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Obstruction

20人からの集団が森の中で立ち往生していた。

「そこをどきやがれ!」

「邪魔すると只じゃすまねぇぜ、ニィちゃんよお!」

男達の激昂が響く。

立ち塞がりし者は臆しもせず、ただ一言つぶやくのみ。

「死にたくなければ帰れ。」

先頭の5人の表情が怒りに満ちてゆく。

「な・・なめてんのかテメェ!!」

「殺されても文句言うんじゃねぇぞ!!」

口々に罵声が飛び出す。

無理も無いことだった。

彼ら集団はこの近辺にリリスが居ると情報を掴んでから1週間追跡し、やっと発見した。

そして、後一歩で目的が達成されようとしている所に、見ず知らずの青年に邪魔をされ、尚且つあの一言で彼らは虚仮にされたと思ったのだ。

唯でさえ、理性的な考え方が苦手な者達だったので、その生まれた感情はすぐさま行動に表れた。

先頭の5人の誰かが不意打ち気味に弓を射ったのだ。

青年のほうは仁王立ちしている様に見えるが、すでに臨戦体制を取っていた為、難なく矢を片手で無造作につかんで見せた。

集団はその動作にたじろぐ。

殺す気で放った矢が素手で容易く掴まれたのだ。

余程の実力者で無いと到底出来ない芸当である。

「レディン殿とお見受け致す。ここはテュポン戦士団のフェパイストの顔に免じて部下の粗暴をお許し願いまいか?」

集団の中から細身の長身の男が出てきた。

レディンの前に立つ、その距離2メートル強。

フェパイストは面の開いた兜をかぶり、胴体を包む鎧をまとい、見た目は戦士というより騎士といった身なりであった。

この集団は立ち振る舞いは粗暴だが、彼らは知能レベルの低い盗賊ではなく、ギルド所属の戦士団である。

近隣の町よりギルドにリリスらしき人物がいるので本物なら排除、間違いのないよう確認してほしいという依頼が入った。

それを受けたのが彼らテュポン戦士団であった。

団長のテュポン率いる総勢70名になる、戦士団としては10指に入る大きさだ。

今回の依頼には20名の部下を率いて副団長補佐フェパイストが指揮を取っていた。

「テュポンのフェパイスト殿か・・・大した威圧感だ・・・」

レディンの眉が少しだけ歪む。

立場こそ副団長補佐を勤めるフェパイストだが、純粋な戦闘能力では団長のテュポンにも引けを取らないと云われている。

ただ、率先して自分が矢面に立ちたがる戦士気質が災いし、団体での作戦指示には不評を得ている。

「西方大陸の魔族討伐で名をはせる勇者様が、どうしてこのような場所で私達の邪魔をするのか・・・よろしければ理由をお聞かせ願いたいところです。」

口調は丁寧だが、その殺気は隠そうともしない。

「何人たりとも、ここを通すわけにはいかん。」

「ふむ。理由は聞かせてもらえそうに有りませんな。

しかし私達はどうしてもそこを通らなければなりません。

どうすればそこを通していただけるか・・・条件などございませんか?」

「あえて言うなら・・・今日一日は通すことができない。」

レディンは表情一つ変えずに言う。

「それはこちらとしても受け入れられるものではありませんな。

なにせ、急用がございますゆえ・・・どうしても通して頂けませんか?」

「駄目だ。諦めて別の道を探すがいい。」

「そうですか、ここまで申し上げても聞き入れて頂けないとなりますと・・・」

フェパイストの殺気が急速に膨れ上がる。

「力ずくで殺らせてもらうしかねぇよなぁ!!」

完全なる不意打ち。その顔は勝利を疑わない不遜な笑みを称えている。

剣を抜いた事さえ気がつかせず、大きく一歩踏み込んで上段より細身剣を振り下ろす。

自分の長身と細く長い剣を使った2メートルの間合いを物ともしない剣戟である。

しかしそれはむなしく土に衝く。

レディンは左足を軸とし、素早く体を後方回転させ、

上段からの縦の攻撃をかわしつつ、遠心力をつけた上で抜き放った剣を横薙ぎにした。

フェパイストの切り離された上半身が宙を舞う。

下半身は一歩踏み込んだ状態のままだ。

周りにいた戦士団員は瞬きするまも無くその結果を見せ付けられた。

「ほかに通りたい奴がいるならば、相手しよう。」

レディンは戦士団員に剣を突き付ける。

「う、わあああああああああ!!!」

一人が悲鳴を上げると、他も皆一斉に声を上げる。

皆が皆思うが侭に逃げ戸惑う。

理性的な撤退ではなく逃亡。

蜘蛛の子を散らす様に戦士団はいなくなった。

レディンは剣に付いた血を払うために素早く一振りすると鞘に収めた。

レディンが立ち去ったその場所には勝ち誇った笑みが残るフェパイストだった物が横たわっていた。

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