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おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ  作者: 森羅秋
→→→亡者の世界も大混乱
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第162話 救出の糸口を辿る

 着ぐるみパジャマが硬化して激しい光がほとばしる。岡は凶悪に笑いながら、上位悪魔とデモゴルゴンを睨みつけた。


「ここは私が片づけるねぇ。息吹戸いぶきどは救出を第一に! これ以上好き勝手召喚させない方が先決だねぇ」


「りょ!」


 息吹戸いぶきどの返事を聞くな否や、岡は駆け出した。

 袖の爪で上位悪魔を切り裂こうとしたが、上位悪魔を庇うように正面に立ったデモゴルゴンが身代わりになり、岡の爪にさっくりと引き裂かれる。ザシュっと硬い野菜を切る音が響いた。


 予想以上の攻撃力だったのか、デモゴルゴンは岡との距離を測りながら、獣のような唸り声をあげて一斉に攻撃をしかけた。


 口を大きく開きつこうとしたり、強靭な足で蹴ったり、腕を振り回して鞭のように動かす。

 岡はそれをいなしつつ、赤子の手をひねるように確実に個体を減らしていった。

 恐竜パジャマ服という緊張感がない姿だが流石は半神、一撃の攻撃力が半端ではない。


「どこいったねぇ! あの悪魔はぁ!」


 デモゴルゴンに紛れて上位悪魔の姿が消える。岡は爪を振り回しながら探し回った。

 

(こっわーーーーっ)


 息吹戸いぶきどはキョロキョロ辺りを見ながら、敵の懐をくぐり抜けていく。

 途中でデモゴルゴンがこちらに気づいて妨害すべく口をあけた。息吹戸いぶきどはそのままダッシュしてスライディング。デモゴルゴンの股下くぐり抜ける。

 振り返ろうとしたデモゴルゴンは岡の爪で一刀両断された。


(おかあさま、こっわーーーーー! 一瞬の攻撃範囲ひっろーーーー!)


 うっかり立ち止まると爪の餌食になりそうだ。敵よりも味方怖い瞬間である。

 あちこちで戦闘が起こっているが息吹戸いぶきどは全部無視する。

 悪魔がこちらに牙を向けようものなら岡と勝木がフォローした。


 そのかいあって息吹戸いぶきどは無傷で伊奈美の元へ到着した。

 到着したといっても、解除相手は十数メートル上空である。目の前には誰もいない。


(下から、見上げても大丈夫なんだろうか)


 別の意味でハラハラしながら見上げる。

 ロープの結び方のおかげで下から見ても大丈夫だ。中身はしっかり布とロープで隠れていた。

 気を取り直し、改めてしっかり視る。


(あれ? 魔法陣から伸びていると思ったけど、あの黒いロープみたいなのはひとつの呪術だ)


 細かい文字列が並んでいるのでロープのように見えていた。それが女性の体に食い込んで融合している。

 普通に剥がそうとすると彼女の身も削ってしまうだろう。単なる皮膚や筋肉質ならいいが、もっと深い場所まで融合しているかもしれない。


(うーん。これは二種類かな)


 伊奈美と融合してエネルギーを奪っている術。

 伊奈美のエネルギーで稼働している召喚魔法陣。

 その二種類が絡み合って作用しているようだ。


 他にも変な術がないか探っていると、息吹戸いぶきどの上空を数匹の悪魔が飛び交う。攻撃魔法陣を浮かび上がらせながら口を開く。


(ん? マズイかな?)


 悪魔に意識を向けようと思ったが、


『デぎひゃ』


 すぐに火蛇が悪魔達の心臓を貫いた。何故か火蛇は体に悪魔をひっつけたまま移動する。

 串団子になった悪魔達は移動中に燃えて消滅した。

 どうやら解除に集中しろという意味らしい。


 東護とうごに手を振ってありがとうを伝えるが、完全無視された。

 そんな奴だよな、と息吹戸いぶきどは一人心地になる。

 

「さて。私は集中っと」


 パンッと両頬を叩いて気合を入れると、魔法陣をしっかり視る。


(空いっぱいに広がる魔法陣は上位悪魔を召喚するもので送還変換可能。上位悪魔は召喚魔法陣に少し付け足したみたい。文字が違う。大部分は天路国あまじこくで使われている文字だけど、あの部分は異界の文字だ)


 そして伊奈美を縛っている呪術を視る。


(うっわー。やっぱこっちの方が問題。あの人と同化している。このまま鏡で解除しようとしたら彼女も呪術の一部と認識されて一緒に消滅するかも)


 そしてチラッと上位悪魔を視る。

 岡の攻撃をかわしながら召喚で悪魔を喚び出す彼の力は、魔法陣から常に供給されているようだ。エネルギー切れがないため使いたい放題である。


(上位悪魔は空の魔法陣と繋がっている。魔法陣にエネルギー与えているのは伊奈美様。うーん)


 伊奈美と同化している呪術の配列を食い入るように見つめる。あれはなんの役目をもつ呪術だろうか。


 息吹戸いぶきどは目をこすって焦りを抑える。


(ここで起こった事を時系列でまとめてみよう。おかあさまから聞いた話では、霊魂から取り出したバラバラの術式が構築し発動した。発動した瞬間に弾き出されたからその後の詳細は不明。発動したのは三つと言っていた。変異型ウィルオウィスプと坂の封鎖、そして降臨)


 ここからは仮説をたてる。


(一、上位悪魔の降臨が発動。悪魔が伊奈美様を捕獲する。二、降臨と呪術の同時発動。悪魔召喚と共に伊奈美様を捕獲。うーん。無理っぽいな)


 岡を見る。まるで地獄の王のような強さだ。上位悪魔は涼しい顔をしているが目は一切笑っていない。

 伊奈美も半神だ。弱いはずがない。こんな短時間で上位悪魔が捕獲できるとは思えない。


(となれば。呪術が発動し伊奈美様を捕獲、エネルギーを得たことにより召喚魔法陣が発動。上位悪魔出現と同時に、アンデッド召喚及び変異型を量産したってところかな)


 息吹戸は上空を見上げる。こちらに来ようとした悪魔が光鳥によって溶けて消えた。


(そもそも今回の事件。妙なんだよなぁ。いつもの降臨じゃない。目的は別にある感じだ)



読んで頂き有難うございました。

更新は日曜日と水曜日の週二回です。

面白かったらまた読みに来てください。

物語が好みでしたら、何か反応して頂けると励みになります。

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