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12話 紅ン暴の謝罪

「よし、上出来だ」


「いえーい、やったやった」


 校庭のど真ん中で気絶した髭葉を前に喜ぶカゲリと紅ン暴。


「急ごしらえだったけど上手くいったね」


「ああ。急だったが、この場にいる全員のお陰で何とか髭葉を止める事が出来た。夢居、初めてにしてはだいぶ上手かったな」


「お役に立てたようで良かったです。それにしても、相手に恐怖を与えると、あんなに力が通用するようになるんですね。私のだるまさんが転んだもしっかり効きましたし……」


 場の空気次第で状況が変わる。場が悪いと「だるまさんが転んだ」で相手を止められなかったが、場が良いと振り返る動作無し、かつ相手が微動だにしなくても相手をピッタリ止められた。


「場の主導権を握るのは物凄く大事な事だからね。まあ兎にも角にも、人の目に見えるシラちゃんが居てくれたお陰で何もかも上手くいったね。シラちゃん、本当にありがとね」


「上手くいって良かったです」


 急だったが、カゲリの考えた演出と紅ン暴の迫真の演技も合わさった結果、思惑通りに髭葉を怖がらせる事に成功した。


「奴もこれに懲りて悪事をやめ、学校の怪談騒ぎも収まるだろう。カゲリ、夢居、本当にありがとう」


「どういたしまして。今後とも相談屋をごひいきにー」


「事件が無事に解決して良かったです。所で……この後、この人はどうするんですか?」


 私は足元に転がっている髭葉を見つめた。


「とりあえずこのままにする。あとはこいつの夢に毎晩出て、警察に出頭するよう呼びかけるつもりだ」


「おぉ……それは効果ありそうですね……」


 先程の紅ン暴の怒号は、後の展開が分かってた私でも恐怖を覚えるものだった。そんな紅ン暴が毎晩夢に出たらきっと髭葉も猛省するだろう。


「じゃ、この辺で解散って事で」


「うむ、後日また成功報酬を持って行くとしよう」


「紅ン暴さん、おやすみなさい!」


「おやすみ。また今度」


 私は紅ン暴に別れの挨拶を済ませると、カゲリの後をついてあるいて冥界へと戻ったのだった。



 後日。髭葉は自ら警察に出頭し、これまで犯した罪を全部告白し、そのまま逮捕されたらしい。その際に犯行に協力させられた先生の不倫もバレたようだ。


 その際に学校中に仕掛けられたカメラの映像も回収された。


 勿論そこには私とカゲリが学校に忍び込んだ日の映像もあった筈だが、カゲリが映像に映る私だけを全て消してくれたとの事だ。そんな手間を掛けるくらいなら、映像そのものを消した方が良いのではと私は思った。



 数日後……



「邪魔するぞ」


「あっ、紅ン暴さんこんにちは!」


 相変わらず誰も来ない駄菓子屋、その店番をする私の元に紅ン暴さんが再び訪れた。


「今日は相談屋に依頼ですか?」


「いや……今日は夢居に謝りに来た」


「えっ、私?」


 紅ン暴から出た言葉に私は目を丸くした。


「ほら、数日前の学校で髭葉の事で揉めただろう。夢居、あの時は怒鳴って悪かった」


 紅ン暴は私に向かって深々と頭を下げた。


「いえ、大丈夫ですよ。最初はどうなるかとは思いましたが、最終的には丸く収まりましたし……」


「だが髭葉の言葉に違和感を感じ、そこから偽名やら違和感やらに気付けた。なのにワシときたら……しかも、下手したらあの場で2人を……!謝罪だけでは済ませられん!」


「紅ン暴さん……」


(もしあの時、カゲリさんが説得してくれなかったらどうなってたんだろ……)


 どちらにせよ良くない事は確かだ。


「だからせめて、罪を償う為に何かしてやれる事は無いだろうかと思ったのだが……」


「罪だなんてそんな……最終的に未遂に終わったんですから……」


「いや!夢居が許してもワシが許せん!!」


 どうやら紅ン暴は償いをしないと気が済まないようだ。


「えーっと、それなら……稽古をお願い出来ますか?」


「稽古か?」


「昨日カゲリさんが言ってたんです。紅ン暴さんは実技方面では中々の実力を持ってる、力ならわたし以上に凄いかも……と。なので「だるまさんが転んだ」を教えてくれた時みたいに、あの不思議な力の使い方を詳しく教えて欲しいんです」


「分かった。だが、教える前に一つ質問する。夢居はその力、将来何に使うつもりだ?」


 紅ン暴は真剣な表情で私を見つめる。


「一言で言えば自己防衛……ですね。私を追いかけて回し、果てには周りにまで迷惑をかける奴から身を守る為です。後は冥界で平和に生きる為、カゲリさんの仕事を手伝う為。とにかく自分の身を守る手段が欲しいんです」


「…………うむ、どうやら全て本当のようだな。分かった、これからは私が夢居に稽古をつけるとしよう」


「ありがとうございます!」


「よし、では明日から毎日……と行きたい所だが、私にも用事がある以上は流石に毎日顔を出すような真似はできん」


「流石に毎日は遠慮したいですね……私も自分の時間が欲しいですし、仕事もありますし、カゲリさんとも時折ですが稽古しますし……」


「あのカゲリも夢居に稽古をつけてくれるのか?」


「はい。と言っても、この冥界を散歩したり雑談したり……まずは感覚を理解する事だと言ってました」


「その通り、力を使う前に感覚を掴むのは大事な事だ。カゲリは主に、精神術を中心に教えるつもりだろう」


「成る程……あっ、そうそう。私、これから『暗がり学校』にも通う事になってるので、更に時間が限られてきます」


「む?夢居、暗がり学校に行くのか?」


「はい。せめて高校は卒業しておきたいと言ったらカゲリさんが紹介してくれたんです。だから学校と仕事と、自分の時間の事を考えたらあまり時間は取れないなと……」


「それもそうだ。私にもプライベートというものがある、お互いに出られる時間を決めてから執り行うとしよう」


「ありがとうございます!」


 こうして私は紅ン暴に稽古をつけてもらう約束をしたのだった。少しでも力をつけて身を守る為、全力で頑張ろう。

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