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バッ!
司教シャズと神官フィアトルが揃って、騎士に向け頭を下げた。
「「すまなかった‼︎」」
二人同時に謝罪を口にする。
「貴公から最初に婚約の申し入れがあった時から、ラルカリースには伝えていた……だが、本人が拒んだのだ。『自分みたいに死に急ぐ者よりも、末永く歩んでいかれる伴侶を見つけて欲しい』と……貴方を想ってのことだ。孤児院への寄付も貴公からではないかと気付いていたようだ」
名を明かさぬ貴族から多額の寄付が毎月、従者によって孤児院へ届けられていた。
その馬車に付いていた紋章……騎士クレイエヴァーの剣の柄に彫られていたものと同一の紋様。
司教も神官フィアトルもそれを目にして、確信していた。
だが、騎士と聖女の面会を阻止し続けた。
貴族の機嫌を損なえば、寄付を切られてもおかしくないと分かっていても、聖女ラルカリースの身を案じ、大切に護り続けていたのだ。
「あんたには心から感謝しているよ」
「フィアトル殿よ、妻の実家を助けるのは当然だ」
「え、あ、うん……まぁ、いいや」
無駄なツッコミだと諦めた神官は呆れたように笑った。
「下手な男に惚れて治癒能力を悪用でもされたら、ラルカリースの命は……だが、出逢ったのがあんただった……相手があんたで本当に良かったよ」
「……フィアトル殿もラルカを可愛いと思ってるんだろ?」
「あぁ、もちろん王国一可愛いさ……妬かないのか?」
にやりと神官が笑う。
「妬けるなぁ……絶対に代わることが出来ない存在だから。二人は……兄妹だろ?」
「……ちっ、なんだ気付いてたのか」
「同じ銀髪で、雰囲気もどことなく似てるからな……はっ! フィアトル殿! お義兄さまと呼んでいいか?」
「呼ぶなぁぁぁぁぁーーっ!」
「ひゃぁぁっ!」
魔物に襲われた際の擦過傷の治療が終わり、ふらふらと歩み寄っていた聖女は、神官の絶叫に驚き、大きくバランスを崩す!
「危ない!」
がしっ!
「ク、クレイ様!」
「ラルカ! 新婚旅行はどこに行きたいかい?」
「ったく、またあんたは……」
騎士と神官のやり取りを見て、聖女は騎士の腕の中で笑った。
「貴方と一緒ならどこへでも‼︎」
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