↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ~息吹戸瑠璃が遺したもの~  作者: 森羅秋
第三章 アンデッド霊園屯あふれそう
87/463

第87話 勝ち取った単独行動

「彼雁(ひがん)ももう浴びたのか。早かったな。端鯨(たんげい)はシャワーか?」


 話を変える為、勝木が呼びかける。

 彼雁(ひがん)は「浴びてた途中」と首を左右に振って、慌てて礒報(さがほう)に呼びかけた。


「大変なんだ礒報(さがほう)さん、端鯨(たんげい)さんの調子みてください! シャワー室で吐きだしちゃって! もしかしたら毒気に当てられたかも!?」


「えええ!? 端鯨(たんげい)さんが!? わ、分かりました! 医療班と一緒に様子見に行きます」


 そして玉谷(たまや)に力強い視線を向ける。


「しばし連絡から外れます」


 わかった。と玉谷(たまや)が頷くと、礒報(さがほう)は急いで自分のデスクに戻り社内電話で連絡をする。彼雁(ひがん)の情報を医療部に伝えるとすぐにオフィスから出ていった。


 礒報(さがほう)は高い戦闘能力と治療能力が備わっている。医療班と連携して一課のケアを行う後方支援型だ。

 彼女に任せておけば大抵の不調は改善される。


「端鯨(たんげい)の様子に気づかなかった。不覚だ」


 東護(とうご)は心配するように視線をシャワー室にむける。


「意識はあるけど、わかんないっす。アンデッド討伐のあとだし、念のためと思って」


「それがいいだろう」


 彼雁(ひがん)の言葉に勝木が重々しく頷いた。

 ゾンビの体臭で異常ステータス攻撃を受けていてもおかしくない。念には念を入れることが、生き続けるためには必要だ。


(端鯨(たんげい)さん大丈夫かな~。シャワーの熱でのぼせたのかも。津賀留(つがる)ちゃんは大丈夫なのかなー?)


 次から次へと忙しなく動く同僚をのんびり観察しながら、息吹戸(いぶきど)はよそ事を考える。


(っていうか礒報(さがほう)さんも男子シャワー室に突撃するのかなぁ? 女子来て恥ずかしがる端鯨(たんげい)さんって面白そうだから見に行きたい。それに戦う人だからさぞかしいい筋肉をしておられるはず。普通にみたい)

 

 真っ赤な顔で股間を抑える構図が浮かんでしまい、面白くて口の端がにやける。が、すぐに思考を真面目に戻す。


(いやいや、モラルの問題が発生するから医療関係以外は突撃しちゃいけないよね。夏になれば皆薄着になるはず、それを待とう)


「コホン」


 玉谷(たまや)は咳払いをして部下を自分に注目させた。

 息吹戸(いぶきど)は邪な妄想にガレージシャッターを降ろし、気持ちを切り替える。


「今回は魔法陣の破壊が最優先だ。東護(とうご)と彼雁(ひがん)はもう一度北区の霊園へ向かってくれ。勝木と彫石(ちょうこく)は東区だ」


 「はい」と頷く声に混じって、「うわー、まじかー」と彼雁(ひがん)が嘆いた。


 何か不満が? と鋭い視線を向けた東護(とうご)に、彼雁(ひがん)が慌てて「ペアが嫌じゃなくてゾンビが嫌なんですー!」と泣き声のような悲鳴をあげる。


「息吹戸(いぶきど)は津賀留(つがる)と一緒に南区の」


「一人で大丈夫ですよ部長」


「単独行動は……」


「いやいや。女性の入浴は長いから待ってると被害拡大しちゃう。それに、体暖まらない内から外に出ちゃって、津賀留(つがる)ちゃんが風邪引いたら大変だもの」


 息吹戸(いぶきど)は玉谷(たまや)の言葉を遮り、彼雁(ひがん)に視線を動かす。

 目が合った彼雁は顔を引きつらせ、一歩後退した。


 彼雁(ひがん)は「まじかー」という台詞を咎められると怯えた。

 息吹戸(いぶきど)は、湿った髪を指し示す。


「彼雁(ひがん)さんも髪をしっかり乾かしたほうがいいよ」


 身構えていた彼雁(ひがん)は目を点にしながら、「あ、はい」と弱弱しく返事をする。


「シャワーに行ってまだ十分くらいだし、髪を洗い終わったぐらいじゃないかな?」


 自分だとそうだから、他の女性達もその可能性が高いと、息吹戸(いぶきど)が肩をすくめる。


「しかし……」


 言いよどむ玉谷(たまや)を説得すべく、息吹戸(いぶきど)はにやりと悪い笑顔を浮かべて、一歩ずつ歩み寄り、至近距離で見上げた。


 題して、上目遣いでドキドキさせよう作戦。


 可愛い仕草をして許して貰う作戦だが、生憎、息吹戸(いぶきど)の目は瞳孔が開いておりギラギラしている。

 

 殺る気満々という印象を受けたため、玉谷(たまや)はたじろんだ。

 

「時間が押してるんですよね? 私、アンデッドこうぶ……大好きなので対処法大丈夫です!」


 危うく好物と言いそうになったが、玉谷(たまや)達に疑問を持たれなかった。

 しかしアンデッド大好きといった時点で、他の職員から異常者を見ているような白い視線がビシビシ届く。

 同じ趣向でないと理解できないので慣れっこだ。


 玉谷(たまや)は考え込むように黙った。彼の中で激しく葛藤しているのが手に取るように分かる。もうひと押しだ。


「一人でも大丈夫ですって、任せてください! いつもなら任せるんでしょ? ね?」


 息吹戸(いぶきど)は胸を張ってドンと力強く宣言すると、玉谷(たまや)は渋々頷いた。


「そうしよう。ただし、これだけは念を押す。おかしな点があれば……なくても必ず業務連絡をすること。くれぐれも、一人で突っ走るな。絶対だ」


 台詞の最後になるにつれ、語尾が強まる。

 息吹戸(いぶきど)は「りょ」と小さく返事をして


「ところで玉谷(たまや)部長。二つほど質問いいですか?」


「なんだ?」


「事件の詳細です。蚊帳の外だったんで、もうちょっと詳しく知りたいのです」


読んで頂き有難うございました。

更新は日曜日と水曜日の週二回です。

面白かったらまた読みに来てください。

物語が好みでしたら、何か反応して頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。