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28話 おわりくん

「皆んなの事、ずっと見てたよ。利子川くんとシラちゃん大活躍だったね。コエクラブの2人もナイスアシストだったよ」


 カゲリは皆んなの顔を見ながら手放しで褒める。


「ありがとうございます!」


「利子川さんが大活躍してくれたお陰で上手くいきました!」


「それは良かった。そうそう、家で倒れた子が元気になったから連れて来たよ」


「あっ!あの子元気になったんですね!良かった……!」


「顔がやつれて青白くなってたから戦ってる最中もずっと心配してたんだよ!元気なって本当に良かった……!」


 私と利子川はあの襖から現れた少女の無事を聞いてホッと一安心した。


「ツヨちゃん、おいで」


 カゲリが謎のニックネームで呼ぶと、屋上の扉が再び開いた。その扉から人影が現れ、屋上にゆっくり姿を現した。



「…………えっ?」



 その場に現れたのは高身長でピアスだらけの物凄く派手な人物だった。


 全体的に派手で大量のピアス。目は大きく見開いており、長い髪を後ろで縛り上げ、刈り上げた部分が見えている。


 とにかく、雑音達と同じ制服を着用した物凄い派手な人物だった。


「だ、誰……?」


 カゲリが連れて来た人物が誰なのか分からず混乱する私。


「山彦!無事だったんだね!」


「ツヨシちゃん!格好を元に戻したんすね!」


 だが雑音達はピアスの人を見て大喜びしながら笑顔で駆け寄った。


「山彦……?」


(そう言えば、屋上に来た時に雑音さんがその名前を言ってた気が……雑音さんの仲間なのかな?)


「カゲリさん、あの人は一体……?」


 利子川はピアスの人の正体をカゲリに尋ねた。



「何言ってんの?あの人がさっき襖から現れた少女だよ」



「えええーーーっ!?!?」



 カゲリから派手な女性の正体を聞いた私と利子川は物凄く驚いた。


「あの時と雰囲気めちゃくちゃ変わってるじゃないですか!?」


 どうやらあのピアスの人こそが、先程私達の前に現れた『やつれた少女』だったらしい。


「あの子達はごく普通の女子高生の振りして、この七不思議が居座る廃校に侵入したみたいだね」


「そうだったんだ……」


 最初見た時は何だか儚げな少女という雰囲気だったが、今の山彦には力強さしかない。



「貴方達が夢居さんと利子川さんですね」


 カゲリと話をしていると、雑音達と会話をしていた山彦が私達に話し掛けてきた。



「俺の名前は山彦強子やまびこつよし。倒れた俺の代わりに七不思議デスマッチに参加してくれたと聞きました。更に七不思議を全て倒してくれたと……本当にありがとうございます」


 山彦は私達に丁寧に御礼を述べてくれた。物凄く礼儀正しい人だ。


「所で山彦、途中で消えたけど今まで何処に行ってたんだい?」


「カゲリさんとこに世話になってました。介抱してくれた上に、最後の七不思議まで捕まえてくれたんです」


「最後の七不思議だって!?」


「マジっすか!?」


 山彦から報告を聞いた雑音達は目を丸くして驚いている。


「あの、雑音さん……最後の七不思議って何ですか?」


「ああ、夢居達はこの学校の七不思議を全部知らなかったんだったね」


「ならば教えてあげるっす!」


 そう言うと、打縁と雑音の2人は最後の七不思議について語り始めた。


「実は此処の七不思議を全て知ると、最後にとんでもない事が起こると言われてるんす」


「あの七不思議達を裏で操っていた存在……それは蜘蛛のようにも、子どものようにも見えると言われている……」


「えっ……!あの七不思議を操っていた存在がいたんですか!?」


「奴の名前は『おわりくん』。かつてこの学校に通っていた生徒が異次元に迷い込み、長い月日をかけて恐ろしい存在になったと言われる恐ろしい妖怪らしい……この一般人の魂回収騒動もコイツの仕業だとあたしは睨んでるよ」


