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おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ  作者: 森羅秋
第四章 逝きはヨイヨイ返りはコワイ
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第135話 効果以外に興味なし

「繰り返すけど、神鏡は暮総日神ぼそうにちしんの力、神力を直接写し取って借りる能力だねぇ。『対象』を把握して『具体的な効果』を想像し『解除・攻撃・防御・変化・維持』するための『程度』を決める。ざっくり言えばこんなもんだ」


 息吹戸いぶきどが少し考えて、


「えーと。つまり、『何でもできる』ってことですね」


 ざっくりとまとめる。

 岡は頷いて肯定した。


「ただし神力は『凶暴で気分屋な暴れ馬』みたいなもので、己が扱える量を間違えると後ろ足で蹴られるようにダメージを受ける。常に丁度いい量を取り出して扱わないといけない。そして術の解除や発動するために必要な量がある。必要量が厄介でねぇ。多すぎたら暴走してダメージを受け、少なすぎたら足りない分は自らの神通力で補うことになりダメージを受ける」


「なるほど」


 脳裏にヒュドラの時を思い出す。あの時は明らかに足りない分を補うためにガンガン神通力が吸われていき、肉体に多大なダメージが起こった。

 運良く菩総日神ぼそうにちしんが気づき、回復及び足りない力がプラスされて事なきを得たが、少しでも力の供給タイミングが遅ければ息吹戸いぶきどは死を迎えていただろう。まさに紙一重だった。


「使った後の疲労感もダメージってことか」


「疲れるのは普通だからダメージとは違うねぇ」


 即座に否定する岡。首を左右に振って呆れたような視線を向けると、息吹戸いぶきどは「そっか」と相槌をうつ。岡は片手を腰に当て、片手を息吹戸いぶきどにむけた。


「『誰かさん』は危険性を理解して使っているみたいだからねぇ。霊魂は一切消費されていないよ。だから凄いねぇと感心している。神鏡、略して鏡の持ち主は超レアな能力だから周囲に引っ張りだこ。でもねぇ、神力という強大な力を適当に扱ってしまってすごく短命なんだよねぇ」


 キッパリ短命と言われた。それもにやりと悪い顔で。死の言葉に恐れる姿が一般的反応だが、息吹戸いぶきどは平然と受け止める。


「鏡は神様の力を移す祭具でもあるからリスクも大きいってことですね。だったら短命なのも頷ける。人の力以上のモノだし体が耐えられないんですね。まぁ相殺狙い、術のキャンセルが一番いいかも。でもそっか、最初に感じた事そのままでいいんだ。よしよし。おっけー!」


 あくまでも上手に能力を使いたいだけでそれ以外に興味なし。

 そんな息吹戸いぶきどの淡白な反応に、岡はなんとも言えない表情になる。これが彼女の本質なら正すことはしなくていいだろうと、岡は薄い笑みを浮かべた。


「そうだねぇ。使い方を選ぶのも磨くのも自分次第だよ。まぁ、慎重に頑張るんだねぇ。鏡は稀有けうな能力だから誇りに思いなさい」


 岡はそう締めくくって、くるりと前方をむいて歩く速度を上げた。

 速足では追いつかなくなったので、息吹戸いぶきどは駆け足になる。トントントンと、着地する自分の足音を聞きながら。


(さて。勝木さんと東護とうごさん、大丈夫だといいなあ)


 ふと、二人の安否が気になった。

 行方不明になって一時間半ほど時間が経過している。息吹戸いぶきどは死者の国への坂、その結界の解除として四十分ほど消費してしまった。

 否、その程度の時間経過で済んでよかった、といったところだ。


(まぁ、どのみちもう敵確定だけどねぇ)


 岡の話から推測すると、彼らは直通でもうとっくに死者の国に到着している。洗脳されて従順になっているので、抵抗もなく敵の手に落ちたはずだ。

 それはすなわち、二人が従僕じゅうぼくになっていると思っていい。

 九割浸食ならぎりぎり解除できるが、万が一、完全に異界の者になれば打つ手がない。


 勝木と東護とうご。正直どこで野垂れ死んでも息吹戸いぶきどに精神的ダメージはない。間に合わなければ仕方ないと諦め殺し合いにシフトチェンジできる。

 しかしこのたび、『彫石ちょうこくからのサブミッション』がある。

 使命を達成する。その一点のみ重視し、できるだけ救助する方向で動くつもりだ。


(……さてと。助け出せるといいな)


 息吹戸いぶきどはふうっと息をついた。





読んで頂き有難うございました。

更新は日曜日と水曜日の週二回です。

面白かったらまた読みに来てください。

物語が好みでしたら、何か反応して頂けると励みになります。

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