16話 暗がり学校
学校の敷地内に入った途端、周りが一瞬で明るくなった。目の前の学校が朝日を浴びて明るくなる。
「おー、平和だねー」
「まるで普通の学校ですね……」
学校は生徒で賑わっていた。
楽しそうにお喋りしながら学校に入っていく生徒達、ユニフォームを来て朝練する部員達……側から見たらごく普通の日常風景だ。
「皆んな人型だ……」
周りにいる学校関係者と思われる人達は全員人型だった。パッと見ただけでは人間か人外か分からない。
「この学校は主に、人間の事を学びたい怪異が通ってるよ。最近は人間社会で暮らすのが難しい人間も受け入れてるみたい」
「皆んな人の姿をした怪異なんですか?」
「この学校では皆んな人間の姿で授業受ける習慣があるだけで、正体は皆んなバラバラだよ。動物だったり妖怪だったり」
「へぇ……皆んな人間の姿になれるんですね……」
「暗がり学校に通う条件の中に「人間に化けられる」ってのがあるからね」
カゲリと会話をしていると、学校から先生らしき男性が歩いて近付いて来た。
「おはようございます。カゲリさん、その隣に居る貴方が夢居白さんですね?」
彼は丁寧な物腰で私達に挨拶をした。明るい髪色の長髪で、とても賢そうな人物だ。
「うん、この子が今日からこの学校に通うシラちゃんだよ」
「初めまして、夢居白です。今日からこの学校にお世話になります、宜しくお願いします」
「……このように、シラちゃんは物凄く良い子だよ」
「とても礼儀正しいですね。大変素晴らしい事だと思います」
「えへへ」
何故カゲリの方が照れているのだろう。
「さあ、2人ともお入りください」
「失礼します」
「わー懐かしー」
先生らしき人と一緒に校内に入り、職員室の前へと移動した。
「さて、わたしは先生とだいじな話してくるね。シラちゃんはそこで待ってて」
「分かりました」
そう言うとカゲリは、先生と一緒に職員室へと入って行った。
(……とりあえず練習しとこ)
私は風操作の練習をする為に、ポケットから紙手裏剣を1つ取り出した。が、視線を移した際に遠くの曲がり角からこちらに顔を覗かせている人物が目に入った。
「…………」
そこには大きな眼鏡をした男子学生がいた。好奇心混じりの真剣な表情で、じっと私を見つめている。
「?」
私が相手に視線を向けると、相手は慌てて顔を引っ込めてしまった。
(まあ、転校生の存在はそれなりに気になるよね……)
なんて考えていると、職員室の扉が空いてカゲリと先生が姿を現した。
「……だからね、もし私が爆発四散したら『爆弾の解除に失敗した』可能性もあるって思っといて」
「……念頭に置いておきます」
「2人とも何の話してるんですか?」
何をどうしたら先生との大事な会話で爆発という単語が出てくるのだろうか。
「何でもなーい。じゃ、わたしはこれで失礼するよ」
「はい」
カゲリは無表情のまま私に軽く手を振ると、出入り口を通って学校から出て行った。
「そうだ、私の自己紹介がまだでしたね。私の名前はウズラ、担当科目は『社会』と『精神術』、今日から夢居さんが入る1年1組の担任の先生も勤めています」
「ウズラ先生、宜しくお願いします」
1組担任のウズラ先生は真面目で礼儀正しい人物のようだ。生徒への接し方はとても丁寧だが、距離を置いて接している印象も持った。
「そろそろ朝の会が始まる時間ですね。では、これから夢居さんが通う1年1組の教室に案内しますね。私の後に付いて来てください」
「はい」
そう言ってウズラ先生は私の前を歩き始めた。が、そこで先生から何かがこぼれ落ち、カシャンと音を立てて床に落ちた。
「先生、何か落とし……」
私はしゃがんで先生が落とした物を拾い上げた。
「…………ヒーラーのアイコン?」
それは『レジェンド・ドラゴン』と言うファンタジーゲームの、『ヒーラー』の職業を示すアイコンのキーホルダーだった。
「……レジドラをご存知で?」
「……一応クリアする程度には遊んでました……あの、これ……」
私はキーホルダーが付いた鍵を先生に手渡した。先生は無言で受け取った。
「…………………………………………行きましょうか」
「どうでもいいですけど沈黙長いですね」
移動中、ウズラ先生はずっと私に何かを話したそうにしていた。




