雪山で女神の雫がきれいに咲くのに必要なのは……
「寒いわ、アメリ」
「本当、寒いです」
「疲れたー」
「寒いわ、アメリ」
「本当、何とかして」
「おなかすいたー」
「雪山を登っているのだから当然です!」
私は同行した令嬢たちに言い放つ。
三人はやたらうるさく文句が多い。『迷惑をかけない』そういう約束じゃありませんでしたっけ?
ことの発端は夏期休暇が始まる前に私と友人が学院の中庭で休暇の予定を話していたとき。
「私は一度領地に帰ってお母様の実家へ遊びに行くの。アメリは」
「そうね、私は北方高山へ登って薬草取ろうかしら。今の時期、雪が積もっている山はあの山しかないからね。お店で買うと高いから自分で取ってこないと」
そんな話をしていた時、割り込んできたのが三人の令嬢だった。
「あら、あなた例の雪山へ行くのね」
例のと言われても分からないでいると、一番偉そうな令嬢が偉そうに教えてくれた。
「あら、ご存知ないの。雪山にだけ咲く女神の雫という花のことを」
「女神の雫は知っているけど大した薬効はないよ」
「あら、本当にご存知ないのね。この国のある大陸の隣の隣の大陸で女神の雫が奇跡を起こしたのよ。王太子が平民の少女を見初め婚約者にしたの。その奇跡の出会いを叶えたのが女神の雫よ。出入りの商人が世界中で商いをする行商人から直接聞いた話よ」
その話が広まり令嬢の間で女神の雫が求められているらしい。
我が国の王太子は婚約者がいるが第二王子はまだいない。だから女神の雫を手に入れようという気合がみなぎっている。
私は親の許可が取れたらいいよと言ったら、許可を取ってきた。彼女たちの親は何考えて許可したのか。子爵男爵といえど貴族なのに。
うるさい三人と共に女神の雫の群生地に着いた。そこには先客がいた。
彼らはナイフを持ち私たちに襲いかかってきた。
私以外の三人は絶命した。処理する。
「アメリお疲れ。これでまた何年か大丈夫だな」
女神の雫は数年に一度、特別で新鮮な肥料を与えないと花を咲かせない。
私たち薬師協会は肥料を与える役割がある。女神の雫自体に薬効はないが他の薬を作る時に混ぜると、その薬の効果が強くなる。
数年あれば都合のいいうわさを流し、肥料を見つけることができる。
娘が帰ってこないと親たちが騒ぐ頃にはアメリという人間は消えている。もともと存在しないのだから。
もちろん協会だけでこんなことはできない。もっと大きい力を持っている組織が関わっているが私は知らない。
肥料にならないように仕事をするだけ。