてんだか・・・」

はき捨てるように言ってそっぽ向く。

「だからこそ私は貴方達が好きなのです。そして全力をもって助勢するのです。」

「ば、ばっかやろう!友達見捨てる外道にはなりたくねーだけだよ!」

一切の迷いも後悔もなく、自分が信じる者の為に自然と出る言葉にクロノスは照れながら返した。

「うだうだ、言ってねーで、早く用事すませてあいつ等と合流しようぜ!」

「はい。ふふふ。」

アプリコットは普段の無表情からは想像できない笑顔で笑ってみせた。

「なに笑ってんだよっ!先行くぞ!!」

そんな真摯な笑顔に顔を真っ赤にしながら先々進むクロノスだった。

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