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おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ~息吹戸瑠璃が遺したもの~  作者: 森羅秋
第一章 馴染むところから始めます
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第38話 津賀留の訪問

 折り返し操作が分からないし、今を逃すと彼女はもう今日中に電話をかけてこないだろう。


 着信をタッチすると、津賀留《つがる》が『あ!』と嬉しそうに声を出した。


『お疲れ様です息吹戸《いぶきど》さん。夜分に電話をかけてすいません。今お時間大丈夫でしょうか?』


「ナイスタイミング津賀留《つがる》ちゃん! こっちも聞きたい事が山の様にあってね!」


 そこまで息吹戸《いぶきど》は一息に話すと、「あ。体調はどう?」と今更ながらに聞いてみた。


『はい。今、病院の帰りでして。体に問題なしと診断がでました。先ほど電話で玉谷《たまや》部長に報告が終わったので、息吹戸《いぶきど》さんにもご報告をと思って』


「そっか! 体に異常がないならよかった」


『呪詛を受けたと言っても、信じてもらえないほど、何も残っていませんでした。有難うございます息吹戸《いぶきど》さん』


「うんうん。よかったよかった!」


『それで。聞きたい事とは何でしょうか?』


「あのね。とても聞きにくいことなんだけど」


 と前置きをすると、。

 津賀留《つがる》が息を飲んで、『はい』と返事をする。


「ゴミの分別方法と、曜日を教えてもらいたいの」


 真面目な口調でそう続けたら、津賀留《つがる》から『はい?』と肩透かしを食らった声が戻ってきた。


 日常生活が分からないと訴えると、津賀留《つがる》は直接伺いますと言ったので、息吹戸《いぶきど》は一瞬焦った。


「あ、あ、でも! でも! 部屋が」


『知ってます! 大丈夫です!』


「でも津賀留《つがる》ちゃんも帰らないと……」


『同じアパートに住んでるので大丈夫ですよ。では三十分で行きます!』


 通話が切れると、空中ディスプレイが閉じる。


「あ、あー……。来るんだ。この部屋に」


 息吹戸《いぶきど》は腕時計を見て周囲を見渡した。


 とりあえず、座れるスペースを作ろうとゴミ袋に入らないゴミを突っ込んだ。


 服を集めるが、洗濯しているのか脱ぎ捨てたものか判断できない。


 ベランダを覗くと洗濯機があったので、散らかっている服や下着を突っ込んだ。


 洗剤も探し出して投入し、スイッチを入れる。


「時間は八時だから、まぁギリギリオッケーかな! 一回ぐらい違反しても文句は言われないだろう多分!」


 そのまま整理整頓を繰り返し、リビングに座る空間が見えてきたところで、チャイムが鳴る。


「はいはーい!」


 慌てて玄関へ行き、相手も確認せずにドアを開けると、津賀留《つがる》が立っていた。


「いらっしゃい」


「お疲れ様です。これ、お土産です。どうぞ」


 袋に入ったコンビニ弁当を差し出されたので、両手で受け取った。


「ありがとうー! でも中で食べるのはあまり……」


「大丈夫です! どんな惨状の現場でもしっかり食べれますから!」


 ぱぁっと明るい笑顔でそう答えてから


「それで、その、お邪魔してもよろしいでしょうか?」


 少し躊躇いがちに、ソワソワしながら訪ねてきた。


 仕草が可愛くて、息吹戸《いぶきど》の胸がきゅんとなる。


「勿論! ほんっっとうに汚いけど、どうぞ入って!」


 息吹戸《いぶきど》が招く。

 

 津賀留《つがる》は畏《かしこ》まりながら「お邪魔します」と声をかけ、ゴミまみれの玄関を抜けてリビングに入った。


 そこで目を丸くして周囲を見渡す。


(そうだよね。そのリアクションするよね)


 息吹戸《いぶきど》は「あはは」と空笑いして、頭をガリガリ掻いた。


「ごめんねー。本当に」


「凄いです! 座るスペースがあるし、片付いています!」


 津賀留《つがる》は感動した様に叫んで、キョロキョロ見まわす。


「ゴミがゴミ袋にちゃんと入ってる! 凄いですね!! 感激しました!」


「お世辞?」


 訝し気に息吹戸《いぶきど》が問いかけると、津賀留《つがる》はブンブンと頭を左右に振って見上げる。


 その目は大変輝いており、血色がよくなって頬に赤みがさしている。


「いえいえ滅相もない! 息吹戸《いぶきど》さんのお部屋には何回か入らせてもらってますが、こんなに整っているの、初めてみました!」


「……あ、うん、そうなの」


 ゴミをちょっと片づけただけでこの褒め言葉。


 心底恥ずかしくなって、息吹戸《いぶきど》は顔を真っ赤にしながら、津賀留《つがる》から視線をそらした。


読んで頂き有難うございました。

更新は日曜日と水曜日の週二回です。

面白いなと思いましたら、また読みに来てください。

お話が気に入りましたら、何かで反応して頂けると創作の励みになります。

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