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Enter a State Of War

山と山に挟まれた裾野に広がる森林地帯。

迷いの森ライディン。

都市一つ丸ごと収まるほど広大な森は街道を一つ外れると迷って出られなくなる・・・

と近隣の村々の者でも近づく事がない場所。

昔から魔女の隠れ家、悪魔が住むなどの噂は絶えず、実際に立ち入った人間のほとんどは帰って来ることはなかった。

ここにリリスが逃げ込んだことは周知の事実であったが、立ち入るものは少なかった。

リリス捜索の為に森に踏み込んだグループは5つ。

最初に、名声目当ての近隣の村の若者達17名が。

次に、団長テュポン率いるテュポン戦士団25名。

3番目に、遠く離れた西方大陸へ魔族討伐に向かう途中だったアレスマルス騎士団から野心あふれる者達8名。

4番目に、ギルド任務に志願した、珍しく女性で団長を勤めるティシフォネ率いる新鋭の戦士団フリアエの10名。

そして、最後にクロノスとアプリコットだ。

森の中心部に向かって進むクロノスの表情は険しい。

森の奥に進むにつれ独特の鉄に似た匂いが徐々に強さを増しているからだ。

「相当数の犠牲者が出ている様ですね。」

アプリコットは無表情に言う。

「わかってるって!至る所で殺り合いしてんだろ。

いったいどれだけ入り込んでやがるんだ・・・」

クロノスは苛立ちながら言う。

「この現況が彼らの潰し合いなら良いのですが・・・」

「・・・・・・」

クロノスはアプリコットの一言で更に不機嫌になった。

そう、彼はこの血の匂いの元が、レディンの仕業である可能性に苛立ちを隠せないでいるのだ。

「クロノス、先ほどから一直線にこの森の中心部を目指して進んでいる様に思えるのですが・・・?」

「ああ、このライディンの森は広大な面積のせいで街道を外れると目印もないから迷っちまう。

だが、中心部はそうでもない。中心部は結構奥深くにある為、そうそう人が踏み入れることはないんだが、あそこに行けば、どこに向かうかわかりやすくしてもらえるんだよ。」

「貴方の言い方だと、まるで道案内でもあるかのようですね。」

「まあ、そんなもんだ。とにかく急いでいくぜ。」

クロノスはそう言うとアプリコットの返事を待たずに走り出した。

アプリコットも1度頷くとクロノスの後に続いた。

この二人から少し離れた場所、山側に近い付近でテュポン戦士団とアレスマルスの騎士達との睨み合いが続いてた。

数の上ではテュポン戦士団が3倍・・・しかし、相手は騎士8名。

戦士とは基本的に多数対多数の乱戦を得意とする。

対する騎士は1対1の決闘を重きに置くが、統率の取れた集団連携は秀逸であり、また個々の能力も高い。

数の上では勝っていても総力で言えば均衡しているといえる。

お互い出来るだけ被害は押さえたい、だが、リリスを横取りされるのも腹立たしい。

膠着状態はかなり前から続き、お互い打開策を模索するのに後しばらくかかりそうだった。

一方この場所より森の中心近くの場所では惨状が広がっていた。

元は人間だったと思われる部品が至る所に散乱していた。

森の緑を塗り替える様に血で染まった赤がどこを見渡しても目に飛び込んでくる。

この森に立ち込める鉄の匂いの元凶であった。

そこで未だに赤く染め上げつづけている者達がいた。

「ちぃぃぃ、オマエほんとに人間か?違うよな、この化け物が!!」

化け物呼ばわりした相手から放たれた剣戟は仲間を盾に身をかわし、鉄の棒を一方だけ鋭く削り上げた釘のような物を投げつける。

戦闘中に相手に悪態つく、その人物はフリアエの女性団長ティシフォネだった。

10名居た団員はすでにティシフォネを入れて6名・・・。

そしてまた一人、ティシフォネの盾にされた団員は軽装な戦士には必需品である鋼鉄の胸当てごと肩から腹までを切り裂かれた。

「ぎっ」

そして短く悲鳴を上げると、その場で鮮血を噴出しながら絶命した。

こうした光景を見せ付けられた団員は尻込みし、必要以上に広い間合いを取るようになっていた。

ティシフォネが相手の攻撃をかわす為に利用できる盾はもう近くには居なかった。

投げつけられた釘型の飛び道具は、軽い金属音と共に地面に落ちた。

「・・・・・・」

と同時に相手が無言でティシフォネとの間合いを詰めにかかる。

「くっ、涼しい顔で流すじゃねぇか。だが、正攻法ばかりじゃ、俺には勝てねぇんだよ!!」

男勝りに激昂すると、間合いを詰める動作の相手に腰の手斧を投げつける。

と同時に使い込まれた重量級の両手剣を袈裟懸けに振り下ろす。

手斧を剣で弾けばその隙を、避けようとすればその隙を狙うつもりだった。

しかし、相手は神速で真横に跳躍し、手斧の軌道から外れる。

「な・・・!?」

その目で追えない動きを感覚だけで感じ取ったティシフォネが驚愕する。

しかし、すでに振り下ろされようとする両手剣はその重量が災いして体勢を戻すことが出来ない。

一度視界から離れた相手は次の瞬間再び視界の隅に現れた。

「ぐっ・・・・」

低い呻きと共にティシフォネの身体が前に崩れ落ちる。

腹に剣の柄を当てられ気絶させられたのだ。

それを見ていた4人のフリアエの団員は甲高い悲鳴を上げながらその場から逃げていった。

その場に残ったのは気絶したティシフォネと・・・

一番最初に森に立ち入った若者達と、フリアエの計20名にも及ぶ切り刻まれた人間の部品だけだ。

ティシフォネと闘っていた相手、レディンは剣を鞘に収めると、気絶しているティシフォネを抱え挙げ、森の中心部へと姿を消した。

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