表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/28

第二十七話.龍神さまと意気投合

第二十七話.龍神さまと意気投合



かあっと熱いモノが喉を通り過ぎる感触。久しぶりの日本酒だ!いや日本酒かどうかはわからないが、同じようなものだ。


「かぁあー!これは美味い!」

「お、わかるか?太陽の神よ」

「いやあ久しぶりだよ、こんなお酒は!ヘテプフェルじゃ果実酒しかなかったからなぁ」

「へぇ、そっちはぶどうか?」

「うーん、なんだかわからんけどね。ワインっぽいやつもあったけど……俺の口には合わなかったね」


いや美味い。ともかく酒を褒めると龍神さまも上機嫌で、まぁ呑め呑めと勧めてくる。

それじゃあともう一杯。


「これは水が良いんだろうなぁ」

「それはそうだ。我は水の神、そしてこの地は水の国。水の澄みたるはこの上なしってな」

「ほぉー」


男二人で向かい合って酒を呑む。美味い、美味いがやはり物足りない。


「はぁ、これは相当な美味さだけど。やっぱり酒の肴がないとつまらんなあ」


思わずボソリと呟いた。ウワバミじゃないんだから酒だけをごくごくいけるもんじゃない。


「はははっ。正直だな」


龍神は楽しそうに笑った。


「しかし、悪いが肴はないぞ」


残念だなと思った時に、ふと布袋に塩を詰めていたのを思い出した。ヘテプフェルは塩が取れる。海でもないのに塩が取れるというのは変な感じだけど、岩塩が取れるらしい。


「龍神さま。塩ならあるぞ」

「ほぉ、塩とはなかなか」


ぺろっと塩をひと舐めして、酒を一口。


「案外イケるな」

「うむ、良いものを持ってきたな」


塩を舐めながらの酒盛りが続く。

それから、くだらない話を一つ二つ。少し間を開けて本題に入った。


「それで、太陽の神よ。何を求めてここに来たのか聞こうか」

「俺の国、太陽神の国であるヘテプフェルに水を引きたい。水の神であるあんたに力を貸してほしい」

「ふうん。水がないのか?」


クッと一口呑んでから、龍神さまがそう言った。


「オアシスはあるが、なにせ乾燥地帯だからな。やはり水が絶対的に足りないんだ。開墾して作物を増やし、人を増やすためにはもっと水がいる。協力してくれないか」

「ふうん」


俺の熱弁虚しく、彼は気のない返事をする。

作物を維持するには水が必要だ、もっと食い物を増やして人口を増やしたいのだ。


「だめだ、断る」

「なぜ?」

「砂漠には砂漠の、森には森の、泉には泉の土地にはその土地なりの固有の性質というものがある、それで良いんだ。塩が取れるところから取れぬところへ、酒が美味いところから水のないところへ。人も物も流れていかねば、よどんで腐ってしまう」

「はぁ、そんなものかなぁ」


うーん。たしかに、なんだか一理ある気もする。


「山を均し、泉を埋め、砂漠に水を沸かせる。土地を全て人間の都合に合わせて改変するというのは、世界の均一化だ。それはいかん、濃淡がなければ水にも人にも流れが生まれぬ」

「そんなものかな」

「そんなものだ」


しかし、俺にもヘテプフェルを拡大して勢力を伸ばすという目標がある。


「俺はヘテプフェルの民を栄えさせたいんだ」

「ん。ははっ!神がそこまで言うとは、お前の国の人間は幸せものだな」

「だから……」


何か言おうとすると、被せるように龍神が口を開いた。


「長所を活かす方法を考えてはどうだ?わざわざ砂漠に水を湧かせ、畑をこしらえても、もとより肥沃な土地には敵うまい。適材適所、ある場所からない場所へ流していけば良かろう」

「ウーン、長所か……」


それっぽく言いくるめられたが、ヘテプフェルの長所ってなんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