1話 あの子との再会
私の名前は夢居白、今年で高校1年生になる。
軽く読書を嗜む程度の趣味しかない私だが、そんな私は今……
「夢居がいたぞ!!」
「逃すな!!」
謎の強面集団に執拗に追われていた。
あれは数十分前……
学校が終わり放課後、友達と別れていつものように1人で下校していた時の事。普段通りに住宅街を歩く私の前に1人の男性が現れた。
「……お前、ユメイシラだな?」
「人違いです」
見ず知らずの強面の男性に声を掛けられ、私は咄嗟に嘘をついた。もし彼が本当に私を必要としていても、初対面の相手にお前呼ばわりする奴と会話する気は一切無い。
「いや、お前がユメイで間違いない。とりあえず俺について来い!」
だが相手は諦めるどころか私を夢居本人だと断定し、何処かへと連れて行く為に無理矢理腕を掴んできた。
「危なっ!?」
ずっと相手を警戒していた私は相手の手を素早くかわし、相手の脇をすり抜けて全速力で逃げ出した。
「……あっ!?待てコラァ!!」
相手は数秒遅れて私の後を追い始めたが、私も鞄を持ったまま必死にその場から逃走する。鞄からスマホを出して助けを呼びたいが、そんな事をしている余裕は一切無い。
(とりあえず家に……!)
とりあえずこのまま道を進んで親が居る家に帰宅し、後で警察に電話しよう。そう思っていたが……
「夢居が来たぞ!!」
そんな自宅の前には強面男性の群れがたむろしていた。
その中に私の遠い親戚『列戸』の姿もあった。
「シラ、お帰り。ようやく帰って来たね」
列戸は微笑みを浮かべて私を迎える。最悪だ。
「昔からの仲で気恥ずかしいのは分かるけど、そろそろ僕のプロポーズを受けて欲しいな」
この例戸という男は、数年前からずっと私にプロポーズを続けているストーカー男だ。
周囲の人達にある事無い事言いふらして外堀を埋めたり、勝手に私の後を着いて来ては人の多い場所で彼氏ヅラしたりと、とにかく私と結婚したいが為に私に大迷惑をかけまくる最低の男だ。
「嫌です。何度も言いますが、貴方にはきっと私以上に良い人が現れる筈です。私の事は諦めて下さい」
「またそうやって謙遜するんだから……大丈夫、僕が心に決めている相手は君だけだからね」
「結構です!!」
私はその場で叫んで拒絶し、来た道を引き返して細い路地に入った。
「やれやれ、相変わらず素直じゃないんだから……皆んな、素直になれないシラを捕まえるのを手伝ってくれないか?」
「勿論です!!」
「絶対捕まえます!!」
今まで散々付き纏ってきた列戸だが、今回は本気で私を捕まえに来ているようだ。これはマズいかもしれない。
(家族と友人は完全に列戸に言いくるめられてるし、多分警察に行ってもまともに相手にしてくれない……)
前に一度だけ警察に行った事があるが、あの時は警察官が列戸に完全に言いくるめられたせいで失敗に終わっている。
(この町……いや、この世界には私の味方は1人も居ないみたい……)
今現在は近所にある森に向かって走っているが、この先にあるのは川。川はそこそこの深さがあるし、渡っている間に相手に完全に追いつかれてしまう。
(……それにしても、さっきから誰も追いかけて来れてない?私はそれなりに足は速いけど革靴だし鞄持ってるし、こんなにハンデがあるのに誰にも追いつかれてないって少しおかしい気が……)
私が違和感を覚え始めた辺りで、ついに森の奥にある川に到着した。
「……あれ?この川、こんなだったっけ……」
目の前に広がる川は浅くて異様に広かった。
私の記憶違いで無ければ川はそんなに大きくない。それに向こう岸には森が広がっていた筈だが、何故か森どころか木の一本すら見当たらない。
しかも辺りはいつの間にか暗くなっている。真っ暗だが周りの様子をはっきりと視認する事が出来た。
(向こう岸に誰かいる?)
川の向こうの広い河原で、1人の子どもが静かに佇んでいる。
真っ黒のワンピース姿の、無表情でこちらをじっと見つめる謎の少女。私はこの少女に覚えがあった。
「……カゲリ、さん?」
「シラちゃんやっほ」
彼女の名前はカゲリ、私が小学生だった頃に森で遭遇した謎の女の子だった。