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Find Trace

都市ゴーディアン。

ダィタンスリより南に10日ほど馬を走らせると現れる都市だ。

南から中央へ移動する際の中継所として賑わう町で、様々な人種が集まってくる。

クロノス達が拠点としているダィタンスリは人口1万人の街であるのに対し、ゴーディアンは人口5万人を超える都市である。

この都市でもっぱらの噂はリリスが目撃されたという事である。

ゴーディアンほどの都市ならば、毎日大量の情報が飛び交い、一般大衆の想像、虚言、誇大解釈などに気をつけねばならない。

ここ情報屋”豪胆な野鼠”も最近は大忙しであった。

ギルドより正式にリリス探索依頼が発行され、幾つものグループからの問い合わせに翻弄されているのだった。

次々と最新情報は書き換えられていくものの、その大半は虚言じみたもので、真実と思われる情報の査定に手間取っているのである。

情報屋はまず、扱う情報が真実であり、その信用が永久的に失われない事であると豪語するのは、店長ヘルメス・メルクリウス(32)華の独身女性である。

「あーはいはい、勝手にしな!」

「そうか、ありがとな!」

クロノスは満面の笑みを浮かべる。

ここは情報屋内部の最奥にある店長の執務室だ。

「しっかし、レディンを追いかけてると思えば今度はリリスかい?もう、だいぶ有名どころにリークしてるから、今ごろとっつかまってんじゃないの?」

「たぶん、まだだよ。」

「へえ、なんでわかるんだい?」

渋い顔のクロノス。

「あんたの所にレディンの情報が入ってきてないからさ。」

「何の事だい?失踪勇者とリリスに何か因果関係でもあるってのかい?」

「さあな?それを確かめるつもりさ。」

「・・・まだ、一般には出回ってない情報だが、アタイの勘が騒ぐから、あんたに教えてあげといてやるよ。」

ヘルメスは渋い顔をして話し始めた。

数日前リリスを探す為に山狩りをした付近の村者が4人首を跳ねられ殺された事。

テュポン戦士団はリリスを追う依頼をギルドから受けていた事。

そして昨日テュポン戦士団のフェパイストが何者かに殺された事。

「・・・・・・ちっ」

クロノスは隠しもせず舌打ちする。

「あんたまさかっ!!」

ヘルメスの大声に、外にいた警備の者が3名、部屋になだれ込んできた。

ヘルメスはクロノスを睨み付け、わなわなと体を震わせている。

クロノスは無反応でヘルメスを見つめ返す。

「何でも無い・・・さがっていい。」

ヘルメスは警備の者に目も合わせずに告げる。

3人は部屋から無言で立ち去っていった。

「あんたはレディンを追ってた?」

「ああ。」

「いつから・・・失踪してたんだい?」

「2年ほど前。ジーグでリリスが殺された半年後には誰も見かけなくなっちまった。」

「どうして?」

「・・・あいつはリリスを護ってる。」

「・・・・・・かはぁーーーー」

大きく深く息を吐き出すヘルメス

「なんなんだいあの坊やは!正義の味方!我らが勇者様っ!!

それが・・・なんでよりにもよって、この世の災いの元と言われるリリスに肩入れしちまったんだい!!」

怒っているのか呆れているのか、半ば笑いながら吐き出す。

「だからさ。」

「なにがだい?」

「正義の味方、我らが勇者様だから、リリスの守護になったんじゃねぇか。」

クロノスは真正面からヘルメスを見据える。

「・・・言ってる意味がよく理解できないねえ?リリスは全ての人間の、いわば世界の敵。それを護ってるなんておかしいじゃないか!」

「あいつは人間が心底好きだった。

だから、命も顧みず危険な化け物退治やワザワザ西方大陸へ魔族の討伐に参加もした。

弱いものが居れば、全力で助けようとするのが奴なんだ。」

「だから、弱い人間の・・・」

「そのクソ弱ぇ人間がリリスという”少女を惨殺”してんだろうがっ!!」

「っ・・・・・・」

クロノスの剣幕にヘルメスは言葉を呑む。

「2年前のジーグ村であいつは見ちまった。

年端も行かない少女の生首が目の前に晒されているのをよ。

村ぐるみで近所の山に居た少女を、リリスの手配書に符合したからって打ち首にして村の入り口に晒しものにしてたのさ。

あいつは村長に詰め寄ったさ。なぜ殺したのかってな。

村長は普通に答えたさ。

”山に怪しい少女がいて手配書にそっくりだったのでリリスと決めてコロシマシタ”ってな。」

「あ・・・・・・」

ヘルメスが息を飲む。

「俺もその場にいたが、あれが本当に手配書のリリスだとはとても思えねぇ。

確かに似てはいるだろうよ?だが普通の女の子だぞ?

それが無残に殺害されて、周りはお祭り騒ぎだぜ?

俺だって吐き気がしたぜ。

なんでコイツら笑ってられるんだってな。

俺だってそう思うのに、今まで弱き人々の為に身を削って護ってきたアイツはどうだったろうな・・・

俺みたいに手前ぇが良けりゃあなんて思ってる奴には、どんなに傷ついてたか想像もつかねぇや。

あいつは村から出て、俺にこう言ったんだ。

”人間が信じられなくなる”ってな。」

「!?」

「あの時はとっさに全ての人間が同じじゃねーなんて言っちまったけど、今の状況みりゃ、それが気休めだって誰だってわかるわな。」

「じゃあ、本当にレディンは・・・」

「・・・・・・・。」

「・・・ふぅ。なるほどね。急な話で本当びっくりしたよ。

あーもーなんで、こう、クソ真面目なのかね、あの坊やは!」

「ははは。レディンだからしょうがねーじゃん!」

「確かに・・・真面目だから、じゃなくて坊やだから真面目か・・・」

「・・・・・・」

「あんた、しっかりしなよ?最悪の展開になるかもしれないんだ。

親友のあんたがしっかりしないと、誰があの坊やの助けになれるってんだ!!」

「言われなくてもわかってるさ。だから、ちょっくら会ってくるわ。」

「ふん、子供のお使いみたいに軽くいうじゃないか。」

そういいながらも二人からは笑いがこぼれていた。


「もうよろしいのですか?」

情報屋の入り口横で一人待っていたアプリコットが出てきたクロノスに声をかける。

「ああ、情報は最新、更にオマケもつけてもらった。」

「オマケ?」

ひらひらと一枚の紙切れを見せた。

「何が書いてあるのですか?」

「へへ、いってみりゃ、アイツの痕跡ってやつさ。」

クロノスの持つ紙にはあのフェパイストの殺害された場所と地図が明記されていたのだった。

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