「話からして明らかに凄そう……雑音さん、そのおわりくんは人間がどうにか出来る存在なんですか?」


 おわりくんの話に不安になる利子川。


「大丈夫、2人が大活躍してくれたお陰で無事におわりくんを捕獲できたから。話し合いも済ませたよ、おわりくんはもう争う気は無いってさ」


「ええっ!?ホントっすか!?」


「本当だよ。ほら」


 カゲリはスカートのポケットを探った。


「はい」



 カゲリのポケットから少年の顔が出てきた。



「うわあああああ!?!?」


「なあっ!?何してんだいあんた!?まさかあんた……!?」


「首切っちまったんすか!?!?」


「3人ともよく見て!カゲリさんのポケットから顔が出てるだけで身体は無事だよ!」


 悲鳴を上げる私と雑音達と、それを落ち着かせようとする利子川。何とも言えない顔で見守る山彦。地獄絵図である。



『あ、あの……ごめんなさい……』


 カゲリのポケットから出て来た顔のみの少年は私達に謝罪をする。


「意外とあっさりと謝るんだ……」


「確かおわりくん本人は人間をどうこうできる力は無かった筈っす。彼は作り出した妖怪でしか相手を襲えないんすよ」


「成る程……今は妖怪がいないからおわりくんは何も出来ない……と」


「そんな所だろうね。でも、だからこそおわりくんの周りには沢山の妖怪がいる筈なんだよ。まあ、それも全部カゲリさんが何とかしたんだろうけどね……で、あんたがおわりくんだね?何でこんな事したんだい?」


『……此処には僕以外に殆ど誰も居なくて……』


 おわりくんはそう言いながらカゲリのポケットから出てそっと床に着地した。見た目はごく普通の少年だが、纏う雰囲気からして明らかに人間では無い。


『僕、寂しかったから……七不思議を作って操って、外にいる魂を持ち去ったんだ……この学校を人だらけにしたくて……』


 どうやら人間を憎んだとかそういった事から起こされた犯行では無いらしい。


『おわりくんだけが悪くない!私も悪い!!』


『そうだ!私も同罪だ!』


 すると、屋上の隅で倒れていた七不思議の中からボロボロの花子さんと割れて手のひらサイズになった鏡が飛び出してきた。


『花子さん、鏡さん……』

 

『此処が賑やかになったらきっと楽しいねって聞いて、私もそう思うって……!だから私は自分の意思で参加したの!ついでにイタズラしちゃったけど……だから、イタズラした私の方がおわりくんよりもっと悪い!』


『いや、元はと言えば私が悪いんだ……人は複製したものより本物の方が生き生きしてると、そんな事を言ったばかりに……!』


「……」


 花子さんと鏡はおわりくんを庇う。


「……あんた達、もう2度と人間の魂を奪うような真似はしないね?」


 雑音は真剣に尋ねる。


『うん……』


『私もうイタズラもしない!人だって、鏡でその辺の人を複製すればいいし……つまんないけど』


『人間を襲わなかった頃の生活に戻す……だから、せめておわりと花子の命だけは勘弁してくれ……!』


 3人はとにかく猛省し、私達に向かってひたすら頭を下げる。



「…………3人とも、ツラを上げな」


 

 雑音に声を掛けられ、3人は雑音に顔を向けた。



「……今回は見逃す。2度とこんな事するんじゃないよ」



『あ……ありがとうございます……!』



 どうやら雑音はおわりくん達を許す事にしたようだ。私達は人間を助けるという指示で来たので、おわりくんをどうこうする気は一切無い。なのでこの処遇でも文句は一切無かった。


「これにて一件落着……ってとこかな?いやー大変だった」


「カゲリさんお疲れ様です」


 私達も来た道を戻ってカゲリの家へと帰る。


 これにて、七不思議デスマッチはようやく幕を閉じたのだった。



 後日……


『ごめんくださーい!』


 駄菓子屋で店番をしていると、店内で人を呼ぶ子どもの声が聞こえてきた。


「はーい……あっ!花子さん、おわりくん!」


 声のした方に行くと、ランドセルを背負った花子さんとおわりくんの姿があった。


「2人とも久しぶり!もしかして2人は学校帰り?」


『うん!カゲリさんが「妖怪でも入れる学校があるよ」って、暗がり小学校を勧めてくれたんだよ!』


『そこなら友達沢山出来るから、って……だから、今はもう寂しくないよ』


「それは良かった」


 どうやらカゲリさんはおわりくん達が寂しくならないよう、この冥界の学校を勧めたらしい。


『そうそう!夢居ちゃんにはデスマッチの時に迷惑掛けちゃったから、お詫びに私達の遊びに誘いに来たよ!』


「えっ?」


『うん、僕達が夢居さんにしてあげられる事って言ったらこれくらいしか思いつかなくて……でね、これから鏡さんも含めて3人で缶蹴りするんだけど……夢居さんもどうかな?』


「あー……ごめんね、今は駄菓子屋さんの店番頼まれてて……」


「シラちゃん、行ってあげて」


「うわっ!?カゲリさんいつの間に!?」


 私が遊びの誘いを断っていると、真後ろから現れたカゲリに花子さん達の遊びに付き合うよう言われた。


「お店は私が見るから、シラちゃんはそのまま遊びに行って」


「わ、分かりました……」


『やったー!夢居ちゃん、これからも宜しくね!』


 こうして私に、不思議な遊び仲間が3人も増えたのだった。

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