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9話 警備員の本性

「……村上さん」


「はい?」


「さっきからずっと独り言呟いてるけど……それ何?」


 校内を探索中、会話がひと段落した所で突然警備員が私の内緒話について指摘してきた。


「えっ?いや、これは……」


「もしかしてそれ、念仏とか魔除けみたいなやつ?」


「えっ、あー……多分そんな感じですかね……」


 どうにも説明出来そうにない私は、とりあえず相手に話を合わせる事にした。


「あーやっぱそういうのか。君、自称霊能者だったりする?」


「えっ?」


「そう言うのやめた方がいいよ。てかそれを指摘してくれる友達とか居ないの?それとなく注意とかされなかった?」


「はぁ……?」


「いや、もう君の性格を修正するのは無理って判断されてるのかな?1人でこんな所来るぐらいだもんね。村上さんって人の言う事聞かないタイプでしょ」


「…………」


 突然相手から放たれた発言の数々に、私は思わず無言になってしまった。


「うわ、この人デリカシーゼロじゃん。紅ン暴さん、この人本当に好青年なの?」


「……思い返したら、時折場の空気が凍る発言をしていたような気が……だが、こんなに言うような奴では……いや、もしかするとワシの預かり知れん所ではこんな発言ばかりしていたのか……?」


「うーん、これはかなりヤバい……あっ、シラちゃん。辛いだろうけど今は絶対に手は出さないでね」


「(流石に手は出しませんって……口は出そうにはなりましたが)」


 思わず「貴方のデリカシーゼロの発言を指摘してくれる人は居なかったんですね」って言いそうになってしまったがグッと堪えた。私偉い。


 そんなデリカシーゼロ警備員と会話らしい会話をせずに校内を歩き続ける。罰ゲームをしている気分だ。途中で「だるまさんが転んだ」を仕掛けようとして、ギリギリで堪えた私を誰か褒めて欲しい。


「3階も特には無し。後は4階……「動く石膏像」と「ピアノの幽霊」の噂がある場所だね」


「……」


「さっきからずっと無言だね。折角一緒に回ってるんだし会話くらいしようよ。それとも会話のし方忘れた?こう言う時って黙るタイプ?そんなんじゃ友達出来ないよ?」


「こっちは早く終わらせたいんですよ。早く行きましょう」


「可愛げが無いなぁ、そんなんじゃ友達無くすよ?」


「普通の人は初対面相手に馴れ馴れしい対応出来ませんって」


「そういうものかな?」


 私は警備員にチョップしたり頭に乗っかったりして悪さするカゲリと、ずっと申し訳無さそうな顔をしている紅ン暴を見て怒りを抑え、階段をゆっくり上がって4階へと移動した。



「……あれ?今4階に誰か居たような……」


「老眼ですか?」


「まだそんな年じゃないよ。でも妙だなぁ……ちょっと見てくる」


 警備員はそう言うと、私を置いて先に上へと昇っていった。



 警備員が階段を登り切ったその途端。



 ゴンゴンと何かが床を叩く音。その音は次第に速くなっていく……なんて思っていたら上にいた警備員に何か大きなものが激突した。警備員は一言も発さず、そのまま真横に思い切り吹っ飛ばされた。


「!?」


 突然の出来事に思わず驚き、上に新たに現れた物を見た私は更に驚いた。




 真っ白の人間がそこにいた。



 布を纏った全身白色の大男の石膏像。その石膏像がゴツゴツと足音を鳴らしてゆっくり歩いていた。



「やば……」


 私は思わず声を出してしまった。石膏像はその場でピタリと足を止め、私に彫の深い顔を向けた。彫刻なのにやけに強い視線を感じたような気がした。


「おっ、ようやく出たね」


「コイツが騒ぎの元凶……!ワシと出会ったが最後!この場で叩き潰してくれるわ!!」


 私が驚き立ち止まる中、カゲリは相変わらずのマイペースな様子で像を見つめ、紅ン暴は怒りを露わにして石膏像を睨みつけている。


「やばい、逃げないと……!」


 私は急いでその場から逃げ出そうとすると、石膏像は私を目掛けてゴンゴンと足を鳴らして追いかけてきた。


「やっば!!」


 相手の足は遅いが、もし逃げ遅れたら私も警備員のように吹き飛ばされてしまう。とにかく転ばないよう注意しながら相手から全力で逃げようとした。


「夢居、しゃがめ!!」


「はい!!」


 階段を一区切り降りた辺りで紅ン暴が私にしゃがむよう要求した。私は咄嗟の指示に素早く反応し、頭を庇いながらその場で屈んだ。


「これでも喰ら……むっ!?」


 紅ン暴はやって来た石膏像を思い切り掴んだが、掴んだ瞬間、紅ン暴は妙な顔をした。


「ほっ!」


 紅ン暴は石膏像を下の方にそっと投げた。どうやら手加減したらしい。投げられた石膏像はゴロゴロと転がり、やがて停止した。


「……?」


 石膏像は床に伏した姿勢で停止した。この石膏像、明らかに石膏で出来た物では無い。


「……今の音は何?」


 上の階から警備員の声が聞こえてきた。石膏像にタックルされて吹き飛ばされていた彼がいつの間にか立ち上がっており、下の階を覗いて私と倒れた石膏像を見た。


「あっ……これは……!」


 警備員は倒れた石膏像を見て驚き、そっと下の階に降りて来た。私は階段を降りて石膏像への道を開けた。


「これ、石膏じゃないよね……何だこれ?」


 警備員は倒れた石膏像を見つめ、不思議そうにしている。


「……夢居、コイツに「中身は無事だ」と言っておけ」


「警備員さん、なかま……いや、中身は無事だそうで……」


「…………仲間?」


 私は紅ン暴の言葉をそのまま伝えた。警備員はそれよりも、私が間違えた言葉に何か引っかかったらしい。


「村上さん、今……仲間って言った?」


「いや、言い間違えただけです。ほら、中身と仲間って似てるじゃないですか」


 私は言い訳を述べるが、私が何か話す度に相手の声のトーンが下がっていく。


「……あの、どうかしましたか?」


「……村上、全部分かった上で此処に来たな?」



 警備員は私の方を振り返った。物凄い形相で私を睨んでいた。



「えっ……あ、あの、それはどういう……」


 私は動揺しながらも警備員から距離を取る。


「……村上」


「…………はい?」


「村上ぃ!テメェは絶対に逃さねぇからなぁ!!」


「えっ!?何何何!?」


 警備員は何故か私に対して大激怒し、両手を伸ばしながら私に飛びかかってきた。


「キャーーーッ!?!?」


 私は突然の出来事に悲鳴を上げ、何も出来ずにその場で立ちすくんだ。


「少し失礼する!」


「おわっ!?」


 警備員が私を掴む寸前、紅ン暴が硬直する私を丁寧に抱え込んで全速力で階段を駆け降り始めた。


「紅ン暴さん!」


 警備員は怒声を飛ばしながら追いかけて来るが、紅ン暴の方が遥かに速く階段を駆け降りていく。


「夢居!犯人が分かった!!人体模型を動かし、児童にボールをぶつけ、あの石膏像を動かしていた全ての犯人は髭葉だ!」

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