14話 風の使い方
「じゃあ早速、風の力の使い方を教えるね」
カゲリは私から少し離れた所に立つと、フリスビー片手に本格的な指導を開始した。
「まず先に、風を動かす感覚を掴む事から始めるよ。とにかくこのフリスビーを投げて、風の流れや感覚を理解してみてね」
「このフリスビー、普通のフリスビーじゃないんですか?」
「形はフリスビーだけど中身は全然違う。これは鎌鼬の毛やカラスの抜けた羽とか色々混ぜて、最後に鴉天狗の力を込めて作られた、まさに風操作専用の円盤って感じのやつだよ」
「何だか凄そう……あの、かまいたちとカラス天狗って妖怪ですよね?この世界って妖怪が本当に居るんですか?」
「少なくとも冥界にはいるよ。はい、これ持って」
カゲリはさらっと衝撃的な発言をすると、明らかに凄そうなフリスビーを簡単に私に手渡した。
「道具が補助をしてくれるから風の威力も物凄く上がる、だからこのフリスビーは風の操作を練習するには持って来いなんだよね。じゃ、とりあえずそのフリスビーを何度も投げてみよっか」
「分かりました!では早速……それっ!」
私はフリスビーを構え、風を何となく意識しながら、遠くに向かって思い切りフリスビーを投げ飛ばした。
「…………」
私は想像以上によく飛ぶフリスビーを凝視した。全ての神経を使うような感覚でフリスビーを注意深く観察し、落ちたらもう一度投げ、観察しては投げる行為を何度も繰り返した。
「…………あっ!」
「シラちゃんどうしたの?」
「今、フリスビーが手から離れた瞬間……今まで感じた事が無い妙な感覚が……」
「だるまさんが転んだ」を使用した時とはまた違う感覚が身体の中に一瞬だけ現れた気がした。
「多分それが風を操作する感覚だね。その感覚を忘れないようにもっと投げてみて」
「はい!」
「で、風の操作方法が分かったら、フリスビーを操作して風の基本的な動かし方を学んでみようね」
「はい!」
私は僅かに捉えた感覚をはっきりさせるため、フリスビーを更に投げ続けた。
感覚は次第に鮮明になっていき、ついに……
「カゲリさん!見て下さい!ついに出来ました!」
「おーっ」
私の手から離れたフリスビーが上空をずっと飛んでいる。細かい操作はまだまだだが、とりあえず自らの力で風を操作してフリスビーを長く飛ばす事に成功した。大雑把だが左右に曲げる事も可能だ。
「よし、このまま私の手元に……あだっ!?」
フリスビーを大雑把に操作し、カゲリのようなフリスビーキャッチをしようと試みた……が、勢いがつき過ぎたフリスビーは私の手に派手にぶつかってしまった。
「あたた……勢い強過ぎた……」
私はジンジンと痛む手をさすりながら、地面に落ちたフリスビーを拾い上げた。
「でも手元に戻ってきたよ。中々やるじゃん」
「ありがとうございます。今後も風の操作はフリスビーを投げて練習すればいいですかね?」
「それと、折り紙を使った練習も入れるのかいいかもね。さて、フリスビーを使った練習はここまでにしよっか」
「カゲリさん、ありがとうございました」
「うん。とりあえずまずは、あの木を倒す事を目標に頑張ってみてね」
カゲリは公園の外にある野生の枯木を指差した。木は完全に枯れているが中々の太さがあり、ちょっとやそっとじゃ簡単には倒れないだろう。
「あの枯れた木ですね?一回だけ試しにやってみていいですか?」
「いいよ」
「よーし……それっ!」
私はフリスビーを風に乗せて投げ、枯木に向かって勢いよく飛ばした。
(フリスビーを直接ぶつけるんじゃなくて、周りの風をぶつけるイメージで……風を1つに纏めて、撃つ!)
風を強めていくにつれ、フリスビーの周りからゴオゴオと強い風の音が発生し、次第に大きく力強くなっていく。
「初めてにしては中々凄い風だね。でも、あの木を完璧に倒すには最低でも10ね……」
カゲリが私に何か言い終える前に、強風を纏ったフリスビーが木に思い切り激突した。
『ドン!!』と物凄い音が響き、カゲリは話を止めて音のした枯木の方を見た。
フリスビーの纏う風がぶつかった枯木はボロボロになり、幹が少し抉れていた。
「あー、最初から倒木は無理だったみたいです……でも、道具ありきにしても最初からコレは中々いい感じでは?」
「…………最初からコレは上出来だと思う」
「本当ですか!?」
「うん。これなら1年以内……いや、もっと早めに木の1本は倒せるようになるかも」
「よしっ!これからも頑張ります!」
「向上心があって大変宜しい。じゃあ、家に帰りながら折り紙の使い方も説明したげる。多分、これからの学校生活で使場面は沢山あるかもしれないから、しっかり聞いてね」
「はい!」
フリスビーにより風の使い方を理解する事が出来た。後は練習あるのみだ。怠けないよう、しっかり頑張ろう。
「…………上出来ってレベルじゃないって」
「えっ?どうかしましたか?」
「ううん、なんでもない。シラちゃん、これからも力の使い方をしっかり教えてあげるからね」
「はい、宜しくお願いします!」




