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だから

掲載日:2026/07/25

「もう一度尋ねます。」

「だからですか?」

「はい。」

「だから殺しました。」

---

パパとママはいつもけんかしてた。

パパがおこる。

ママもおこる。

ぼくはなぐられる。

いたい。

でも。

みんなそうなんだっておもってた。

くまさんだけは。

ぼくのはなしをきいてくれた。

だから。

くまさんがだいすきだった。

---

ようちえんで。

おともだちをみた。

なぐられてない。

おこられてない。

あれ。

ぼくだけなのかな。

そうおもった。

---

しょうがっこうにはいかなかった。

「学校は汚染されてる。」

ママはそういった。

だからいかなかった。

おうちで。

くまさんとはなした。

それだけが。

たのしかった。

弟が生まれた。

知らないおじさんが家にいた。

あとから。

教祖様なんだと知った。

ママはその人の言うことなら何でも聞いた。

僕も聞いた。

聞くしかなかった。

---

中学生になる頃には、父はいなかった。

新しい女と生きるらしい。

母とは歩めかったのに。

母は笑わなかった。

全部、私のせいだと言った。

「疫病神。」

その言葉だけは、毎日聞いた。

学校へは行かなかった。

代わりに働いた。

工事現場だった。

人手が足りないから。

最初は怖かった。

でも。

「ありがとう。」

「助かった。」

そんな言葉を初めてかけられた。

少しだけ。

ここが好きになった

だけど。

家に帰ると母は言う。

「財布から取ってきなさい。」

私は何度も金を盗んだ。

悪いことだと知っていた。

それでも。

従うしかなかった。

弟の世話も私の仕事だった。

あの子だけは。

普通に育ってほしい。

そう思っていた。

---

高校生になった。

アルバイトを掛け持ちした。

家に金を入れるため。

そして。

初めて友達ができた。

笑った。

遊んだ。

楽しかった。

本当に。

楽しかった。

ある日。

みんなで愚痴を言い合った。

「親が勝手に習い事決めるんだよ。」

「お小遣い一万円しかない。」

みんな笑っていた。

私は笑えなかった。

その日。

初めて知った。

私の人生は。

愚痴にもならないんだと。

----

帰宅すると。

母はまた叫んでいた。

「私は不幸!」

「私はなんでこんな人生なの!」

「全部あんたのせい!」

「疫病神!」

何度も。

何度も。

聞いた言葉だった。

私は。

初めて口を開いた。

「違う。」

母は黙った。

次の瞬間。

聞いたこともない言葉を叫び始めた。

意味は分からなかった。

でも。

もう。

聞きたくなかった。

机の上にあったナイフを握る。

そして。

突き刺した。

---

「もう一度尋ねます。」

「だからですか?」

「はい。」

「だから殺しました。」

「だから。」

普段、何気なく使うこの言葉。

その一言の裏には、どれだけの時間や出来事が積み重なっているのでしょうか。

この作品は、一つの「だから」に至るまでの人生を書きました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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